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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (49) TRL(技術成熟度レベル) (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (49) TRL(技術成熟度レベル)

永田晃也 技術経営、科学技術政策

17/12/13

 今日は、TRLというキーワードを取り上げます。これは、Technology Readiness Levelの略で、技術成熟度レベルと訳されています。
 TRLは、技術開発が、どの段階まで進捗したかを定量的に把握するための尺度で、TRAと呼ばれる評価の仕組みの中で用いられます。TRAとは、Technology Readiness Assessmentの略で、こちらは技術成熟度アセスメントと訳されます。
 このTRAという評価の仕組みは、1980年代にNASA(アメリカ連邦航空宇宙局)によって開発されたことが知られています。アメリカでは今日、NASAの他、国防総省(DOD)やエネルギー省などの研究開発プロジェクトにおいて、技術評価のツールとして活用されていますし、また大企業の研究開発プロジェクトにも導入事例があります。
 欧州でも、TRLの導入が進んでいます。EU(欧州連合)は、域内での共同研究を推進するために「フレームワーク・プログラム」という研究開発プログラムを実施してきたのですが、それが第7期で終了した後、2014年から「ホライズン2020」という後継プログラムを開始しました。このプログラムでは、EUが公募する先端的な技術開発事業の公募条件の中に、TRLに基づく技術成熟度のレベルが定められています。また、ドイツにはフラウンホーファー協会という大規模な研究機構があるのですが、そこでは比較的早くから研究開発マネジメントの方法としてTRLが導入されていたことが知られています。
 一方、日本での導入は、まだ緒に就いたばかりの状況にあるというべきかも知れません。しかし、それでもJAXA(宇宙航空研究開発機構)では、NASAと同様のTRLが導入されていますし、環境省の公募事業でも導入が試みられ、応募者向けにTRL計算ツールとその利用マニュアルが提供されています。経済産業省の産業構造審議会がとりまとめる研究開発評価に関する報告書の中でもTRLの概念が用いられていることがあります。TRLの必要性に対する認識は次第に高まっているようですから、今後、我が国でも政府機関が行う公募研究に対する提案書の中で、応募者にはTRLによる技術成熟度の申告が求められることが増えてくるかも知れません。

 そこで、TRLの内容について簡単にみておきます。TRLは、技術成熟度を9つのレベルに分けて定義しています。その内容は技術分野によって多少異なるのですが、ここでは最初に開発されたNASAの定義をみることにします。
 まずTRL1は、基礎的な原理の発見です。以下、数次は成熟度が高まるにしたがって、大きくなります。TRL2は、技術的なコンセプトや応用の定式化です。ここまでが、基礎技術研究のレベルとされます。
 TRL3は技術的なコンセプトの検証、TRL4は実験室的な環境での妥当性の確認です。TRL2からTRL4までは、フィージビリティ(実現可能性)を確認するための研究というレベルに位置づけられます。
 TRL5は実際的な使用環境での妥当性の検証、TRL6は実際的な使用環境でのプロトタイプ(試作品)の実証実験です。TRL3からTRL6までは、技術開発のレベルとされています。
 TRL7は宇宙環境での試作システムの実証実験です。TRL5からTRL7までは、実証レベルとされます。
 TRL8はシステムの現物に関するテストです。TRL6からTRL8までは、システム開発のレベルとされます。
 TRL9はシステムの現物に関する実際の運用です。TRL8からTRL9まではシステムのテスト及び運用開始のレベルとされます。

 TRLの各レベルには、多くのチェック項目が設定されており、その項目に従ってTRLのユーザーが進捗状況を点検していくと、どのレベルにあるのかに関する判定結果が、定量的に割り出される仕組みになっています。TRLは、技術開発の進捗状況を可視化することによって開発担当者らに現状認識の共有を促し、プロジェクトの計画的な実行を支援するツールとしての活用が期待されています。しかし、実際のプロジェクトは必ずしもTRL1からTRL9まで一直線に進むとは限らず、随所に新たに発見された問題を解決するためのフィードバック・ループが存在するという点を考慮しておく必要があるでしょう。

今回のまとめ: TRLとは、技術成熟度レベルを意味する語であり、その指標は技術開発の進捗状況を評価し、管理するための方法として用いられています。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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