QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > SCM(3):災害とサプライチェーン (企業戦略、生産管理/目代武史)

SCM(3):災害とサプライチェーン

目代武史 企業戦略、生産管理

18/02/28

 今回のテーマは、サプライチェーンの災害への備えについてです。サプライチェーンとは、直訳すると供給の連鎖です。原材料の仕入れや部品の生産から製品の生産・物流、市場での販売まで、ものづくりの上流から下流に至る流れを意味します。
 2016年4月に発生した熊本地震は、まだ記憶に新しいところです。2011年の東日本大震災、2007年の新潟中越沖地震、そして1995年の阪神淡路大震災と日本は地震大国として知られています。これ以外にも台風や洪水の被害も毎年起こっています。このような災害は生産活動にも大きな影響を及ぼします。特に、サプライチェーンは多くの企業が関わる活動で、一度どこかが被災をするとそれがサプライチェーン全体に影響が及ぶ可能性があります。そこでどのような備えが必要かという事が今回のテーマになります。

 まずは、過去の災害の事例を紐解きサプライチェーンへの影響について考えていきたいと思います。例えば、自動車産業の場合、1台の車におよそ3万点の部品が使われています。その8割が部品メーカーによって生産されています。自動車メーカーに直接部品を納めるメーカーのことを一次メーカーと言いますが、これがまず数百社あります。さらに、一次メーカーに部品を納める二次メーカー、二次メーカーに部品を納める三次メーカーという具合に階層的に様々な部品メーカーが関わっており、膨大なネットワークとなります。
 日本の自動車産業は、トヨタ生産システムに代表される独自のサプライチェーンの仕組みを構築していて、世界的に高い評価を得てきています。例えば、比較的少数に絞り込まれた部品メーカーと長期的に安定した取引関係を構築してかんばん方式などによって在庫を最小化することで、高い品質と低いコスト、そして緻密な納期管理を実現してきました。
 しかし、2011年3月に発生した東日本大震災では、自動車部品のサプライチェーンが途絶し数ヶ月にわたって自動車の生産が滞る事態が発生しました。トヨタの国内生産台数は、2011年3月は前月比で50%以上低下し、さらに翌4月には2月から80%あまり減産してしまいました。東日本大震災が未曽有の大災害だったとはいえ、日本的なサプライチェーンシステムが災害に弱いのではないかという疑念が生まれるようになりました。

 では、どうしてこのような大規模な操業停止になったのでしょうか。いくつか要因が挙げられています。
 一つ目の要因は、調達の集中化です。東日本大震災では、ルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)の那珂工場(茨城県ひたちなか市)が甚大な被害を受けました。ルネサスは、自動車向けのマイコンの世界最大手の一つで、那珂工場はその主力工場です。トヨタをはじめとして国内外の自動車メーカーが那珂工場からマイコンを調達していたことから、同工場の操業停止は多くの企業に影響を与えました。那珂工場に競争力があったがゆえに、調達が集中し、災害時にはかえってそれが仇となったわけです。
 二つ目の問題は、ルネサスに代わる調達先が見つけられなかったことです。半導体の生産では、大規模な装置が多数並べられ、超高精密加工がおこなわれます。製品仕様が納品先に最適化される一方、生産設備も工場ごとに最適化されていました。このような加工特性、設計特性、設備特性のゆえに、代替生産先が見つけられない事態になったわけです。
 三つ目の問題は、サプライチェーンの可視性に関することです。自動車メーカーは、直接取引のある一次部品メーカーのことは大変よく知っています。どの工場でどの部品をどのような設備で作っているかということまで把握しています。しかし、一次メーカーがどこから部品を買っていて、二次メーカーがさらにどこから部品を買っているのかという、取引階層の向こう側のことは必ずしも把握していませんでした。自動車メーカーとしては、サプライチェーンの途絶は大問題ですから、被災したサプライヤーがあれば支援はやぶさかでないわけですが、どこが被災しているのか把握できなければ、支援しようがないということが問題になりました。
 四つ目が在庫の問題です。日本の生産システムでは、平時においては出来るだけ在庫を減らすことを目指しています。もし安全在庫が十分にあれば、災害が発生しても生産が止まらなかったのではないかという疑問の声が上がるようになりました。これには大変ジレンマがあります。平時においては出来るだけ在庫は減らして競争力を追求したい一方で、非常時に対しては安全在庫があればサプライチェーンの頑健性を高めることができます。このバランスをどうとるかという議論が巻き起こりました。

 今日のまとめです。日本は地震や台風などの災害大国です。サプライチェーンの構築は平時における競争力の追求と災害時の頑健性や復旧力のバランスを十分に織り込む必要があります。サプライチェーンが途絶するリスクは調達先が集中しているとき、代替調達先への切り替えが困難であるとき、サプライチェーンの全容が可視化されていないとき、そして安全在庫が適正に確保されてないときに高まると言えます。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ