QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 正社員有効求人倍率と日本の雇用市場(その2) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

正社員有効求人倍率と日本の雇用市場(その2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

17/09/07

前回は、本年6月の正社員の有効求人倍率が、統計を取り始めてから初めて1を上回ったこと。そしてその背後には、日本の生産年齢人口の急激かつ継続的な減少があり、そのことにより必要な労働力が確保できなければ日本の経済の停滞に繋がりかねないということを話しました。そこで、今日は、労働力の確保、即ち、人手不足への対応策について話をしたいと思います。

この問題への対応策としては、まず一に、諸外国との比較で低いと言われている日本人の労働生産性を高めることがあります。労働生産性とは、同じ時間労働した時にどれだけのものを生み出せているかを示す数字です。この労働生産性については、日本の経済的なプレゼンス、あるいは全体としての経済力からすると意外に思われるかもしれませんが、OECD加盟35か国中22位と、国際比較では決して高いとはいえません。

日本では長らく終身雇用制の下で長期間の雇用を保証されて、同時に年功序列賃金体系の下で働くという労働形態が中心でした。労働者は自社に対して高い忠誠心を持って滅私奉公し、自分の生活を犠牲にしながら長時間労働にも耐えて企業の成長や経済の成長を支えてきました。ところが、製造業では効果を発揮した日本的な雇用制度も、サービス産業のウエイトが増す中ではそれが上手く発揮されず、また製造業についても、諸外国との間での競争関係の変化等によって日本的な労働形態が却って低生産性の要因ともみなされるようになってきました。これを変えてやる必要があります。

第二には、これまで十分ではなかった女性労働力や外国人労働力の活用があります。これらの活用を阻んできた背景の一つには、既に述べた日本型の雇用制度が挙げられます。つまり、女性や外国人の場合は相対的に生活面を重視する、或いは重視せざるを得ない部分があるため、生活を犠牲にする長時間労働をいとわないような同質的な集団からなる組織にとっては、女性や外国人をそのまま組織・集団の中に取り組むということが難しかったわけです。それ故に、採用するにしても正規社員と区別して非正規社員や期間限定社員という形を取ったり、仮に女性が正社員として採用されても、結婚・出産を機に退職せざるをえず、パートや非正規社員としてしか復職できないということが多くありました。

こうした点については、近年政府が「働き方改革」という形で長時間労働の抑制であるとか、フレックスタイム制やテレワーキングの奨励等を行っています。こうした働き方がより広がれば、従来の雇用環境を大きく変化させることで生産性を引き上げる可能性があるでしょうし、長時間労働の抑制、フレックスタイム制、テルワーキング等は女性の中途退職を抑制すると共に、外国人にとっても働きやすい環境を提供することに繋がります。

それから第三には、様々な形でのITの活用やロボット、AIを採用範囲の拡張を通じて、限界のある人間の労働力を代替することが考えられます。AIの進化により人が行う仕事が奪われてしまうという懸念もよく聞かれますが、その前に日本のように生産年齢人口が急速に減少する国にとっては、大きなチャンスと捉えるべき話であると思います。ほぼ日本と同じペースで生産年齢人口の減少が予想されるドイツで、いち早くインダストリー4.0という形で生産設備等にセンサーを多用して生産の効率を上げようという試みが始まっているのは、単なる偶然ではないだろうと思います。

そして第四には、少子化の進行を抑制して長期的に生産年齢人口を増やすということがあります。この点については、関連して子供保険であるとか、高等教育の無償化、世代間格差を是正するための選挙制度、その他子供を持つ世帯のための優遇税制・財政政策など、様々な議論が俎上に残っています。しかし、今のところ何が出生率の向上のために本当に効果的で望ましい施策かということについては、はっきりとした方向性が出ていないと思います。

更に移民の受け入れも今後の重要な検討課題です。ドイツでは2015年に移民や難民を100万人受け入れたと言われていますが、この背景は必ずしも人道的な配慮ばかりではありません。日本については移民受け入れについて閉鎖的な国という評価が定まっていますが、実は、高度外国人材の受け入れについては積極姿勢に転じており、諸外国と競争しようとしていることについてはあまり採り上げられません。留学生の受け入れまで含めると、実は世界で4番目に外国人の受け入れを行っている国とも言われています。国内の働き手確保の観点から、この問題に正面から取り組まねばならない時期が早晩やってくることが考えられます。

今日のまとめです。景気の変動によって上下する指標という固定観念から聞き流してしまいがちな有効求人倍率ですが、実は構造的な改革を必要とするような大きな問題点を映し出してもいます。このように経済指標を通常の捉え方とは離れて深堀りしてみると、色々な問題点が見えてくる可能性があります。

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ