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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > アメリカの経済や経営の背景を知ることは重要だ (経営学 (経営戦略、経営組織、日米比較経営、金融機関経営)/久原正治)

アメリカの経済や経営の背景を知ることは重要だ

久原正治 経営学 (経営戦略、経営組織、日米比較経営、金融機関経営)

18/04/05

私のこの経営学シリーズでは、これまでアメリカ型経営と日本型経営の比較の問題を取り上げて来ました。アメリカ型経営はアメリカでは一般化しているのですが世界的には特殊な仕組みであり、日本とは違うので、そのまま取り入れる事には問題があるというのがそのテーマでした。

アメリカと日本の経営の違いを理解する為には、アメリカの経済や経営の背景を知る事が大事です。アメリカ人を見れば分かるのですが、子供の時から自分で選択をしなければいけません。日本人は、親のお仕着せで選択なんかしなくてもいい様に、大事に育てられています。ここが最初の違いです。

自由な選択について分かりやすく例を挙げると、例えば皆さんがアメリカでサンドイッチを注文するとしたらパンの種類から中に入れる野菜とかハムとかをすべて自分の意思決定で選択しないといけないのです。ところが、日本のレストランに行くと、刺身定食の様に別に選択しなくてもレストランが出す定食を注文すればいい。決まった定食があり、それを頼めばその中の小鉢は何にしますかとか聞かれないですし、漬物は大根でなくて別の物がいいと言うと怒られてしまうわけです。

つまりアメリカでは、子供の頃からずっとあれかこれかを選択していかないといけない。日本では別にそんなことをしなくても、みんなが色々やってくれる。この差をまず考える必要があります。アメリカは選択をする中で自分の力で自由に競争をし、選択したものが嫌だったらやめればいい。従って、労働市場も発達していて、自分が今の会社が嫌だったらやめて別の会社に移ればいいのです。そういう選択できるマーケットがアメリカには常にあるのです。

そこで、自分が会社の中で違うなと思ったらやめてまた違う会社に行けばいいというようなアメリカの考え方の前提には、自分の市場価値をきちんと自分で高めないといけないという事もあります。また、そのためのチャンスは平等にあるという事が重要です。さらに、富や成功を追求する過程で誰かがやりすぎた時のルールや処罰は厳しいのです。ですから、会社の経営者に対しても、コーポレート・ガバナンスという経営者をコントロールする仕組みがあり、悪いことをしたら罰せられます。

それに対して、日本の会社は基本的に悪いことをしない会社でした。そこに悪いことをしたら罰せられるアメリカのガバナンスの仕組みをどんどん取り入れている内に、段々日本の会社でも経営の不祥事が出て来るようになってきたのです。これは不思議なことですが、アメリカの仕組みを入れれば入れるほど日本の企業の経営がおかしくなってきている面が見られます。それはやはり、アメリカの仕組みの根本的な所を理解しないで表面的な所だけを取り入れようとするから歪が出て来ているのです。

アメリカでは様々な選択枝から選ぶという事を自分の責任でやっているからこそ、そこで悪い事をすれば罰せられる。それに対して、日本では自分の責任というよりはみんなで一緒にやっているから、(会社のためだから)まあいいだろうという感じでやってしまい、結果として会社ぐるみで不祥事が生じてしまうのです。日本がアメリカの経営の仕組みについて、その背景を良く知らなくて取り入れてしまうと、この様な問題が起きてくるのです。

これまでアメリカ映画を見ることを通じて、アメリカの経営、経済の仕組みや組織の在り方を学ぶというテーマでこれまでお話しして来ました。アメリカの経営について我々は、教科書的な自由で平等な競争の中からベンチャー企業などが出てきて大成功すると思っているかもしれません。しかし実は、映画を見ていくとアメリカの経営や組織の現実には様々な問題があることが分かります。

例えば、2000年代に入ってからも様々な戦争映画が製作されました。アメリカの戦争映画を見ると、イラク戦争であったりアフガン戦争であったり、或いはドローンで爆撃したりする中でそれぞれ様々な問題が出てきています。2008年のリーマンショック後には、ウォール街の儲けすぎを批判する映画が多く制作されました。それをよく見ると、アメリカの株主中心の経営にも色々な問題がある事が分かります。オバマ大統領の時代には黒人差別の歴史を描く映画が多く造られ、そこでは黒人への差別がずっとあったという事が分かります。そして今度は(トランプの時代になって)黒人への差別だけでなく、女性や少数者に対する差別が存在する事も今年のアカデミー賞候補の映画を見れば分かります。アメリカ社会の現実は決して自由で平等ではありません。

反エリート主義みたいな価値観もアメリカにはあります。トランプ大統領が選ばれる背景には、一方では富と成功を目指していき、他方では反エリート主義やあるいは差別的な考え方があるというように、アメリカは非常に大きな矛盾を抱えているのです。

また、今年は映画界でのセクハラ問題というのも非常に大きな問題になりました。ハリウッドは、アメリカのワシントンのエリートに対抗して、西海岸からこれを批判する映画を作っているといわれていました。このハリウッドで最も有名なプロデューサーであるワインスタイン氏が実はずっとセクハラをやっていたということで、これに対して女性からの「#MeToo」とか、或いは「Time's Up」といった運動が起きてきています。まだまだアメリカには差別は現在もあり続けているという複雑な国です。

今日のまとめです。アメリカ型経営はグローバルスタンダードとして適切なのかどうかに疑問があります。それをよく知るためにはアメリカの経営や組織の背景にあるものは何なのか、そして、文化の違いは何なのかをよく理解する必要があるという事をお伝えしたいと思います。

分野: 経営学 |スピーカー: 久原正治

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