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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワード(45) ソーシャル・イノベーション (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワード(45) ソーシャル・イノベーション

永田晃也 技術経営、科学技術政策

17/08/24

今日のテーマ: キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (45) ソーシャル・イノベーション


今回は、「ソーシャル・イノベーション」というキーワードを取り上げます。
 はじめに、この用語の定義を示しておきたいと思いますが、これまでのところ様々な意味で用いられており、確立した定義というものがありません。
 例えば、フランスのINSEADというビジネススクールが設置しているソーシャル・イノベーション・センターは、その目的を「持続可能な経済、環境、社会の繁栄をもたらす新しいビジネス・モデル、市場ベースのメカニズムの導入」と定義しています。この定義は広すぎるため、いわゆる「画期的なイノベーション」との区別がつきません。
また、OECDが2011年に公表したワークショップのレポートの中では、ソーシャル・イノベーションの究極のゴールは、経済的な価値を創出するばかりでなく、社会的な制度を改善することであると書かれていますが、これも定義としては広すぎて、一般的な政策プロセスにも当て嵌まってしまいます。
さらに、いちいち引用元を示しませんが、欧米の研究者による定義にも、例えば「社会的ニーズや課題に対する新規の解決策を創造・実行するプロセス」だとか、「社会変革を目的とする集合的な社会活動」といったような非常に広い概念を含むものが多くみられます。
日本の研究者による定義としては、早稲田大学の谷本寛治教授らが2013年に公刊した文献の中で行った定義が挙げられます。そこでは、「社会的課題に取り組むビジネスを通じて、新しい社会的価値を創出し、経済的・社会的成果をもたらす革新」という定義が示されています。この定義は、社会的課題への取り組みであるという点に、ソーシャル・イノベーションの特質を示すと同時に、ビジネスであるという点で公共政策との区別を明確にしており、記述的な有用性に優れていますから、ここでは、これに従うことにします。

社会的な課題をビジネスによって解決していこうとする活動は、1990年代以降、世界的な規模で活発化してきたと思います。特に90年代後半には企業の社会的責任(CSR)が問い直されるようになったことを背景として、いわゆる社会貢献事業への取り組みが活発化しました。そうした事業は、「ソーシャル・ビジネス」と呼ばれてきました。
また、社会的な課題の解決に取り組むアクターは企業に限らず、課題によってはNPOが重要な役割を担ってきました。このため、営利組織と非営利組織を含めて、社会的課題に取り組む事業体は「ソーシャル・エンタープライズ」と呼ばれてきました。その担い手は、「ソーシャル・アントレプレナー」と呼ばれています。
こうした事業が特に途上国の貧困層を対象とする場合、それはBOPビジネスと呼ばれています。BOPとはBottom of the Pyramid、ピラミッドの底辺の略称であり、1日2ドル未満で暮らしている貧困層を意味しています。

ソーシャル・イノベーションの代表的な事例として、グラミン銀行の総裁であるムハマド・ユヌス氏がバングラディシュの貧困層を対象に実施したマイクロ・ファイナンス(無担保、低金利の小額融資)を挙げることができるでしょう。グラミン銀行が、大手食品企業ダノンとの合弁企業として創設したグラミン・ダノン・フーズが、栄養価の高いヨーグルトをバングラディシュの栄養不足の子供たちに配給した事例も挙げられます。九州大学にはユヌス・椎木ソーシャル・ビジネス研究センターという組織があり、この事例については、この放送の中でも関係者によって取り上げられる機会があったと思います。

さて、社会的な課題が存在する領域に市場性が存在するとは限りませんから、その課題をビジネスによって解決する過程には必ず何らかの革新性が伴います。従って、その成功は明らかにイノベーションと呼び得るものです。一方、社会的課題は、それぞれ個別の解決策を必要とするものですから、ソーシャル・イノベーションを成功させるための要件は、簡単には一般化できないと思います。しかし、成功事例に関する知見を蓄積しておくことは、将来の取り組みをサポートする上で重要です。近年、日本でも内閣府経済社会総合研究所が「社会イノベーション事例集」を公刊するなど、こうした知見の蓄積に向けた動きがみられます。


今回のまとめ: ソーシャル・イノベーションとは、社会的課題をビジネスによって解決する活動を言います。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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