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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > コモディティ化時代の製品開発:ハンター型アプローチ (マーケティング/岩下仁)

コモディティ化時代の製品開発:ハンター型アプローチ

岩下仁 マーケティング

17/10/17

今日は、コモディティ化市場の製品開発の話です。製品導入後の戦略としてハンター型アプローチについて話をしたいと思います。ハンター型アプローチとは聞きなれない言葉だと思いますが、製品を開発する時に往々にして起こる問題に、ニーズがあるかどうかわからないといった不透明な状況があります。このような時に、まずプロトタイプ・試作品を市場に導入してお客さんの反応を得て、プロトタイプの修正を繰り返しながら製品開発を行うというのがハンター型アプローチになります。

写真の掲載サイトとして今絶大な人気を誇っている米国のInstagramがあります。実はInstagramは元々Burbnという位置情報サービスのSNSとしてビジネスをスタートさせています。しかし、当初はいまいち人気が出ませんでした。Burbnの用途について仮説を検証していく上で判明した事は、位置情報やスケジュールを変更したり写真をシェアしたりするといった様々な機能の中で、写真のアップロード機能が最も頻繁に利用されていた事です。

この事が分かったので、同社はBurbnを写真共有サービスであるInstagramに修正をし、2012年には8,000万人を超えるユーザーを獲得しているのです。初めは色々な機能があったけれど市場に導入して試作を繰り返してInstagramにいき着いたことがポイントになります。こういうやり方がハンター型アプローチです。

わが国では、アース製薬が2007年に発売した「コバエがホイホイ」が有名な例になると思います。この商品は独特な赤い突起と黒酢などの匂いでコバエをおびき寄せて、捕獲・殺虫までしてくれる。更に、1か月後にそのまま破棄できる商品です。この商品は飲食店やキッチン回りの様に殺虫剤を利用することが難しいところでの需要を掘り起こすことに成功しています。

コバエがホイホイの成功の背景には、2000年から2001年まで発売されていたハエ取りポットをベースにしたハンター型アプローチの視点が活かされています。ハエ取りポットはハエの習性を積極的に捕獲に活用した商品で、捕獲後の処理も衛生的で簡単でした。容器の中の誘引剤によってハエをポットの中におびき寄せて、ポットの中に取り込んで殺虫するという商品が、ハエ取りポットになります。ところがこのハエ取りポットを実際に店頭に並べてみると課題が見つかりました。誘引・捕獲・殺虫の仕組みが十分でなく、効果が非常に限られたものだったわけです。

この点にアース製薬は着目して、自社の生物研究棟でコバエを観察することでいくつかの習性を発見したのです。ハエの習性には、突起部にとまりやすい・赤い色を好む・エッジに沿って移動するがあります。これらの習性を上手く活かした機能を商品に反映させるために、多くのプロトタイプ・試作品を開発して実験を繰り返しています。何度も何度もプロトタイプを作って修正を繰り返していったわけですけども、その成果として、止まり木状の赤い色の突起とエッジを持つ誘導路、これを配した特徴的なカバー、そしてコバエが好む黒酢と紹興酒の成分を配合した誘引剤が開発されました。更に、捕獲・殺虫後に容器外にコバエが出ない工夫も組み込まれました。

そして、最後に残った殺虫機能が課題だったわけです。殺虫剤のプロトタイプとしては固体が一般的ですが、液体やゼリーなどが次々にテストされていきました。しかし、どうしても効果が完全になりません。さすがに同社の担当者も困ったようですが、偶然別の商品で使用されていた角切り形状のゼリーが目にとまったようです。このゼリーを試してみると、なんとゼリーの隙間にコバエが入っていったそうです。これで最後の殺虫機能もクリアできました。

従来の延長線上にない商品を生み出すためには、その時点で完璧と思えるなら商品としてまず市場導入するわけです。そして市場から得られる情報を活用して走りながら修正するというハンター型アプローチが有効だと分かるかと思います。アース製薬でゴキブリホイホイを作り出した大塚顧問は「完璧な商品は存在しない。競合のできないことを開発の手がかりとして新たな価値を生み出す」と述べています。コバエがホイホイの開発でも活用された生物研究棟では、90種類以上の害虫を飼育しており、どんな条件の下でも生態を研究できるようにしています。

この継続的に蓄積された経験が、コバエがホイホイにも随所に生かされています。ただし、ハンター型アプローチを採用する時に注意点もあります。それはプロトタイプの段階の商品は、最初は売れない状況が続きます。従って、売れないという状況が許容される組織風土が必要です。失敗を次に昇華していく組織の気概がより優れた商品を開発するわけです。

今日のまとめです。本日はハンター型アプローチの商品開発について話を進めてきました。ニーズが未完成の商品であっても、導入後に社内のリソースを活かすことでより優れた商品開発が可能になると言えるでしょう。

分野: マーケティング |スピーカー: 岩下仁

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