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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ブーム(その2) (産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ/高田 仁)

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ブーム(その2)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

18/04/27

【今回のまとめ】
・CVCとしては、投資後3年程度が経過する段階で、投資先ベンチャーとの協業を本腰を入れて検討できる状態になったと評価するほうが、従来の自社にはなかった変革をもたらせるのではないか。


・前回は、近年CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)への取り組みが増加しているが、3年ほど経過すると「取り組みが順調ではない」と回答する担当者の比率が増加し、特に、投資決定時のガバナンスに甘さが生じがちであり、そこにはファンドの設立目的の曖昧さが影響している可能性について述べた。特に、CVC設置目的に「自社事業とのシナジー」を掲げるCVCが多く、このシナジーの解釈が曖昧だと、当然ながら投資決定にもブレが生じる。
・今回は、CVCにおける「シナジー」について更に考察してみたい。
・シナジーとは、複数の組織が連携して事業を行う場合、単独で行うよりも高い成果を出すこと、すなわち相乗効果を意味する。
・そもそも、既存企業が自社本体では行い難い他者連携や新規事業の育成を行う場合に、CVCを活用してベンチャーへの投資と連携強化を図る。その際、シナジー効果を自社事業から近い範囲(=自社にとって変革の意味合いが小さく、失敗リスクも低い)に設定しすぎると、わざわざCVCという別枠(=別な組織 & 別な価値基準 & 別な意思決定の仕組み)を設ける意味合いが小さくなる。自社が想定できる範囲であれば、別枠を設けるまでもなく自社で取り組めば良いだけの話である。
・一方で、シナジー効果を自社からかなり遠い範囲(=自社にとって大きな変革に繋がるものであり、失敗リスクもそれなりに大きい)に設定すると、CVCという別枠を敢えて自社から離して設置することに一定の合理性が生まれる。CVCというある種の"出島"を設けて特別ルールを適用できるため、従来自社内では出来なかった意思決定が可能になるからである。
・前回紹介したPwCのレポートによると、CVC設立後3年以上を経過すると、約3割が「事業シナジーが思ったほど実現できていない」と回答している。この理由について同レポートは、「大企業側が事業シナジーを追求するためのベンチャーに協業を打診しても、ベンチャー側のリソースが限られているため十分に対応できないという構造的な問題が関係している」と分析されている。加えて、大企業とベンチャーとの規模感の違い(大企業にとって数億円は微々たる規模だが、ベンチャーにとっては大金)という問題も存在すると考察されている。
・さて、このCVCと投資先とのシナジーにまつわる「3年」をどのように評価すべきだろうか。そもそも、「3年」という期間は、シナジー効果を自社から近い範囲に設定している場合は十分だろうが、遠い範囲に設定している場合は、結果評価のタイミングとしてはやや早いという印象を持つ。ベンチャーがVC等から投資を受ける場合の事業計画では、「投資後3年で黒字」といった目標が設定されることが多い。これはあくまでもベンチャーとしての単年度黒字であり、規模としては前述のように売上数億円に過ぎない。大企業から見ると、とても自社の新規事業の柱と言えるような規模感には達していない。
・従って、投資後3年程度が経過する段階(ベンチャーが単年度黒字化する段階)では、CVCとしては当該ベンチャーとの協業をようやく本腰を入れて検討できる状態になった、と評価するほうが妥当ではないだろうか。そこからどれほどの期間を経て、自社事業とのシナジー(二桁〜三桁の億円規模)が目に見えて生じる可能性があるかを再度吟味検討し、追加的投資やその他事業連携の契約を、より踏み込んだ内容で行うことが妥当ではないかと考える。
・CVCがベンチャーへの初期段階の投資から3年を経過したところで、その後の本格協業に移行できるかを見極め可能なタイミングが到来すると考えると、やはり、ベンチャーへの初期投資の段階では、自社とのシナジー効果を敢えて自社事業から遠くに設定しておくほうが、数年後にダイナミックでイノベーティブな新規事業のネタを獲得できる可能性が高まるのではないだろうか。
・ベンチャーと大企業のオープンイノベーションを仲介するある企業の幹部は、「初めからシナジーを期待しすぎると、結果的にありきたりなプロジェクトしか残らなくなる」と注意喚起している。
・CVCは、大企業にとってイノベーティブな新規事業創出の重要な手段である。その運用において、CVCにどのような性格付けと評価基準を設けるかによって、長期的にイノベーション創出にも差が生じてくる。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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