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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > アップルと自社株購入について(1) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

アップルと自社株購入について(1)

平松拓 企業財務管理、国際金融

18/05/30

今回は、株式の時価総額で世界最大のアップルが発表した、1000億ドル(約10兆9800億円)にも上る自社購入枠の拡大についてお話しします。自社株購入というのは、配当金支払と同じように企業が株主に利益を還元するための1手法で、自社の株式を市場で購入することで、市場に出回る株式が減ることになるので通常は値上がりし、それが株主への還元になるというものです。

アップルは5月1日、2018年度第二四半期(2018.1~4)の決算を発表しましたが、この際、配当の16%引き上げと並んで自社株式購入枠を1000億ドル拡大することを明らかにしました。この発表を受けて、アップルの株式は一時4%も上昇しました。アップルはここ数年、この時期に株主への還元計画を発表してきており、昨年迄の2年間は、配当金支払と合わせた還元額の合計で500億ドル、その内350億ドル分が自社株購入枠の拡大という内容でした(あらかじめ自社株購入枠の設定・拡大について株主の了解を取り付けておくことで、その後適宜実行することが可能となります)。それが今回は、自社株購入枠を一気に1000億ドルも拡大するという内容でした。

この背景にはいくつかの理由が考えられます。第一には、アップルの2018年度の業績の好調さです。アップルの2017年度決算(~2017年9月)は、売上高が2,290億ドル(約25兆円)、純利益が484億ドル(約5兆円)と極めて好調でしたが、その後、新発売のi-phoneXがその値段の高さゆえに販売不振と伝えられていました。それでもそれ以外の機種の好調と、中国や日本など海外の市場が牽引する形で、18年度第二四半期は、売上は前年同期比で16%増、純利益も25%増でした。

第二に、アップルはこの1年間で計画していた350億ドルを上回る約500億ドル、特にこの半年で340億ドルもの自社株購入をしてきたことで、自社株購入枠があと100億ドルを切るような状態となっており、一定の新規枠の設定は避けられなかったことがあります。しかし、それでもこれまで設定してきた購入枠350億ドルの3倍にもなる1000億ドルの自社株購入枠設定の説明としては、未だ不十分かもしれません。

そこで重要と見られるのが第三の理由で、アップルがトランプ大統領の意向に沿うポーズを取りつつ、昨年末に決まったトランプ大統領による減税(トランプ減税)をtake chanceしようとしていることです。トランプ減税では法人税率の引き下げばかりでなく、海外に蓄えた資金を米国内に還流させる場合、従来の35%の課税ではなくて、1回限りながら15.5%の軽減税率を適用することが織り込まれました。アップルはこれまで利益移転により2800億ドルにものぼる資金を海外に蓄積して叩かれてきましたが、トランプ減税を受けて、本年1月にはその内2,520億ドルを国内に還流させ、その資金で米国内に大型の工場を建設し、新規雇用を創出するという、トランプ大統領の好むような方針を表明しています。低減税率の適用は1回限りということなので、一気に巨額の還流をすることになりそうですが、工場建設で使い切れない資金は、株主へ還元しようという流れと考えられます。株主に還元する方法としては、配当金を増額ずると株主から増額した水準を維持することを期待されるため、一時的な還元額の増加の場合には多用される、自社株購入で対応しようとしている訳です。

さらに、アップルのこのような決定には、もう一つ、海外の事情も関係していると考えられます。アイルランドでアップルに適用されていた優遇税制に対して、EUの欧州委員会が、「EU法違反であり、アイルランド政府がアップルに対し130億ユーロの追徴を行うよう」と命じたことを受けて、この程(4月)、アイルランド政府はアップルに対して追徴金の請求を行いました。つまり、アップルにとっては、これまでのような利益の海外移転による節税戦略も行き詰ってきていた訳です。

トランプ大統領は減税に限らず、これまでの政権の政策とは異質の政策を打ち出して、強い批判も受けていますが、全体としての評価は別としても、少なくとも一部については結果に繋がっていると評価できるものあります。今回のアップルの一連の方針表明は、そうした実例の一つということになりそうです。


まとめ:アップルがこのほど発表した巨額の自社株購入枠の設定は、昨年末のトランプ減税を受けて、海外に蓄積した巨額の移転利益の国内還流が背景にあると考えられます。アップルは還流資金で米国内の生産設備への新規投資を行い、雇用を創出するとしており、トランプ大統領の意図に沿った対応といえそうです。

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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