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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > コスト管理(3):原価改善の考え方 (企業戦略、生産管理/目代武史)

コスト管理(3):原価改善の考え方

目代武史 企業戦略、生産管理

17/09/20

これまで、「生産管理におけるコスト管理」についてご紹介する中で、コスト管理には、コストの水準自体を決定する「原価企画」、狙ったコストを日々守っていく「原価維持」、そしてコスト水準の標準自体を引き下げていく「原価改善」の3つがあるとお話ししてきました。今日は、「原価改善を進めていく上での考え方」についてのお話です。

どうしたら生産管理を通じてコストを削減できるのでしょうか。
 製品のコストは、大まかに、生産に投入される「生産要素の価格」と「量」の2つによって決まります。例えば、レストランでは、食材などの「購入費」や従業員の「労務費」などが「生産要素の価格」になります。また、料理1皿あたりに使用される食材の量や、従業員の手間などが「生産要素の投入量」になります。一般的に、「素材」や「部品の購入コスト」、「人件費」というのは相場があり、購入部門の交渉力や、研究開発部門の製品設計によって概ね決まってしまいます。また、「労務費」についても世間一般の給与水準を元に人事労務部門が決めていきます。したがって、こうした生産要素の投入要素の価格水準というのは、生産管理部門でコントロールできる要素ではありません。
 そこでポイントとなるのが素材や部品の「投入量」や、従業員の「作業時間」です。これらに関しては、生産管理の如何によって増減することがあります。いわば「生産性をいかに改善するか」ということがポイントになります。例えば、どんなに安い食材を使用しても、食材の多くを無駄にしてしまったり、調理に失敗して何度もやり直してしまったりするとコストは下がりません。同様に、労働費もいくら正社員よりも時給の安いアルバイトを雇っていたとしても、経験不足のために調理にもたついたり手待ち時間が多くて何もせずに過ごす時間が多かったりするとやはりコストは下がりません。こうした無駄をいかに取り除いていくかというのが原価改善のポイントになってくるわけです。

以前、生産性を高める為には、正味作業時間比率を高めることが重要だというお話をしました。生産性とは、労力や材料のインプットに対するアウトプットのこと。つまり、「仕事結果の比率」ということになります。労働生産性を例に考えると、休憩時間などを省いた実労働時間を1日の生産コストで割ったものが「労働生産性」です。要するに、「1個を作るのにどれだけ実質かかったか」ということを示しており、インプットとアウトプットの比率が生産性ということになります。

作業スピードが上がれば生産性が上がるというのは想像しやすいと思います。例えば、料理1皿を1分で仕上げられるのと、10分かかるのとでは10倍のスピードの違いがあるため、それだけ時間当たりの出来高も多くなるわけです。ただし、作業スピードがアップするというのは、ある一定の水準まではいいのですが、それを超えると労働者にとっては肉体的にも心理的にも大きな負担を与えてしまい、かえってミスが増えたり不良の原因となったりして結果的には全体の効率を低下させかねません。

 そこで重要となるのが「正味作業時間比率」です。「正味」とは、生産活動の中で実際に材料や部品に対して加工を加えて付加価値を付けることをいいます。例えば、私の場合授業の準備をするために昔集めた資料を探すのに手間取ったり、プリンターのトナーが切れて交換したりと、授業の準備をするという意味では全く価値を生まない作業に時間を取られることがあります。おそらくリスナーの皆さんも身に覚えのあることがたくさんあると思います。会議の為の会議であったり、その為の資料作りであったり、発注し過ぎた資材を整理したり、ファックスで送られてきた注文データをパソコンに打ち直したりといった作業です。こういったことは、確かに仕事の一部ではありますが、お客さんにとって何か価値を生んでいるかと言うと、そうではありません。そのため、こういった作業は「動き」ではあっても「働き」にはなっていません。
 こういったものは正味作業とは対極のものとして生産管理では「付随作業」と呼び、単に「無駄」と言うこともあります。生産構造のカギとなるのは、お客さんにとって価値の生まない付随作業や無駄な作業を可能な限り排除して、顧客価値に直結するような正味作業に費やす時間をどれだけ確保できるかにあると言えます。正味作業に費やす時間を出来るだけ広げていくということができれば、作業スピードを無理に上げていかなくても、かなりの生産性向上が実現できると考えられます。
 この「正味作業時間比率」というのは、一般にはかなり大きな改善価値があると言われており、東京大学の藤本隆宏教授の調査によると、製造業のお手本と言われるトヨタ系の自動車組立工程でも、正味作業時間比率は50%程度だと言われています。その他の優良な生産現場であっても10%程度と言われています。逆に言うと、それだけ改善の余地も大いにあると言えます。

では、今日のまとめです。
 生産管理における原価改善のポイントは、「生産性の改善」にあります。生産性改善の方向性には、「作業スピードのアップ」と「正味作業時間比率の向上」という2つがあります。生産性の改善を図る上では、後者の「正味作業時間比率」が重要となってきます。生産性が高いと言われる日本の生産現場でも、正味作業時間比率は実労働時間の10%から50%しかないと言われており、改善の余地が大きく残されています。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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