QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワード(47) 社内ベンチャー (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワード(47) 社内ベンチャー

永田晃也 技術経営、科学技術政策

17/10/02

 今回は、「社内ベンチャー」というキーワードを取り上げます。英語ではInternal Corporate Venturingと言い、ICVまたはCVと略称されますが、その日本語訳である「社内ベンチャー」とか「企業内ベンチャー」という語は、既に広く知られているようです。Corporate Entrepreneurshipという英語表現もあって、こちらは「社内起業」と訳されていますが、内容的にほぼ同義と理解して良いと思います。
 今回、これをイノベーション・マネジメントのキーワードとして取り上げるのは、大企業がイノベーションを実現するための方法として制度的に社内ベンチャーを使用するということが行われているからです。
これまでお話してきたように、大企業は経営資源が豊富だという点をはじめとして、イノベーションを実現する上で多くの有利な条件を備えているのですが、他方において巨大な組織を運営するために官僚制的なルールが支配的となることに伴って意思決定が遅くなったり、個人の貢献が組織内に埋没することによってモチベーションが損なわれたりする点で不利になるとも言われてきました。また、既存の事業で技術的に成功している大企業は、当該事業が足かせとなって、しばしば新しい技術や事業機会に乗り遅れるという傾向も指摘されてきました。社内ベンチャーという仕組みは、こうした問題を回避して、大企業が新たな事業機会に取り組むための方法として期待されているわけです。
米国のノースウェスタン大学にあるケロッグ経営大学院のロバート・ウォルコットとマイケル・レピッツは、社内起業を「既存企業の内部のチームが、現在持っている資産、市場、能力を活用しつつ、それらとは一線を画した新規ビジネスを考案し、育成し、市場投入し、管理する活動プロセス」として定義しています。この定義は、社内起業を新製品開発に止まる活動や、分社化された事業ないし合弁事業と区別しています。

 社内ベンチャーを制度的に運用している企業では、事業テーマを新規事業開発部のような組織が提示してチームを募るか、事業テーマそのものを社内公募した上で選抜するという方式が採られています。新規事業テーマは、既存事業から独立した組織によって取り組まれ、事業化が成功した後には分社化されるケースもあります。
こうした社内ベンチャーの利点は、しばしば独立ベンチャー企業と比較する観点から、大企業の資金的背景があることや、そのブランド力を活用できることにあると言われてきました。しかし、これらの利点は他方において社内ベンチャーの担当者に対するプレッシャーを大幅に緩和することになり、「背水の陣」を布いて努力するほどのコミットメントを引き出せないため、社内ベンチャーの成功率を低める要因になっているという指摘もあります。実際、大企業の手厚い庇護の下で行われる取組ならば、冒険的な企てを意味するベンチャーという表現は名ばかりですし、単に新事業開発と呼べばよいわけです。
ただ、一方で日本企業では公募制による社内ベンチャー制度に対して、社員のチャレンジ精神を育成する効果や、挑戦的な企業文化を育成するといった効果が期待されてきました。その意味では、新規事業開発という本来の目的よりも、日本企業では人材育成に力的をおいた制度運用が行われてきたと言えるでしょう。経営学のテキストには、社内ベンチャーをベンチャー企業の一形態として位置づけている例もありますが、現実の社内ベンチャーの運用実態からみると、それは適切ではないということになるかも知れません。

 最後に、日本企業では、どの程度、社内ベンチャーが導入されているのかを見ておきたいと思います。少し前のデータですが、内閣府が2008年に公表した「企業のリスクへの対応力についてのアンケート調査」の結果によると、回答企業810社のうち企業内ベンチャー制度を設けているという企業は10.9%であり、制度を導入していない理由としては、「必要性があまり高くない」とする回答が54.0%を占めていました。最近になって、社内ベンチャー制度を導入する日本企業は増えてきたと言われているのですが、この10年前の調査結果からみると、制度に対する日本企業の理解と導入にはまだまだ課題がありそうです。

 今回のまとめ: 社内ベンチャーとは、大企業がその経営資源を活用しながら既存事業とは一線を画した独立組織を設置して新規事業開発に取り組む方法です。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ