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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 大学発ベンチャー創業に必要な研究者の知識(その2) (産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ/高田 仁)

大学発ベンチャー創業に必要な研究者の知識(その2)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

18/02/15

【今回のまとめ】
・ベンチャー創業時に最も重要なことは、"Exit is everything!"である。会社の出口のあるべき姿(ありたい姿)がIPOなのか、大手による買収なのか、あるいはライフスタイル型なのかを、創業メンバー間で十分に議論し、統一見解を持っておくことが、その後の事業計画や資金調達に大きく影響する。

・前回は、大学発ベンチャー創業に係る大学研究者に必要な知識として、(1)目指す会社のタイプと出口戦略について解説した。今回は、(2)資金調達について解説したい。

(2)資金調達
・前回解説したベンチャーの出口戦略と資金調達には密接な関係がある。出口としてIPOを目指す場合、その前提として、ベンチャーが行う事業は「明確な価値創造が可能か?」「強い市場ニーズが存在するか?」「差別化され持続的な優位性を持てるか?」「利益・リターンの潜在力があるか?」「タイミングは良いか?」といった問いに明確に答えられるかが重要となる。
・しかし、創業初期から上記質問に明確な回答が得られるわけではない。初期のビジネスモデルや事業計画はあくまでも「仮説」の塊に過ぎないため、手戻りやピボットを繰り返しながら仮説検証を行い、その結果として真に目指すべきビジネスモデルや事業計画に行き着く。
・その間の資金は、まずは通称"3F"によって賄われる。3Fとは、Founder(創業者)、family(家族)、Friends(友人)の頭文字からきている。創業メンバーや親しい家族・知人が、総額で2〜3千万円程度の資本金を出資して会社を設立し、当初数ヶ月間程度のビジネスモデルの仮説検証を行う。
・それだけで不足する場合は、エンジェルと呼ばれる個人投資家(成功したベンチャー経営者や資産家)からの出資を受ける。彼らは、ベンチャーキャピタルほど強烈なリターンを求めず、かつ、自身の起業経験から有益なアドバイスを行うメンターとしての役割を担うことも多い。ベンチャーにとっては、創業初期の不安定な時期に、資金とアドバイスの両方が得られる貴重な存在である(だからエンジェルと呼ばれる)。
・しかしなが、大学発ベンチャーのような研究開発や技術開発、市場開拓(マーケティング)に多額のコストが必要な場合、3Fやエンジェルからの資金だけでは不足する。ベンチャーの保有現金は、創業からしばらくの間はマイナスに沈み、最初の売上が得られた点を境に上昇を始め、その後、急成長して過去の累積損失を解消して収益が積み上がる。この形はアイスホッケーのスティックに似ていることから、ホッケースティック・カーブと呼ばれる。大学発ベンチャーの場合、マイナスに沈む金額が大きく、3Fやエンジェルだけでは不足するため、それをベンチャーキャピタルから資金調達によって補うのである。
・会社の目指す姿がライフスタイル型の場合は、初期の投資額がそれほど大きくないためホッケースティックのように深く沈むことがなく、かつ売上見込みも比較的立てやすい(=ローリスク・ローリターンのビジネス)。従って、金融機関からの借入と返済を繰り返すことで会社を経営することが可能な場合が多い。しかし、IPO型や買収型はハイリスク・ハイリターンであり、後の急成長(大成功)を前提に創業からしばらくは投資がかさむため、そのリスクマネーを供給するのがベンチャーキャピタルの役割である。
・では、ベンチャーキャピタルとはそもそもどのようなビジネスモデルなのか?通常はベンチャーキャピタル会社がジェネラル・パートナー(GP)やリミテッドパートナー(LP)といった投資家(機関投資家、個人投資家、事業会社、他のVC、等)から資金を集めて、数十億〜数百億円(米国等では数千億に達することも)規模の投資ファンド(投資事業組合)を組成し、通常は10年程度の運用期間内に有望なベンチャー企業に投資を行い、投資先が株式上場あるいは大手に買収された時の株の売却によってキャピタルゲインを得て、それを自ら(キャピタルゲインの15~20%程度)への利益配分も含めて投資家に配分する。アップルの場合は、アーサー・ロックというVCが1978年に投資した5.7万ドルが、1980年のIPOによって1,400万ドル(約250倍!)となった。
・ここで、創業チームはIPOのメリット/デメリットについて正しく理解しておく必要がある。IPOのメリットとしては、資金調達先の多様化、継続的な資金調達、他社買収力の向上、社会的信用の向上(顧客や取引先)、従業員のモチベーション向上、などが挙げられる。一方のデメリットとしては、監査料や手数料などコスト負担、買収リスクの増大、株主からの短期視点での経営圧力、企業情報の開示(流出)、株主対策(IR)への時間とコスト、株価低迷時の従業員の幻滅、といったことが挙げられる。特に重要な点は、経営の自由度を維持できるか否かであり、創業メンバーはその点を予め頭に留め置いて、そもそも「IPO型」を目指したいのか、VCからの投資を受ける前に決めておく必要がある。

・2回に渡って、大学発ベンチャー創業時に大学研究者が知っておくべきことについて解説したが、兎にも角にも、"Exit is everything!"である。会社の出口としてのあるべき姿(ありたい姿)は、IPOなのか、大手による買収なのか、ライフスタイル型なのかを、創業メンバー間で十分に議論し、統一見解を持っておくことが何よりも不可欠である。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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