QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 失う悲しみは得る喜びより大 (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

失う悲しみは得る喜びより大

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

18/03/06

今回は、「失う悲しみは得る喜びより大きい」という話です。断捨離という言葉が流行っています。要らない物は捨てようという言葉です。このような言葉が流行っているという事は、いかに人々が要らない物を捨てずに持っているかという事です。

人間は、持っている物が減ることが嫌いなことだそうです。要らない物でさえも持っていたいので、要る物を失う悲しみは大きいです。
通信販売で、「気に入らなかったら、自由に返品して下さい」という会社があります。そうすると、私たちが買う前に考えるのは、「気に入らなかったら返品すれば良いから、とりあえず気楽な気持ちで買ってみよう」という事だと思います。しかし、商品が届いて自分の物になると、これは大事だから返品したくないと考えてしまうので、結局は要らない物まで買ってしまうという事があるかも知れません。これに加えて、返品するのは申し訳ないという気持ちも働くと思います。売り手としては、親切を装っていますが、結構上手な商売をしているのかも知れません。乗せられないように、注文する段階でしっかり考える事が大切です。

話は変わりますが、「確率1%で片足を失う、危険な任務がある。いくら払ったら引き受けてくれるか?」と聞かれたら、相当高い金額でないと嫌だと思います。では、「君は確率1%で片足を失う病気にかかっている。これを確実に治す薬があるが、いくらなら買うか?」と聞かれたら、どうですか。先ほどより小さい金額を答える人が多いでしょう。片足を失う確率1%は、何円の価値があるのでしょうか。
他のケースも考えてみます。「君は確率100%で片足を失う病気にかかっている。この確率を99%に下げる薬がある」と言われたら、もっと小さい金額になりそうです。「君は必ず片足を失う運命なのだが、1%の確率で助かる希望を売って上げよう」という言い方に変えたら、少しは違うかもしれません。「片足を失う確率を50%から49%に下げる薬がある」と言われたら、もっと小さい金額になりそうです。
これは心理学の話で、人間の心理は複雑です。「君の片足の値段はいくらか」と聞かれた場合の答えを考えて、その100分の1の値段を答えるということでもなさそうです。

株式投資というと、「損するかも知れないから嫌だ」という人が多いです。「儲かるかも知れないが、その時の喜びは小さいだろうし、損した時の悲しみは大きいだろうから、やめておこう」ということだと思います。これも、基本は同じ事かもしれません。株式投資に関して言えば、もう一つ、初心者は損切りが下手だと言われますが、これも損をしたくない心理が影響しているようです。
損をするのが嫌だという気持ちから、値下がりした時に売る判断が出来ない人が多いです。1000円で買った株が800円に値下がりすると、「今売ったら損をする。1000円まで戻るかも知れないから、売らずに持っていよう」と考えます。しかし、1000円まで戻る可能性もありますが、600円まで値下がりする可能性もあるので、そのあたりをよく考えないと傷口を拡げてしまう可能性もあります。初心者の方は、気をつけていただきたいと思います。
さて、子供に勉強させたい時、「いい点を取ったら小遣いをあげよう」と言う親がいます。これを少し工夫してみます。最初に小遣いを与えておいて、「悪い点をとったら、取り上げるぞ」と言っておきます。一度手にした小遣いを失うのは子供にとって大きな悲しみですので、そうならないように頑張って勉強するかも知れません。

儲かる人の喜びよりも損する人の悲しみの方が大きいというのは、企業経営者や政治家にとっては大きな問題となりかねません。何らかの改革を断行しようとすると、利益を受ける人と損をする人が必ず出て来ます。改革で利益を受けそうな人は小さな声で賛成し、改革で損をしそうな人は大きな声で反対するという事になると、改革を断行するのは簡単な事ではありません。
たとえば規制緩和によって新しくビジネスが始められる人は嬉しいはずですが、それほど頑張って賛成運動はしないと思います。一方で、規制に守られている人にとっては、規制緩和は損する話なので、必死で反対運動をすると思います。なかなか規制緩和が認められないのは、そのような事情もあります。
今ひとつ、政治家が選挙の時に掲げる公約も気をつけなくてはいけません。ここに道路を作りますというような具体的な公約をしてしまうと、住民は道路が手に入ったつもりになってしまいます。その時の嬉しさは小さいのに、「やっぱり無理でした」と言われた時には、家の前の道路が取り壊されてしまうような感覚で猛烈に腹を立てることになります。「迷惑施設を撤去します」という公約も同じです。近隣住民は、迷惑施設が無くなった姿を思い描いてしまうので、「やっぱり無理でした」と言われると、猛烈に腹が立ちます。政治家が公約を守らなくても、住民の生活が選挙前より悪くならないので、本来ならば住民がそれほど怒ることはおかしいことですが、人間の心理は理屈では説明できないので、政治家の方はくれぐれも注意して欲しいと思います。
企業経営者も同じです。景気が良い時に賃上げをしてしまうと、景気が悪い時に賃金引き下げをすることは大変です。社員の猛烈な怒りを買うと思います。それならば、景気が良い時にも賃上げをせず、ケチな社長だと思われていた方がいいかも知れません。

まとめ:人間は、100円儲かった嬉しさよりも100円損した悲しさの方が大きく感じる動物です。それによって合理的でない行動をとってしまう人が多いので気をつけましょう。

分野: 経済予測 |スピーカー: 塚崎公義

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ