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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > コモディティ化時代のネーミングの重要性 (マーケティング/岩下仁)

コモディティ化時代のネーミングの重要性

岩下仁 マーケティング

17/12/07

コモディティ化が進んで多様な商品があふれる今日では、厳しい市場を考えると一時的であってもヒット商品を生み出すことは容易でない、こういったことについてこれまでお話をしてきたと思います。これまでお話してきたように様々な試行錯誤により、企業の商品開発担当者は顧客の心にふれるようなヒット商品を生み出しているわけです。しかしながら、一時的に売れても長期間これが続く様なロングセラーのブランドを作ることは至難の業になります。

しかし、コンビニやショッピングセンター等に行って日用雑貨や食料を見渡すと、やはりそこで輝くロングセラーのブランドがあります。こういったロングセラーのブランドは、一体どの様に企業の方たちは作っているのでしょうか? 今回は新しい商品のカテゴリーを作り出してロングセラーブランドの構築に成功した事例として、森永製菓のウイダーinゼリーを取り上げてみようと思います。

私もスポーツをする時にこれを愛用しているのですけれど、この商品はエネルギーのチャージですとかビタミンといった栄養を手軽にとれるゼリー状の飲料です。いくつものブランドが今こういったゼリー飲料を出していますけれど、二位のブランドを大きく引き離してリーダーの地位を確固たるものにしています。実はこのウイダーinゼリーですが、1994年に市場に初めて投入されてから今日に至る20年間以上の間世の中に根付いていて、ロングセラーのブランドとして輝きを放っているわけです。開発の出発点ですけれど、実は厳しい状況下で限界に挑むアスリートの方々の声を反映したものだと言われています。アスリートといえば、以前取り上げたエクストリーム・ユーザーにあたります。

一般的な使い方とは違って極端な使い方をするのがエクストリーム・ユーザーですけれども、彼らへのインタビューの結果から手軽に素早く栄養補給出来て、食べた後もすぐに動けるものが欲しいですとか、あるいは缶飲料では途中で止められないからなんとかしてほしいといったリクエストが森永製菓に寄せられてきました。同社の素晴らしい所は、こうした要望に非常に真面目に真摯に向き合った所です。その結果として誕生したのが飲むと食べるという新しい食料飲料のコンセプトです。既に皆さんおなじみかと思いますが、携帯性に優れたストロー付きのパウチのパッケージで、シルバーが基調なシンプルなデザインがウイダーinゼリーには採用されています。実は92年に現行品の前身ともいえるウイダーinドリンクといった商品を森永製菓は発売しています。一般の消費者の方が栄養補給できる缶飲料として、実はここ九州地区でテスト販売がされています。

それから2年もかけて、中身を液体からゼリーに替え、缶パッケージをパウチに替えてウイダーinゼリーという新たな市場を作ることに成功したわけです。懐かしさを感じられる方も多いかと思いますが、90年代には木村拓哉さんが出ていた「10秒チャージ2時間キープ」ですとか、オダギリジョーさんが出ていた「10秒飯」といった面白いCMを多く作って、先発優位もあり1994年の発売から2005年まで売り上げを着々と伸ばしています。

しかし、2005年頃から競合・後発ブランドがたくさん出てきました。これによって厳しさが増して、売り上げの伸びが頭打ちになってしまいました。その頭打ちを打開するためにまた仕掛けたわけです。

2014年、マルチビタミン、マルチミネラルといった栄養剤のネームからカロリーハーフ、カロリーゼロというカロリー量別のネーミングに変更しています。この理由は体に良いビタミン・ミネラルはどういったアイテムにも入っていますので、カロリー表示を直接消費者に訴えることによって価値を高められるのではないかというふうに考えたわけです。ブランドネームはブランドのマネジメントをしていく上で非常に重要な要素と考えられています。まさに定石のとおりネーミングに注力したわけです。しかし、期待に反してこのネーミングリニューアルは失敗に終わってしまいました。

この理由ですけれど、ウイダーinゼリーの購入者の多くはビタミンやミネラルといった栄養素で購入を決めるわけです。僕もそうなのですけれど、スポーツをする時にはどうしてもマルチミネラルみたいなきちんと栄養が補給できるかどうかが大切なわけです。だけどもネーミングをカロリー別にするとこれが分からなくなります。こういったところが失敗の要因だったと言われています。しかし、森永製菓の対応が非常に迅速だったのですね。2014年の夏にはすぐにカロリーハーフをマルチビタミンに、カロリーゼロをマルチミネラルに戻してネーミングで栄養素別の重要性を訴求し直しています。

さらに、重要なブランド要素の一つでネーミングのほかにスローガンというものもあります。このスローガンにおいても工夫をしておりまして、10秒チャージを復活させたのです。こうした非常に迅速な取り組みが功を奏して、2015年から売上が再び拡大しています。その後はニーズの多様化に応えて、スポーツに加えて、簡単な朝食代わりにして時間の短縮になるですとか、あるいはつわりがきつくて食事がとれない妊婦さんですとか、保存食という点を活かして防災といったことが結びついて売り上げを着々と伸ばしています。派手さはどれもないのですけれど、忍耐が求められる取り組みですよね。現在でも、ウイダーinゼリーの売り上げは着々と伸びているようです。

今日のまとめです。今回はロングセラーブランドの一例として、森永製菓のウイダーinゼリーを取り上げました。市場を新しく作り先発優位を発揮しても、いずれ競合にシェアを奪われてしまいます。その時には新たな戦略を打たねばならないのですが、早急に修正すれば十分にリカバリーが可能と言えるでしょう。

分野: マーケティング |スピーカー: 岩下仁

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