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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 日本の貯蓄投資バランス (企業財務管理、国際金融/平松拓)

日本の貯蓄投資バランス

平松拓 企業財務管理、国際金融

18/05/08

前回は、トランプ大統領が各国に仕掛けている貿易摩擦問題について、アメリカの国内各部門の貯蓄・投資バランスの観点から考えてみました。今回は、同様に日本の国内各部門の貯蓄・投資バランスをみることにより、貿易にとどまらず、日本の抱える問題を考えてみたいと思います。

前回もご説明したとおり、国民所得全体がどういう形で支出されるかという支出面、また、その所得を何のために分配(配分)するかという分配面に着目して考えると、家計部門、民間非金融法人部門、一般政府部門の3部門の収支尻の合計と経常収支の収支尻は等しいという関係にあります。平たく言うと、家計(個人・国民)が収入以上に消費していないか、企業が儲け以上に投資をしていないか、政府が税収以上に財政支出をしてしまっていないか、これら国内各部門の収支尻をチェックして、その合計がマイナス、即ち分配された以上に支出していれば、それは海外からみれば受け取り超過、即ち、その国にとっての経常収支の赤字で賄われていることになるというものです。

日本の場合は、まず、家計部門が戦後一貫して貯蓄超過(つまり、所得を全部消費してしまうのではなくて貯蓄が残る、即ち資金余剰)となっています。しかし、人口構成の高齢化や生産年齢人口の占める割合の低下に伴って、この貯蓄余剰の幅は縮小してきています。これに対して、民間非金融法人部門は戦後永らく投資超過(つまり、稼ぐ以上に設備投資などを行い、外部からお金を調達する必要がある、即ち資金不足)の状態にありましたが、90年代に逆に貯蓄超過(稼ぎの範囲内でしか設備投資を行わず、外から資金を調達する必要がない、貯蓄をする主体)に転換し、その余剰幅は広がる傾向にあります。

この民間非金融法人とは反対に、嘗ては資金余剰主体であった一般政府部門(即ち、税収が財政支出を上回っていました)は、70年代に資金不足に落ち込み、バブル期に一時的に資金余剰に復帰しましたが、バブル崩壊後は景気低迷による税収の落ち込み、景気刺激策や人口構成の高齢化に伴う社会保障関連支出などの歳出増加で資金不足主体(税収では財政支出を賄いきれず、債券など発行して資金調達せねばならない主体)として定着してしまっています。それでも、日本全体として見た時には、家計部門の安定的な資金余剰と、資金余剰に転換した企業部門とで政府の赤字を賄っている状態で、国内各部門の合計では貯蓄超過の状態を維持しています。日本が永らく安定的に経常収支黒字を計上しているのは、その結果として、海外が支払い超過となっているからでもあります。

つまり、日本はアメリカのような経常収支赤字、貿易収支赤字の問題を抱える状況にはない訳ですが、その一方で、一般政府部門が大幅な赤字の問題を抱え、民間非金融法人部門が顕著な資金余剰の状態を続けているという問題を抱えています。この内、政府部門の赤字、資金不足の問題については、様々な形で議論されており、ここで敢えて採り上げるまでもないでしょう。プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化や、2019年に予定される消費税の引き上げの議論などは、皆、この問題に対処するためのものだからです。

これに対して、民間非金融法人部門の資金余剰ということについては、やや分かりにくいかもしれませんが、日本の企業が成長するために必要な投資、儲けに見合った投資を行っていないことを示唆するものです。企業の投資意欲が低いことが、国内の経済を停滞させ、デフレに陥る原因ともなったとも考えられます。投資に後ろ向きなことから、銀行等からの借り入れ需要も細りがちで、このことが日本の低金利に繋がり、日銀によるマイナス金利政策とも関連している可能性があります。

さらに、この民間非金融法人企業部門の資金余剰は、政府部門の資金不足と表裏をなしているともいえます。つまり、企業が積極的な投資により成長を図れば利益も増加し、また、給与が引き上げられれば、政府の税収も増えるはずです。そして家計の貯蓄も再び持ち直しを見せるかもしれません。昨今の日本企業の収益拡大は、企業が投資により自ら作り出したというより、旺盛な海外からの需要に引きずられたもので、企業部門の資金余剰の状態は余り変化していない可能性が高いと思われます。

勿論、日本で企業部門が積極的な投資を行うようになると、その投資需要が海外からの輸入で賄われることになり、その結果として国内全体の資金余剰もいくらか減少して、経常収支の黒字も幾分減るかもしれません。しかし、経常収支が赤字に陥らない範囲であれば、問題はないと言えるでしょうだろう。それより難しいのは、企業が如何に無駄遣いとならない形、即ち、戦略的に正しい目的、方法で投資を行うか、その点こそが問題だと言えるでしょう。

まとめ:日本の部門別貯蓄投資バランスを見ると、民間非金融法人部門が大幅な貯蓄超過状態にあるという、日本経済の低迷の原因の一端が見えてきます。簡単なことではないかもしれませんが、企業に積極的な投資を行わせるよう働きかけることが、問題の解決に繋がる一つの道筋と考えられます。

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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