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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > ESG投資について(その1) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

ESG投資について(その1)

平松拓 企業財務管理、国際金融

17/10/04

最近、株式などへの投資を行う人の間で、ESG投資が話題に上ることが多くなっています。今回と次回の2回で、このESG投資に関連したお話をしてみたいと思います。
ESG投資のEはEnvironment、つまり環境、SはSociety、つまり社会、そしてGはGovernance、すなわち企業統治を意味しますが、これら3つの問題を重視した経営を行っている企業に対する投資を行うのがESG投資です。例えば、環境問題では二酸化炭素排出量削減への取り組み、社会問題では女性への均等な就業機会の提供、ガバナンス問題では株主を始めとする様々なステイクホルダー、すなわち利害関係者への対応、これ等にしっかり取り組んでいる企業に選択的に投資をしようとするものです。

一般的には、企業が利益の追求意外にこうした問題に取り組むことは素晴らしいことと受け止められますし、また、投資家がそうした企業を応援することも素晴らしいこととされ、特に異論を唱える人は多くはないと思います。しかし、実際に自分のお金を運用する投資家個人の立場から見ると、企業がこうした問題に積極的に取り組んだとしても、それは短期的にはコスト増要因ではあっても、それが利益につながる保証はない、即ち、株価の上昇には繋がらず、むしろ低下要因にもなるかもしれない。そう考えて、建前はともかくとして、実際にはそうした活動に熱心な企業への投資に二の足を踏むという事があっても不思議はありません。しかし、このような企業の取組みに対して、社会を持続的に維持するために望ましい企業経営の在り方であるという、先に述べたような価値判断がなされると共に、企業がそうした問題に取り組むことが長期的に企業価値の増大と企業の持続的な成長に繋がり、そのような企業に投資することで、逆に投資家も長期的に投資リスクが減って、投資リターンの向上が見込めると考えた場合はどうでしょうか。

一頃、企業の社会的な責任ということが強調され、そうした立場から、企業倫理を重視して社会貢献に熱心に取り組む企業に対して積極的に投資するSRI、すなわち社会的責任投資が世界の1つの流れになりかけました。しかし、その時には社会の持続可能性ということに焦点が当たったものの、それが投資家にとってどのようなメリットがあるのか、すなわち長期的な投資リターンの向上に繋がるのかというところまでの議論にはなっていなかったために、結局盛り上がりを欠いたということがありました。

然るに、今回のESG投資については、2006年に国連が責任投資原則(PRI:Principle of Responsible Investment)というものを掲げて、最終受益者、即ち最終的な投資家や、その投資家から委託されて投資を実行する機関投資家の意思決定プロセスの中にこのESG課題を反映させようというイニシアチブを提唱したことに端を発しています。そこで重要なのは、そのことによって投資リスクの低減と投資リターンの向上にも繋がるはずだという考え方をそこで明示したことです。2008年にはリーマンショックがあり、短期的な視点から投資を行うことによる悲惨な結果を多くの投資家が嫌というほど味わい、機関投資家の間にも反省が広がった事もあって、このESG投資という考え方が広まってきました。

SRIとかESG投資というものが注目される背景には、株主にとっての企業価値を重視するアメリカやイギリス的なガバナンスについてしばしば指摘されるように、株主にとっての企業価値、即ち、株価を重視するガバナンスの下では、企業は短期的な株価上昇の為の経営に駆り立てられがちで、環境や社会問題などへの取り組みが疎かになるという懸念があります。そして短期的な視点による経営は、逆に長期的な経営リスクの増大にもつながり、結果として投資家にとっての投資リターンの低下という事に繋がるおそれがあります。そのために、PRIにより、投資家の目を短期的な株価ばかりではなくて、より長期的な環境、社会問題への企業の取組みにも向けさせ、そのことを通じて企業に株主以外のステイクホルダーも含めた長期的な利益を図るような経営を行わせ、このような問題を克服しようとするものです。すでに世界では1,800に迫る数の機関投資家が、この国連のPRIに署名してESG投資の考え方を採用しており、その数は増す一方です。

かつてケインズが金融市場における投資行動を美人投票に例えました。要するに、自分が美人だと思う人に投票するのではなく、他人が美人だと思って投票するであろう人に投票することになるということです。その意味で、ESG投資は、他人が美人と考える一つの有力な基準を示したと言えるのではないかと思います。このESG投資が順調に広がれば、社会全体にとってのメリットともなり、投資家にとっても、株価上昇のメリットが見込めるというwinwinの関係も期待できるのではないでしょうか。

今日のまとめです。ESG投資とは、環境や社会の問題そして企業統治の問題に真摯に取り組む企業に対して投資を行おうというイニシアチブであり、そのような投資方針自体が長期的な投資リスクの低減と投資リターンの向上に繋がり得るという考え方です。短期的な株価を追い求める経営に陥りがちな企業に社会的な責任を重視させることに繋がるとともに、投資そのものについての長期的なメリットにも言及することで投資家の間の支持を広げつつあります。

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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