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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > SCM(4):サプライチェーンの頑健性と復旧力 (企業戦略、生産管理/目代武史)

SCM(4):サプライチェーンの頑健性と復旧力

目代武史 企業戦略、生産管理

18/03/01

 今回のテーマも、サプライチェーンの災害への備えについてです。東日本大震災や熊本地震などの災害を通じて、様々な課題が明らかになりました。今回は、そのためにどうするかということを考えていきます。

 サプライチェーンが途絶する原因はいくつかあります。調達先が集中している時、代替調達先の切り替えが難しい時、サプライチェーンの全体が可視化されていない時、安全在庫が適正に確保されていない時にサプライチェーンが途絶えてしまうリスクが高まると考えられています。そこで、このような災害への備えをどう考えるかです。今回は頑健性と復旧力の二つの概念を中心に考えていきたいと思います。
 サプライチェーンは、ある種のネットワークです。ネットワークは、点と線で構成されます。つまり、サプライチェーンは、工場や倉庫といった拠点とそのつながりであるネットワークによって構成されます。そうすると災害対策についても、拠点レベルの対策とネットワークレベルの対策に分けて考える事が出来ます。さらに、対策には、事前の対策と事後の対応が考えられます。
 例えば、地震などの外的なショックに対して、工場の生産が影響を受けないに越したことはありません。そのようなショックに対する影響の受けにくさのことを頑健性と言います。頑健性は、地震が起きてからではなく、その前に事前に手を打たなければ実現できません。もう一方の事後の対応に関わるのが復旧力です。不幸にして、ある拠点が被災し生産が停止したり操業度が低下したりした場合でも、速やかに回復できる力のことを復旧力と言います。
 以上を組み合わせると、2×2のマトリックスができます。拠点レベルとネットワークレベル、事前と事後です。サプライチェーンのリスク対策を考える順番は色々とありますが、まずは拠点レベルで頑健性を確保するとともに、復旧力の強化を図ることが重要です。さらにネットワークレベルで頑健性を確保し、さらに復旧力を構築することが考えられます。

 今日は、まず拠点レベルの対策について考えていきたいと思います。
 第一に、一番望ましいのは、拠点レベルで頑健性が確保できていることです。災害が起こっても工場などが影響を受けなければ、サプライチェーン自体も影響を受けるリスクが減ります。建物などのハード面の頑健性はやはり重要です。例えば、阪神淡路大震災のケースでは、1986年に施行された建築基準法(これを新耐震基準と言います)に基づいて建設された建築物は、それ以前の基準の建物に比べて大幅に被害が少なかったということが確認されています。そこで、1995年12月に耐震改修促進法が施行され、2015年までに建築物の耐震化率を90%まで高めるという目標が立てられました。
 またソフト面では、平時における機械設備のメンテナンスや人材育成が重要になります。いわゆる5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)は、火災や設備の故障、人身事故などを予防するうえでも大変重要な役割を果たします。これに関しては、工場の設備保全における世代間のノウハウ移転も重要な課題になっています。バブル崩壊後の就職氷河期の時代に新卒採用が極端に絞り込まれた時期がありました。その結果、ベテラン世代と若手世代の間にノウハウ移転の断崖が出来てしまい、これが大きな計課題になっています。
 第二に、もし不幸にして工場が被災してしまったとしても、速やかに操業回復できればサプライチェーンへの影響を軽減することができます。つまり復旧力がポイントになります。日本の生産現場は非常に高い復旧力を持っていることがこれまでの研究で明らかにされてきています。例えば、1997年にアイシン精機の刈谷工場で火災事故が発生しました。これを分析した一橋大学の西口とボーデは、組織の垣根を超えた柔軟な人材の動員や平時の改善活動で培った問題解決能力が驚異的なスピードの生産復旧に寄与したということを明らかにしています。また、東日本大震災で甚大な被害を受けたルネサスエレクトロニクスは、熊本にも工場を持っていますが、東日本の後に対策を進めたおかげで、熊本地震の際には被害を最小限に食い止めることに成功しています。具体的には、工場の耐震基準を2011年以前には震度6弱としていましたが、2011年以降は震度6強まで引き上げています。また原材料や完成品の安全在庫水準も引き上げています。さらに、工場が被災した際の被害状況や復旧状況、製品の在庫水準などの情報を取引先に随時開示することで取引先企業が生産計画や出荷計画を練り直しやすくするようなきめ細やかな対応も進めるようになったのです。

今日のまとめです。サプライチェーンのリスク対策はショックの影響を受けにくくする頑健性の確保と被災からの速やかな回復を可能にする復旧力の構築があります。リスクに対する頑健性には、建物の耐震改修といったハード面での対策はもちろんのこと、平時からの設備メンテナンスや5Sの徹底が重要になります。復旧力の確保のためには、人的物的資源の柔軟な動員力や改善活動を通じた現場の問題解決能力の向上が重要となり、これもやはり平時における組織能力の向上がカギを握ると言えると思います。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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