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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 現金のない社会② (国際経営、国際物流/星野裕志)

現金のない社会②

星野裕志 国際経営、国際物流

18/05/10

昨日は、中国で急速に、「現金のない世界=キャッシュレス・ソサイエティ」が進行しているということを話しました。現金やクレジットカードといった従来の支払いの方式に代わって、モバイル決済のアリペイなどが一般に浸透しているということで、驚くようなスピードで浸透しているといえます。英国のデイリー・テレグラフという日刊紙の調査による「現金のない世界が進行する世界の上位10カ国」の中で、トップがカナダ、中国が6位、日本が9位にランクされています。

ただ今回、QBSの学生と中国のアリババの本社のある杭州や上海に行って観察したところでは、日本の9位と中国の6位の間には、大きな開きがあるように思いました。

昨年の11月に大連に出張した際にも、同僚の先生が足裏マッサージに行って、現金でお金を支払ったところ、お釣りがないと押し問答があったようです。また地下鉄の駅では、切符を買うのに現金の使える自動販売機が見つかりませんでした。ショッピング・モールの自動販売機は、モバイル決済専用でコインの投入口もありませんした。もうそこまで現金のない社会ができつつあるということです。

もちろん日本にもモバイル決済の方法は、NTTドコモのおさいふ携帯が2004年に始まっていますし、アップルペイなども普及してきていますが、主流にはなり得ていません。まだまだ支払い方式は、現金、クレジットカードも含めて併用されている時期かと思います。

ただ昨日ご紹介した浙江大学の学生の一人が、ふだんはまったく現金を持ち歩かない生活をしているのに、日本に旅行するためには現金が必要だったとの感想を話されように、日本でも中国からの旅行客を受け入れるためには、迅速な環境整備が必要かもしれません。

では、日本でも今後ますます導入されるし、浸透していくのか、それは、なかなか難しい質問です。まず開発途上国の多くで、固定電話の段階を飛ばして、携帯電話が普及しましたが、日本には今でもそうですが、併用されていますよね。駅やデパートでは、今でもどこかに公衆電話がおかれています。日本固有の決済のシステムがあるので、一足飛びに全面的なモバイル決済には移行しないのではないでしょうか。

利便性を考えると、中国のようにもっと浸透すると良いのではないかと思うのですが、実は、これも必ずしも全面的に賛成とも言えないように思います。モバイル決済の普及には、多くの利点と共に問題点があるようと考えるからです。

もちろん利点としては、なにより簡単で便利ですし、現金を持ち歩く必要がないのですから、日常生活でも旅行でも、より安全ということになります。こういう現金のない社会が出てくれば、店舗でもさまざまな施設でも、売上の現金の保管やお釣りの準備が不要になりますし、ATMや現金の使える自販機も減るでしょうし、現金の回収といった行為も不要になります。そのように、現金が動かなくなると金融機関の役割も変わってくるでしょうし、紙幣やコインなどの発行量自体も変わって来るかもしれません。

では、問題点があるとすれば、どんなことか考えてみましょう。例えば、高齢者とか携帯電話を持たない人は、今でも外出先で電話をかけるのに苦労されていると思いますが、モバイル決済が標準になるとそんなことも起こるかもしれません。そもそも中国では携帯がないと、自分自身を証明すること、タクシーを呼んで乗ったり、飛行機になること、ものを買うことも、何もできないそうなので、携帯を紛失するとか盗難にあうと、すべての活動が停止せざるを得ないようです。それくらい携帯電話に、自分の情報が集中している状況です。

それから、日常生活の情報が、すべての決済を通じて、一部の企業の手に握られていくということになります。普段から買っているものから、個人の購買行動や嗜好や生活パターンやライフスタイルなども、すべて蓄積されていきます。今でもアマゾンや通販で購入することで、次は同じようなテイストのものを紹介されるということがありますが、そのような手法はもっと進むでしょう。すべてのことが一括して処理をされれば、すべての行動が誰かに握られるということにもなりかねません。

実際に、アリババは子会社を通じて、顧客の信用度を350点から950点の範囲で算出していると報道されています。自分の消費性向、過去の支払い、交友関係、際立った消費の特徴を含めた5つの分野が数値化されると聞くと、あまり良い気はしません。

またそのスコアが、アリババの運営するシェアバイク=レンタル式の自転車の料金などにも反映されるそうですが、過度の個人情報の集約には、やはり不安になります。モバイル決済の浸透は、同時に情報の集約にも繋がってくるということです。

日本のようにタンス預金とか現金信仰のひとや、クレジットカードの利用頻度の高い人もいる中でも、モバイル決済の浸透という流れは止められないと思います。実際に携帯1つで、すべての生活の活動ができるという意味では大変に便利ですが、一方で携帯ひとつにすべての情報が集約され、それを特定の企業でデータとして蓄積されることには、不安も覚えます。

みなさんは、どのように考えられるでしょうか。

分野: 国際ロジスティクス 国際経営 |スピーカー: 星野裕志

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