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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ブーム(その1) (産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ/高田 仁)

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ブーム(その1)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

18/04/26

【今回のまとめ】
・近年、既存企業によるCVCの取り組みが増加しているが、その成否の評価には、そもそものCVCの設置目的を明確にしておく必要がある。


・近年、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)への取り組みが増加している。CVCとは、既存の大企業が、社外のベンチャー企業に対して投資を行う活動を指す。
・一般的なVC(ベンチャーキャピタル)は、機関投資家などが拠出した資金によって投資ファンドを組成し、そのファンドを運用する(=ベンチャーに投資し、株式上場や売却で生じるキャピタルゲインを得る)ことによって機関投資家などにリターンを返す。
・CVCの場合は、特定の事業会社(多くは一社)がベンチャー投資を目的として資金拠出してファンドを組成し、金銭的なリターンのみならず、自社事業とのシナジーを強く求めて投資先ベンチャーを探索し、投資を行う点が特徴である。
・大手コンサルティング会社であるPwCが公表したレポート(https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/2018/assets/pdf/tmt-cvc.pdf )によると、かつて2000年頃に大手企業によるCVCブームは大きな成功は果たせず縮小していたが、2012年以降から業種を問わず、再び件数が増加しているという。同レポートは、いくつか興味深い調査結果を示している。
・まず、投資先についてだが、37%がシードステージ、すなわち会社設立後1〜2年しか経過していない社員数名の若いベンチャーであり、また、54%がアーリーステージ、すなわちビジネスモデルを構想している社員10~20名のベンチャーとなっている。つまり、事業確立前のかなり若い会社に対して積極的に投資がされている。この理由について同レポートでは、「将来性のある有望なベンチャーに、早期に手を付けておきたいという大企業側のニーズを反映」と分析されている。ただし事業初期であればあるほど、その事業成功の可能性を見極めることは困難である。その点で、近年のCVCは、「収益性」もさることながら、自社が取り組むべき新規事業を補完する意味合いや、どの芽が出るかは不明だが、早期で低コストなうちに出資しておき、将来の自社事業とのシナジーを長期的に見極めるスタンスでCVCを運用していると察せられる。
・また、CVC設立後の年数が経過するほど、「自社のCVCは順調である」という回答が低下し、代わりに「順調でない」という回答が増加している。設立後1年以内であれば8割以上が「順調である」と回答しているのに対し、3年以上経過すると45%が「順調でない」と回答しているのである。CVC設置初期では「何件投資できたか?」という最も身近で表面的な数字くらいしか評価できないのに対して(投資先の成否判断は時期尚早)、数年を経過すると、徐々に「投資に対するリターンがどれほどもたらされたのか?」「投資先と自社とのシナジーは見えているのか?」といった"実を伴う"評価がされるようになり、当然ながら全ての投資案件で良好な結果が得られるわけでもないため、投資担当者として順調とは言い切れない場面も増えてくるのである。
・では、CVCの投資決定にはどのような特徴があるのだろうか。これについて同レポートでは、「投資担当者の熱意に押し切られて、ほぼ全案件が投資委員会を通過してしまう」という項目が、CVC設立から年数を経ても、依然として高い数値のままに留まっていることが報告されている(回答者の約3割)。
・通常、VCもCVCも、「投資委員会」を組成し、最終的な投資可否の判断をこの投資委員会に委ねている。投資委員会には社内責任者や社外の専門家、特に産業分野毎の専門家が招かれて、適切な投資であるか否かが評価される。しかしながら、約3割のCVCにおいて、"担当者の熱意"に投資委員会が押し切られる事態が生じてしまっている、というのだ。
・投資額や株価の算定は、投資担当者のプロとしての力量の元に行われ、その内容は投資委員会でもチェックされる。しかしながら、「そもそも、なぜこのベンチャーに投資するのか?」と問われる場面では、外形的な数字の妥当性のみならず、当該ファンドの設立目的に照らして判断されることになる。「投資に対するリターンを最大化する」というシンプルな目的のみであれば、投資委員会も決定しやすいが、「自社事業との長期的シナジー」といった目的の場合、「シナジー」や「長期」の定義が曖昧な場合もあり、結果的に投資委員会のガバナンスが効きにくくなるのである。
・次回は、CVCにとっての「シナジー」について更に考察してみたい。


分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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