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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > ESG投資について(その2) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

ESG投資について(その2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

17/10/05

前回は、ESG投資とは環境や社会、そして企業統治の問題に真摯に取り組む企業に対する投資であり、そのような投資方針自体が投資家にとっての長期的なリスクの低減とリターンの向上につながり得ること、そして、株主にとっての企業価値を重視する企業への投資を補完するイニシャチブであるという話をしました。今日は主に日本にとってのESG投資について考えてみたいと思います。

日本においては英米とは違って、これまで株主は企業のステークホルダーとして相対的に軽んじられてきた経緯があり、企業が株主の期待に応えるために短期的な株価を過度に重視する経営に陥るという懸念はそれ程大きかった訳ではありません。その意味では、英米におけるようにESG投資の重要性がことさら強調される差し迫った事情があった訳ではありませんし、そのためもあってか日本においてはESG投資に対する関心がそれ程高かったわけでもありません。しかし、最近になって、日本にとっての固有の背景、即ちコーポレートガバナンス改革との関連もあってESG投資が注目されつつあります。

日本では2013年以降、アベノミクスの成長戦略の一環としてコーポレートガバナンス改革の取り組みが行われて来たことには、これまで何回か触れてきました。この改革の目的は、日本企業が全般に過度にリスク回避のスタンスに陥り、その結果、成長のための投資に慎重になっているという問題に対処するために、機関投資家と経営者が建設的な対話を行って、これまで軽視されてきた株主を含む全てのステークホルダーの長期的な利益のための積極的な経営を行うよう促すことで、企業の収益力を回復させ、経済全体の成長につなげて行こうというものです。

つまり、「持続可能な経済成長」という長期的な目的のために必要となる、環境や社会を含む全てのステークホルダーに対する企業の配慮を、経営者と機関投資家の対峙、対話を通じて働きかけて行こうとするという点で、ESG投資の考え方を採り入れたものと考えることができます。つまり、日本において、このESG投資に対する支持が広がることは、アベノミクスにおけるガバナンス改革の推進にも通じるという関係にもある訳です。

それでは日本におけるESG投資への実際の取り組み状況はというと、環境や社会を重視するという考え方は経営理念としは早くから採用されてきました。中には謳い文句に過ぎず、実体を欠くようなケースもあったでしょうし、また、環境や社会の問題への取り組み方も個々の企業単位にとどまり、考え方が明示的に共有されてきた訳でもありませんでした。それでも、株主にとっての企業価値に偏る経営とはなって来なかったことで、投資家を巻き込んで一つの流れにしようというESG投資のイニシャチブに対する反応は、ショート・ターミズムの弊害に対する切実性を抱える英米に比べると、実際の動きは鈍かったといえます。

しかし、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2年前(2015年)にPRIに署名したことで、日本でも漸く証券市場において、ESG投資に対する関心が高まってきました。というのも、GPIFは世界最大(規模)の年金運用機関であり、日本国内の株式保有額は約30兆円にも及ぶ「池の中のクジラ」と評される巨大なプレーヤーだからです。GPIFは今年7月からこのESG投資を始めており、当初は1兆円程度からという方針を明らかにしていますが、このGPIFがESG投資を開始したことの市場へのインパクトは極めて大きいといえます。

具体的には、既にESG銘柄として選定された企業の株式からなるインデックスに投資を行っていくとみられますが、そのインデックスに組み入れられた企業の株式銘柄については、今後市場の注目度が高まり、株価の安定や上昇につながることが期待されます。さらにそうした投資家の投資態度を反映して、企業が今後一層ガバナンス改革の趣旨に沿った経営や投資家との対話を強化していくことを期待したいところです。

まとめ:日本においては、アベノミクスの成長戦略の一環であるコーポレートガバナンス改革の施策の中に、ESG投資の考え方が織り込まれてと言えます。GPIFがESG投資を開始したことで、日本でも関心が一層高まり、そのことが企業のガバナンスへの取り組みの強化をもたらして、ガバナンス改革の実効性が高まって行くことが期待されます。

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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