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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > SCM(2):ブルウィップ効果の抑制 (企業戦略、生産管理/目代武史)

SCM(2):ブルウィップ効果の抑制

目代武史 企業戦略、生産管理

18/01/25

 前回はサプライチェーン・マネジメントについてお話ししました。原材料や部品の生産、仕入れから物が作られて、私達の手元に届くまでの流れ全体のことをサプライチェーンと言い、その仕組みをどうするかがサプライチェーン・マネジメントとなります。サプライチェーン・マネジメントの課題の一つにブルウィップ効果があります。
 ブルウィップ効果とは、サプライチェーンを需要の情報が遡っていく過程で、注文の増減が増幅されて伝わっていく効果のことです。このブルウィップ効果が発生すると、注文量が大きく変動していって安定的で効率的な生産活動が妨げられるということが知られています。お客さんが100欲しい時に、お店側は110在庫を持とうとし、メーカーへの発注ではさらに余裕を持たせていくという具合に、注文量が増幅されて増えていったり減っていったりする状況が起こるということです。
 
 物の流通は伝言ゲームに似ています。顧客が発した需要情報は、小売店舗、卸売業者、メーカー、部品メーカー、原材料メーカーへと次々に伝達されていきます。その過程で発注量が必要以上に膨らんだり、逆に萎んだり、あるいは伝達が遅れたりということで需要情報が歪められていくわけです。
 例えば、酒屋さんやコンビニでのビールの販売を考えてみたいと思います。ビールの販売量は、日々変化します。その中には予測できる変化もあれば、予測が難しい変化もあります。例えば夏や年末などの季節性の変化というのは比較的予測しやすい変化です。一方で、需要予測が難しい変化もあります。ある調査によると、夏場は気温が1度上がるとビールの販売量は大瓶で1日80万本増えると言われています。しかし、日々の気温が何度になるかは、厳密には予測が出来ません。このような日々の細かな需要変動に対応するために、普通は在庫で対応します。
 一番良いのは実際のビールの売れ行きに応じて卸売業者へ発注を細かく調整することですが、実際は小口のタイムリーな納品は難しいため、一定の間隔でまとめ発注をすることになります。例えば、1週間に1回だけ発注するという場合を考えると、過剰な在庫は持ちたくありませんが、品切れも防ぎたい。品切れによる販売ロスを防ごうと思うと、どうしても実際の販売状況に少し余裕を持たせた発注になりがちです。同じことは卸売業屋にも当てはまります。これがブルウィップ効果の引き金となります。
 過剰の発注を生む要因は他にもあり、例えば受注をかけても納品までの時間が長い場合です。発注は週1回だけれども納品は2週間後とすると、お店側は2週間後を見越した発注をかけなければならなくなります。品切れを防ぐためにも実際の需要よりも多めの発注を仕掛ける原因になってしまいます。
 もう1つは発注単位の大きさです。商品の発注は、事務処理効率や物流効率を考えて、普通はあるロットサイズで行われます。つまり、ビールは1本単位ではなくてビールケース単位で発注をするということになります。これを発注ロットと言いますが、これが大きくなるほど1回ごとの納品量は多くなり、納品された商品が売り切れるまでの期間も長くなっていきます。そのようにして店舗在庫が少なっていくと、また一度に大量の商品が発注されることになってしまいます。さらに、特売などのセールスキャンペーンも受発注量を大きく変動させる要因になります。一時的に大きな売上を得たとしても、その裏側では発注量が大幅に変動してしまって、サプライチェーンに負荷をかけて、かえってコストアップになる恐れがあります。

 ブルウィップ効果を抑えるためには、第一に、サプライチェーンの各段階での情報共有が重要になります。そこでPOSシステムやVMI(ベンダー管理在庫)、かんばんシステムなどによって、注文情報を企業の垣根を越えて共有して実際の需要に応じて生産納入できる体制を作ることが大切になってきます。
 第二に、納品のリードタイムの短縮と発注サイクルの縮小、発注ロットサイズの縮小が鍵となります。必要な品を小口で高い頻度で短いサイクルで納品をすることが出来れば発注情報の精度を上げることが出来ます。ただ、発注頻度を上げると発注の手間や物流コストも上がっていくので、発注処理の自動化や共同配送のような効率化も必要になってきます。
 第三に、販売の安定化も重要です。特売は一時的に販売量を増やすことが出来ますが、オペレーション効率はむしろ悪化します。それが回りまわって、特売日以外の販売価格の上昇にも繋がってしまいます。そこで、例えばアメリカの小売大手ウォルマートは、エブリデイ・ロープライスという方針を掲げて、販売量と発注量の安定化を図っています。

 今日のまとめです。ブルウィップ効果の抑制には企業の垣根を越えたサプライチェーン全体の最適化の観点が不可欠になってきます。サプライチェーンの各段階が個別の最適化を図ろうとすると、過剰発注や過剰生産を引き起こしてサプライチェーンに負荷をかけてしまします。そこで、正確な需要情報のタイムリーな共有や納入リードタイムの短縮、発注ロットサイズの縮小、価格安定化による販売量の安定化といった対応が有効になってきます。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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