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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント(53)知財戦略 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント(53)知財戦略

永田晃也 技術経営、科学技術政策

18/06/20

今回のまとめ:知財の取得・管理に関する戦略は、事業戦略本来の目的であるイノベーションの実現に向けて構想される必要があります。

 今回は「知財戦略」をキーワードとして取り上げます。「知財財産戦略」を短く言い換えた言葉ですが、既に広く普及した表現ですので、ここでも「知財戦略」と呼んでおきます。
 知的財産―知財については以前、この放送で詳しくお話したことがありますが、簡単にさらっておきます。これは狭い意味では知的財産権という権利の対象になるものを言います。知的財産権には、特許権、実用新案権、商標権、意匠権、著作権などが含まれます。また、広い意味では、知的財産権の対象にされていなくとも、企業の事業活動に役立つ技術上あるいは営業上の知識・情報は全て知財に含まれることになります。この広い意味での知財を、何らかの目標の達成に向けて獲得し、活用するための構想と、その実践を知財戦略と呼んでいるわけです。
 いま何らかの目標と言いましたが、知財戦略の策定・実行においては、知財の獲得や権利行使そのものが自己目的化しないように注意することが肝要です。企業にとって知財が何故重要なのかと言えば、それが自社の経営目標なり事業目的を追求する上で有用な資源、場合によっては自社事業の生存領域を確保するための不可欠な資源になり得るからです。従って、どのような知財を獲得するのか、それをどのように活用していくのかに関する構想は、経営戦略や事業戦略と整合的なものでなければなりません。また、企業が自ら研究開発を通じて新たな技術知識を創造し、それによって知財の獲得を目指す場合には、知財戦略と研究開発戦略の間に整合性をとらなければならないでしょう。
 こういう当たり前に見えることを敢えて申し上げておくのは、実のところ大多数の日本企業は90年代の半ば頃まで知財の重要性に対して意識的ではなかったし、知財部門の役割もあまり重視してこなかったという背景があり、そのため知財の取得や管理に関する活動が、しばしば事業戦略本来の目的であるイノベーションの実現から離れて行われしまう傾向があったからです。
 私は2003年に『一橋ビジネスレビュー』に発表した「イノベーション・プロセスへの知的財産マネジメントの統合」という論文の中で、日本企業のデータを用いた分析を行い、知財活動をイノベーション・プロセス全体の中で整合的に機能させることの重要性を実証的に明らかにしました。同じ年、経済産業省が策定した「知的財産の取得・管理指針」というガイドラインの中では、知財を経営戦略の中に位置づけ、事業戦略、研究開発戦略、知財戦略を三位一体として構築すべきであるという指針が示されました。こうした文献が、知財戦略に対する企業の考え方にどの程度の影響を及ぼし得たのかは分かりませんが、少なくとも今日、知財戦略に意識的に取組んでいる企業であれば、知財の取得や管理を、イノベーションの実現という本来の事業目的に合わせて推進しているということは言って良いと思います。

 さて、こうして知財戦略は事業戦略などとの整合性に配慮しながら、知財の取得・管理に関する固有の役割を担っていくことになります。そこには、まずどのような知財を取得するのかに関する全体計画を立て、知財を群として捉え直して、その選択を戦略的に意思決定し、いわゆる知財ポートフォリオを構築することを始めとして、多様な課題が含まれることになります。知財管理を効果的に進めるための体制の整備や人材の育成も重要な課題です。
 特に知財戦略がイノベーション・マネジメントとの関連において重要な役割を担うのは、企業がイノベーションから利益を上げるための方法として、どのように知財を取得・活用するかが課題となる局面です。この点については、前に「専有可能性」というキーワードを取り上げた際に触れたことがあります。
 企業が自ら行った発明に基づいてイノベーションを実施し、そこから利益を回収する上で、発明の模倣を防ぐために特許を取得することは周知の基本的な方法です。取得した特許の実施許諾を他社に与えることによって、ライセンス収入を上げることも方法の1つです。一方、特許を取得するためには発明の内容を公開しなければならないため、競合による迂回発明を促す側面があります。それを避けるために特許を取得せず、企業機密にするという方法が選ばれることもあります。さらに、敢えて特許を取得せずに発明の内容を公知化し、何人も特許を取得できないようにする方法が選択肢に上がる場合もあるのです。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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