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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (48) リビングラボ (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (48) リビングラボ

永田晃也 技術経営、科学技術政策

17/10/03

 今回は、「リビングラボ」というキーワードを取り上げます。
 これは最近になって日本でも聞かれるようになった語で、まだ確立された定義はないようですが、一般的には「生活の中にある課題を解決するための新たな技術、製品、サービス、システムなどを開発する際に、企業、大学、行政機関などがユーザーとなる市民を巻き込んで実証実験を行うための場や仕組み」を意味するものと理解してよいと思います。リビングラボは、その目的からして前にお話した「ソーシャル・イノベーション」、すなわち社会的な課題解決に対応するイノベーションを実現するための具体的な手法として期待されているのです。この手法は、米国で提唱され、北欧をはじめとする欧州各地に広まったと言われています。

 「ラボ」という語は、研究所や実験室を意味するlaboratoryの略称で、研究所や実験室というと、外部に対して閉ざされた空間というイメージが強いと思いますが、それを意識的に開かれた場にしていくという動きはしばらく前からあり、そのような研究の場は「オープンラボ」と呼ばれてきました。
 オープンラボという取組は、これも前にお話した「オープン・イノベーション」に関係しています。オープン・イノベーションとは、企業が社外のアイデアと社内の資源を結びつけ、あるいは社内の未利用資源を社外に提供することに基づくイノベーションを意味していると申しました。これは近年、世界的に注目を集めてきたコンセプトですが、その具体的な方法のひとつとして取り組まれてきたのが、「オープンラボ」です。
 オープンラボとは、「企業がその研究開発組織の一部を、社外の研究機関との連携を推進するために開放するか、そこに外部研究者を招致し、共同研究などを実施する場」として定義されます。
 文部科学省科学技術・学術政策研究所が毎年実施している「民間企業の研究活動に関する調査」では、その平成21年度調査において、オープンラボの設置状況を調査しています。この調査は、私が人事交流で科学技術・学術政策研究所の総括主任研究官を務めていた間に指揮をとったものですが、実態把握を行うには時期尚早であったと見えて、回答企業1,300社のうち設置していると回答した企業は39社、3.0%に止まりました。しかし、その時点で設置を検討しているという企業も他に5社ありました。おそらく、今日あらためて設置状況を把握すれば、回答企業の件数もかなり増えているのではないかと思います。
 実際の前後関係は定かでありませんが、リビングラボという取組は、このオープンラボの考え方が、社会的な課題解決に適用されたものとして概念的には理解できると思います。
 
 さて、研究者と市民が恊働作業を行う場としてリビングラボを作るには、いくつかの方法があります。一回限りのワークショップ開催ではなく、継続的に市民の参加を得て、その意見やニーズを設計段階から反映させるための場を設けるという方法が基本ですが、試作された製品やシステムをテストする際には、数名の市民にテストユーザーとして普段の生活の場で使用してもらい、その状況を観察する方法のほか、その試作品を導入した擬似的な生活空間を作り出して、そこで使用してもらうという方法もあります。
 日本でも企業や公的研究機関において、リビングラボを設置する事例が見られるようになりました。例えば、経済産業省の産業技術総合研究所は所内にリビングラボを設置し、個人の日常的な活動を科学的に理解することを目的とした研究を進めています。それによって、転落、溺水、火傷といった暮らしの中でのリスクを検知していこうというわけです。
 九州大学が文部科学省の補助事業として進めている「共進化社会システム創成拠点」事業の中でも、様々なセンサーを使って日常生活の詳細データをとり、新たな市民生活サービスを開発することを目指して類似の取組が行われています。今後、私たちの生活の中にはAI(人工知能)を活用した新たな製品やシステムがこれまで以上に導入されてくるでしょうが、それに伴うトラブルを未然に防ぐためにも、リビングラボは活用される機会が増えると思います。

今回のまとめ: リビングラボとは、生活の中にある課題を解決するための新たなシステムなどを開発する際に、ユーザーとなる市民を巻き込んで実証実験を行うための場や仕組みを意味しています。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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