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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > コモディティ化時代の製品開発:情報の粘着性 (マーケティング/岩下仁)

コモディティ化時代の製品開発:情報の粘着性

岩下仁 マーケティング

17/10/16

コモディティ化時代の商品開発ということで、前回はエクストリーム・ユーザーに注目して話を進めてきました。エクストリーム・ユーザーというのは、一般的な使い方をするお客さんではなくて、極端な使い方をするお客さんのことです。そのエクストリーム・ユーザーを活用する際に知っておくべき概念というのがあります。それが情報の粘着性です。

ある場所から別の場所に情報を移転させる時に発生する障害を情報の粘着性と言います。数式とか化学式のように目に見える情報と違い、ノウハウやスキルのように目に見えない情報は伝達が難しいと言われています。この伝達の困難さが情報の粘着性です。伝達が困難であればあるほど、情報の粘着性は高いということになります。

情報の粘着性の高い状況では、情報の送り手である企業と受け手である消費者の双方にとって工夫が必要です。今回は、フリュー社のプリントシール機の事例を用いて、情報の粘着性の視点がエクストリーム・ユーザーを活用する時にとても重要であることについてお話をしたいと思います。

1995年に登場して、プリントシール機の市場で常に60%超のシェアを取ってきたと言われるのがフリュー社です。オムロンのエンターテイメント事業を出処とする同社は、常に業界をリードする商品を開発しています。ちょうどこの頃僕も高校生だったのですが、男友達と皆で変な顔をしてプリントシール機を撮ったのを覚えています。2000年を超えた頃、今度は大学生だったわけですけれど、写真を撮るだけでなく、絵や文字を書けるプリントシール機も登場して、皆で落書きして楽しんだのは、今となってはいい思い出になっています。

プリントシール機の技術は進化していきます。2007年に登場した美人プレミアムでは、目を強調する機能をいち早く搭載して、目力ブームを生み出したきっかけにもなっています。他にも全身を撮影できるルミ、自撮感覚が楽しめるアールといったものもあるんですよ。これらの商品の背景には、製品開発の時にエクストリーム・ユーザーの存在がありました。

では、どのようにこのエクストリーム・ユーザーを探し出したのでしょうか? 写りや自分の顔の仕上がり具合へのこだわりが強いユーザーに着目しています。フリュー社はプリントシール機のエクストリーム・ユーザーを選ぶ際に、自分好みのプリントシール機を探すことができ、その日の化粧や服装に合わせて使い分けができる女子高生を抽出したわけです。それだけこだわりを持ってプリントシール機を頻繁に利用している人達は、今日はどの機種にしようとか、今日の服装に合わせてこのモードにしようとか色々な使い分けをします。そういう人たちをエクストリーム・ユーザーとして抽出してインタビュー調査をしました。

エクストリーム・ユーザーの活用の仕方が非常に大切なポイントです。新商品につながるアイデア・ヒントを引き出すためにエクストリーム・ユーザーにインタビューすると思われがちですが、実は、好き嫌いや改善点を口に出して言ってもらい、自分たちが考えた企画や新機能が女子高生のニーズ・感覚とずれていないかを確認するのが非常に重要です。

しかし、それならば平均的な普通のユーザーにインタビューしても変わらないのではないか、と思われます。ここに面白い理由が潜んでいるわけです。プリントシール機の開発において重要な視点は「どれだけ盛るか」これにあると言われています。実際よりも目を大きくしたり顔を小さくしたりすることによって、可愛く写真を出来ることを盛るというわけです。

ところが、この盛る尺度は非常に曖昧で、説明が難しいわけです。冒頭でお話しした、情報の粘着性が非常に高い状態にあるということが分かるかと思います。実は、エクストリーム・ユーザーが、情報の粘着性の問題を解決してくれます。例えば、開発する何機種かの画像を並べて盛れていると感じる写真を選ぶ事は全てのユーザーが出来ます。しかし、その理由を答えてもらおうとすると、平均的なユーザーはなんとなくしか答えられません。一方で、エクストリーム・ユーザーは、例えばまつげがちゃんと写っているからとかカラー・コンタクトの色がきちんと出ているからといった、具体的で分かりやすい言葉で答えてくれるわけです。

それだけ女子高生が頻繁にこだわりを持ってプリントシール機を使っているからこそ、具体的に色々言えるということです。このエクストリーム・ユーザーの解説のおかげで、担当者は強化する機能・コンセプトを理解できます。フリュー社の事例からは、平均的なユーザーは非常に代表的な意見を持っている一方で、伝えるための語彙力に乏しい事が分かります。しかし、情報の粘着性に注目してみると、エクストリーム・ユーザーの豊富な語彙力によって、商品の長所や短所を言葉で伝えてもらえます。企業の商品を提案する情報を消費者の言葉へ翻訳してもらえるわけです。

今日のまとめです。今回は、前回に続いてエクストリーム・ユーザーについて話を進めてきました。エクストリーム・ユーザーは企業の情報を消費者に伝える際に生じる情報の粘着性の障害を低下させる働きがあります。

分野: マーケティング |スピーカー: 岩下仁

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