QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > スキマ市場を狙った製品開発 (マーケティング/岩下仁)

スキマ市場を狙った製品開発

岩下仁 マーケティング

17/07/28

前回からコモディティ化市場における製品開発について話を進めてきました。このコモディティ化に陥ったカテゴリで、企業はどういった製品開発を進めることで値崩れを起こさない強い製品を開発出来るでしょうか。今回は、隙間市場をねらった製品開発することでコモディティ化を防げる戦略があるか考えていきたいと思います。

マスに向けたものではないがそれを必ず必要とする人がいるというところでものづくりをするのが、ニッチ市場・隙間産業と言われるものです。コアな部分に焦点を当ててコアなユーザーに対して買ってもらって利益を確実に出していくことになります。

隙間市場の対局に位置づけられる市場はマス市場です。マス市場の場合には万人に存在するニーズを満たす市場になるわけです。この全ての人に受けられるマス市場を狙う製品ならば、例えば100人の人がいるとします。そうしますと3割が強くその製品を支持する、或いは5割が支持する、こういった数字が非常に重要になります。一方で隙間市場を狙う製品の場合には、10人の内の1人、場合によっては100人の内の1人でもその製品を強く望む消費者が存在すれば、利益に結びつく可能性があるわけです。そうした一部の人々に強く支持される隙間市場を狙った製品は、売上こそは小さいのですが高い利益を期待することが出来ます。今回はこの隙間市場を狙って、製品開発でヒット製品を連発しているキングジムの商品開発について見ていきたいと思います。

キングジムはファイルといった従来の文具だけではなくて、テプラ・電子文具等も開発している我が国の代表的な文具メーカーになります。このキングジムの製品開発のポイントですが三点あります。まず一点目は、わずかな消費者の声をニーズとして受けとめることができる組織感度です。通常のマーケティング調査では市場の共通点を探すために、ターゲットとなる人に対して大規模なアンケートを実施するわけです。多くの人を鳥瞰図のように距離をおいて捉えようとするわけですね。一方で隙間市場を狙うときはこの真逆で、一部の消費者にしつこくインタビューを繰り返して虫めがねで見るように彼らのニーズを見ていくわけです。そのため先程の例に出した、100人のうちの1人、この琴線に触れるような結果が得られるわけです。キングジムは特定のユーザーに対してのインタビューを徹底して行っているというふうに言われています。

二点目ですが、常に新しい隙間市場を追い求める機会探索力にあります。この探索力を養うために、キングジムではユニークな開発会議が行われていると言われています。この開発会議は、月に1回製品の開発担当者が企画立案して、社長以下役員が開発投資に値するかを決定します。出席者の発言は均等になっていて多数決では決めないというのがポイントです。ある発言に対して一人でも絶賛したらヒットの可能性があるとして開発を承認するわけです。皆に受けなくても、1人でもこれはいいんじゃないかと思う人がいるということはそこにニーズがあるということです。このアイデアを具体化することによって、特定層のニーズを捉えた優れた人気製品が開発されるわけです。

三点目が、決して難しい技術開発には頼らないといいます。キングジムが生み出したヒット商品の一つにデジタルメモのポメラがあります。特別なペンを使ったタッチパネルに触れるだけで字が書ける製品です。紙を無駄にしないのでエコでありますし、なんといってもゴミが出ないわけです。実はこのポメラ、メール・インターネット・ゲーム、こういった機能を全て切り捨てていて、テキスト入力機能という最もシンプルな技術のみに絞り込んでいるわけです。つまり既存にあった技術だけでも十分に特定の消費者の課題を解決しているわけです。他にもキングジムが出したヒット商品にはデジタル耳栓というものもあります。デジタル耳栓で使われている技術も社内にあったノイズキャンセリングの技術を活用したものに過ぎないと言われています。

以上の三点、これを踏まえますとどんな企業でもすぐに実践できそうな気がするのがこの隙間市場を狙う製品開発ですが、注意点が二つあります。一点目ですが、やはりニッチなところを狙うので成功する確率が1割以下と、とても低いということです。こんな市場を狙う際には、例え殆どの製品が失敗してもたまにヒット製品があれば許される寛容な組織風土が必要です。実際このキングジムでは、打率1割でもいいから画期的な製品を開発すればいいということが言われています。

二点目が例えばヒット製品を出したとしても大企業などに模倣されてしまいやすいことです。ヒットした場合にはいかにリピートしてもらえるか、これがブランドづくりの鍵になると思います。こういった二つの課題はありますが、コモディティ化した市場において、隙間市場を狙った製品開発あるいは脱コモディティ化の一つの有効な手段と言えるかと思います。

今日はコモディティ化市場からの脱却ということで、隙間市場を狙った製品開発について話を進めてきました。ポイントは組織感度、機会探索力、難しい技術に頼らない点になります。ただ一方で、なかなかヒットしない点と、すぐに他社に模倣される点、この二つには注意するべきかと思います。

分野: マーケティング |スピーカー: 岩下仁

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ