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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 世界大学ランキング (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

世界大学ランキング

永田晃也 技術経営、科学技術政策

18/02/20

 今回は世界大学ランキングをトピックに取り上げます。
 ご存知のように、昨今、日本の大学をめぐる政策論議では、しばしば世界大学ランキングの中で日本の大学の順位を上げることが課題とされることがあります。例えば、内閣府教育再生実行会議が2013年に公表した第三次提言「これからの大学教育等の在り方について」では、日本が再び競争力を高めるための「大きな柱の1つ」として大学のグローバル化の「遅れ」を取り戻すことが位置づけられ、大学の国際的存在感を高める上での達成目標として「今後10年間で世界大学ランキングトップ100に10校以上をランクインさせる」ことが掲げられていました。この提言を受けて、2014年から「スーパーグローバル大学創成支援事業」が開始されています。
 こうしたことから、研究成果などの国際的存在感を重視する大学の側でも、世界大学ランキングを強く意識するようになっています。後で申し上げるように、この世界大学ランキングの計測方法には様々な問題があることが知られているのですが、それにも関わらず大学側が無視できないのは、特に留学を志願する外国の学生が、留学先を決める際に参考にしているという点にあるようです。この点では、ビジネススクールにとっても無視できない課題になる可能性があるのですが、ただビジネススクールのみを対象としたランキングについては、いくつか例があるものの、ほとんど人気投票か知名度調査の域を出ないものであることが歴然としており、あまり影響力があるとは言えません。ここでは、大学政策にも影響を及ぼしている代表的な世界大学ランキングを取り上げてみます。
 代表的な世界大学ランキングは、英国の高等教育専門誌THE(Times Higher Education)と大学評価機関QS(Quacquarelli Symonds)が2004年に共同で開始したものです。これは、2010年以降QSが単独で作成・公表し、THEは新たにThomson Reuters社と共同でランキングを作成・公表するようになりました。
 QSのランキングを例にとると、6つの評価要素で構成されており、各要素の内容とウエイトは、専門家による評価が40%、企業経営者による卒業生の評価が10%、教員1人当たり学生数が20%、教員1人当たり論文被引用数が20%、外国人教員の割合が5%、留学生の割合が5%となっています。専門家や経営者による評価(reputation)は、アンケートによるもので、そのような主観的な評価が50%ものウエイトを占めているわけです。アンケート回答者の国籍が英語圏に偏っていることも、従来から度々批判されてきました。
 こうした評価方法には、主観的な評価に大きく依存している点以外にも様々な問題が指摘されてきました。例えば、論文数や論文の被引用数を集計する際に用いられているデータベースに登録されている論文は主に英語で発表されたものであるため、英語圏以外の、自国語で研究発表を行うことを重視している学問分野を擁する大学にとってフェアな評価にならないという問題です。また、国際性に関する評価項目では、教員や学生の全てが外国人になると最高値に達するような指標を用いていること自体が問題視されています。
 このような問題があるにも関わらず、大学が自らのランキングを上げようとすると何が始まるでしょうか。例えば、大きなウエイトを占めている主観的評価を高めるためにレピュテーション・マネジメントに精を出し、著名な学術誌に盛んに広告を掲載するといった本末の転倒した取組みが始まるわけです。

 ところで、苅谷剛彦さんという社会学者が『オックスフォードからの警鐘』という本の中で興味深い指摘を行っています。苅屋教授は、2000年代以降、中国からの留学生が急速に増大したことを背景として、大学間で留学生の獲得をめぐるグローバルな競争が巻き起こった点に注意を促しています。特に大学全体で年間に100億ポンド以上の外貨を稼いでいる英国では、この競争が重く受け止められ、大学教育が外貨獲得のための国際戦略の一部として位置づけられたと言います。このような指摘を踏まえてみると、THEとQSが英国の機関であることも、これらの機関によるランキングの作成・公表が2000年代に始められたことも、その仕組みが英語圏の大学に有利な評価結果をもたらすものであることも、全て偶然ではないこととして腑に落ちるでしょう。
 政策担当者も、大学も、留学生も、このような素性の怪しいランキングにいつまでも振り回されるべきではありません。

今回のまとめ: 世界大学ランキングには、多くの方法的な問題があります。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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