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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > タイの成長~中進国の罠①~ (国際経営、国際物流/星野裕志)

タイの成長~中進国の罠①~

星野裕志 国際経営、国際物流

17/11/09

9月にタイのバンコクに出張しましたが、今年は日本とタイの修交130周年にあたり、滞在中に日本から世耕経済産業大臣と500名を超える空前の経済ミッションが日本から訪問していました。JETRO主催によるタイの副首相、商業大臣、貿易産業大臣、投資委員会長官らが出席する参加者1,300名の大きな経済イベントに参加する機会がありました。

日本から500名とは本当に大変な数ですが、それはタイが日本にとって、それだけ重要なパートナーだからだと言えます。一昨年までの40年間にわたって、海外からの直接投資の額において、日本が最大の投資国でした。実際にタイに進出する日本企業は、5千社を超えるようですし、バンコクの日本人学校は、生徒数約2,700名で世界最大だそうです。いかに日本から派遣される駐在の人が多いかということです。特に進出する日本企業の特徴としては、5割強が製造業で、これはASEANの中でももっとも高い比率です。

また別の例では、昨年のタイの自動車生産台数は、世界第12位の194万台でしたが、その9割までが、日本の自動車メーカーによるものでした。タイで生産された完成車の約4分の1が、オセアニア、さらに4分の1がアジア各国に向けて輸出されています。まさに日本の自動車メーカーの輸出拠点として機能しています。日本にとってタイという国の重要性は今までもこれからも変わらないと思います。

ただそのタイの成長に、少し陰りあるいは踊り場にきているということを今日はお話をしたいと思います。

タイの企業のヒアリングやロジスティクスの調査、あるいはタイの大学での集中講義でここ数年間毎年のように出張しているのですが、実はその逆で、なんて豊かなのだろうと感じさせられることがよくあります。

例えば、日本よりもはるかに大規模で高級なショッピング・モールが次々と建設されて現地の人が溢れていたり、学生が世界中でほとんど価格の変わらないスターバックスでお茶を飲んでいたり、公式の所得水準からすると、どうしてこんなに購買力があるのかと、疑問に思うことがよくあります。

確かにタイと言えば、開発途上国には含まれないのでしょう。一人当たりの国内総生産(GDP)が3千ドルから1万ドル程度を中所得国と呼びますが、現在タイの一人当たりの国内総生産(GDP)は、5,900ドルですから、まさに中所得国といえます。

「中進国の罠」、もしく「中所得国の罠(middle income trap)」という世界銀行が紹介した考え方があります。それは、経済成長に成功した結果、開発途上国から中所得国入りを果たしたものの、そのレベルで成長が停滞し、先進国入りができない状態のことです。韓国や台湾も1990年代に同様の状況に陥りましたが、いままさにタイが直面しています。

かつて日本企業がタイに進出した理由は、低賃金の労働力が得られることや政治的経済的な安定といったカントリー・リスクの低さがありました。その結果、繊維や自動車産業やそれを支えるサプライヤーなどの周辺企業が、続々とタイに投資をしてきました。

ところが持続的な経済成長の結果、中所得国の仲間入りを果たしたことで、かえって人件費の上昇やさらに低賃金の開発途上国からの追い上げで競争力を失い、経済成長が停滞する現象に陥ったということになります。さらには、近年のタイの政情不安や洪水で工場の生産が止まるといったことも起きてきていますし、日本以上のスピードで進む少子高齢化による労働力不足も不安材料になります。

いままでタイの強みだった点が、もはや通用しなくなっているということになります。中国の人件費の高騰やさまざまなリスクから、チャイナプラスワンということが言われ、日本企業はリスク分散の観点から、中国から進出先のシフトを考えた時に、候補の筆頭がタイだったわけですが、そのタイにも人件費やリスクなどが生じてきているということですね。

日本にとってタイは経済的にも重要なパートナーですが、経済成長の結果、「中進国の罠」、もしく「中所得国の罠」という状況に陥っています。開発途上国からは脱したものの、先進国という次の段階にいけないという状況について、お話をしました。

タイ政府は、今後の成長に向けて、「Thailand4.0」という施策をうち出されていますので、そのことを明日はおはなししたいと思います。

分野: 国際ロジスティクス 国際経営 |スピーカー: 星野裕志

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