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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (50) グローバルR&D (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (50) グローバルR&D

永田晃也 技術経営、科学技術政策

17/12/14

 今回は、「グローバルR&D」という語をキーワードとしてお話します。ただ、これはキーワードといっても、熟語として定着しているわけではありません。世界的な視野で展開されるR&D--研究開発を意味している語ですが、そのような研究開発の特徴自体は、単に研究開発のグローバル化とも国際化とも表現されることがありますし、研究開発の成果をイノベーションに結びつける活動まで含める場合には、「グローバル・イノベーション」といった語が用いられる場合もあります。いずれの語を用いるにせよ、ここでは企業が研究開発をグローバルに展開する際の目的などを、イノベーション・マネジメントの観点から解説してみたいのです。

 一般的に企業の事業活動が国際化していくプロセスは、まず製品等の輸出から始まり、やがて輸出先の市場が十分に成長すると海外直接投資を経て現地生産を行うようになるといった段階を経ることが知られています。さらに現地市場が高度に成長してくると、企業は単に生産のみを現地で行うのではなく、現地市場のニーズに対応するための研究開発を行うようになります。その意味では、研究開発の国際化は、企業の事業活動が国際化していくプロセスの最終段階を特徴づける動きとしてみることができます。
 ただ、企業が研究開発を国際的に展開する目的は、自社製品が販売される現地市場のニーズに対応することに限られるわけではありません。世界には様々な国・地域に固有の研究開発資源----例えばある科学技術の分野において卓説した成果を上げている大学・研究機関やそこに所属する研究者・技術者の存在、知的伝統、知的財産、あるいは研究開発の資料となる固有の自然資源などがあります。それらの活用を目的とする研究開発の国際化は、単に国境を越えるという意味で国際化と呼ぶよりも、地球的な規模で展開するという意味でグローバル化と呼ぶことが相応しいと思われます。そのような研究開発活動が生み出す製品も、また特定の市場での販売でなく、グローバルな市場での販売を指向しているわけです。

 研究開発活動そのものの国際化ないしグローバル化にも、いくつかの段階があります。まず、前段階として、既に生み出されている技術自体を国際的な取引の対象とすること、つまり技術貿易を行う段階があります。特許の国際ライセンス契約などがこれに含まれます。次に新たな技術を生み出すための研究開発活動を、国際的な協力関係の下で行う段階ですが、これには委託研究・受託研究や、共同研究開発が含まれます。最後に、海外に研究開発拠点を展開し、現地で直接、研究開発を実施する段階です。
 この海外研究開発拠点を展開する最終段階は、企業にとって直接投資を伴うリスクの高い活動になります。それだけに、何故、企業は海外研究開発拠点を設置しているのかについては、だいぶ前から実態を踏まえた研究が行われてきました。
 R.C.Ronstadtという研究者が1984年に発表した論文では、海外研究拠点が、その目的によって4つのタイプに分類されています。すなわち「海外子会社への技術移転」を目的とする拠点、「現地市場向けの研究開発」を目的とする拠点、「世界市場に向けた研究開発」を目的とする拠点、「本社のための長期的・探索的な開発」を目的とする拠点、の4つです。その後の研究では、企業の海外研究開発拠点の目的は、現地市場向けの研究開発から世界市場に向けた研究開発に進展する傾向があることなどが示されてきました。
 最後に日本企業の状況をみておきます。文部科学省科学技術・学術政策研究所「民間企業の研究活動に関する調査報告」の2010年版は、回答企業1,189社について海外研究開発拠点の設置状況などを報告しています。それによると、海外研究開発拠点があるとした企業は141社(11.9%)でした。また、海外主力研究開発拠点の活動目的として回答頻度の高かった項目は、1位が「海外市場向け製品・サービス工程の開発」で39.1%、2位が「世界市場向け製品・サービス工程の開発」で22.6%となっています。こうして見ると日本企業の研究開発もかなりグローバル化が進展しているように見えますが、実は撤退している事例も少なくないのです。この点については、機会を改めてお話します。

今回のまとめ: 海外研究開発拠点の目的は、現地市場向けの研究開発から世界市場向けの研究開発に進展する傾向があります。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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