QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント(54)標準化戦略 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント(54)標準化戦略

永田晃也 技術経営、科学技術政策

18/06/21

今回のまとめ:標準化戦略は、企業にとって市場を拡大するとともに、コスト削減効果をもたらす戦略です。

 今回は「標準化戦略」というキーワードを取り上げてみたいと思います。
 ここで言う「標準」(スタンダード)とは、市場において大勢を占める製品等の規格を意味しています。
標準には、成立の仕方からみて2つのタイプがあります。1つは、公的機関によって定められた標準であり、デジュール(あるいはデジュリ)・スタンダードと呼ばれています。標準を設定する公的機関としてよく知られているものに、国際標準化機構(ISO)、IEC(国際電気標準会議)、ITU(国際電気通信連合)、日本工業標準調査会(JISC)があります。このうちISO、IEC、ITUは、国際標準を定める機関です。JISCは、日本の国内標準を定める機関ですが、その日本工業規格は、JISマークでお馴染みかと思います。
もう1つの標準のタイプは、市場における競争の結果として事実上、支配的となった規格であり、デファクト・スタンダードと呼ばれています。この具体例としては、パソコンのOSであるWindowsや、かつて家庭用VTRで支配的となったVHS方式などが挙げられます。
標準の成立は、どのようなメリットを企業にもたらすのでしょうか。ある製品の規格が標準化すると、異なる企業が生産する製品間の互換性が確保され、当該製品の市場が拡大する効果をもたらします。企業は標準化された部分については競争を行わなくなり、その部分は業界の共通基盤―プラットフォームとした上で、標準化されていない部分で収益を上げるための仕組みを作り出そうとします。こうした変化は、一般的にコストダウンの効果を企業にもたらすことが知られています。
こうしたメリットを最大限に享受するため、企業は自社製品の仕様が業界標準になることを目指して標準化の対象となり得る自社技術については、他社に自由に使用させるとともに、競合製品に対する差別化の要因になり得る中核的な技術については特許権などによって模倣を防ぐ必要があります。自社技術の普及を進める側面はオープン戦略、自社技術を排他的に使用する側面はクローズド戦略と呼ばれることがあります。
前回、知財戦略の解説をした際、知財戦略には事業戦略や研究開発戦略との整合性を持たせることが重要であるという点に触れましたが、今回の論点を踏まえてみると、さらに知財戦略と標準化戦略の間にも連携をとることが重要であると付け加えることができるでしょう。
なお、知財戦略と標準化戦略の連携が論じられる際に使われるオープン戦略とかクローズド戦略という言葉には、そもそもオープンかクローズドかという仕分けをどういう次元で論じているのかに注意が必要です。以前、ネットワーク外部性というキーワードの解説をした際に触れたように、自社の製品を単独で業界標準にしようとする指向性は「クローズド戦略」、他社と互換性のある製品を業界標準にしようとする指向性は「オープン戦略」と呼ばれています。ただ、これらは、いずれも自社製品をデファクト・スタンダードにしようとする戦略である限り、自社製品による業界標準の囲い込み(クローズド化)を指向している点で共通しています。これに対し、デジュール・スタンダードの制定を目指す戦略、特にコンソーシアムなどでコンセンサスを形成することによって標準を制定する取組みをオープン戦略として区別する見方もあるのです。
かつては市場での競争を通じてデファクト・スタンダードとしての地位を獲得した規格が、デジュール・スタンダードに採用されるというケースが一般的だったわけですが、これでは規格競争に敗れた側の負担が大きすぎるため、市場での競争が始まる前に標準化が模索されるようになりました。1995年にはWTO/TBT―世界貿易機関による「貿易の技術的障壁に関する協定」が成立して、国内規格を国際規格に適合させることが求められることになりました。これより日本発の技術規格が国際標準に採用されることは、日本の企業、政策担当者に一層重要な課題として認識されるようになりました。しかし、標準化戦略に詳しい一橋大学の江藤学教授によると、今日では各国の提案した技術が横並びで国際標準として認められる「マルチスタンダード化」の流れが定着しているため、国際標準が日本発であることに拘ることには意味がないそうです。各国・地域の標準に則って、標準化がもたらすコスト削減効果を活かしながら、それぞれの市場に参入することが課題になると言えそうです。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ