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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 改めてモーダル・シフト② (国際経営、国際物流/星野裕志)

改めてモーダル・シフト②

星野裕志 国際経営、国際物流

17/07/12

昨日は、最近の宅配便の再配達の増加で、日本の物流の限界が指摘されていますが、実はそれ以上に大変なペースのeコマースの成長に、このままではついていけないという話でした。これは大変に深刻な問題だと思います。このままでは、国内の物流のシステムが、B to Cのeコマース、あるいはネットショッピングの成長の制約要因になりかねないということです。

昨日もお話ししましたが、注文した商品が「明日くる」サービスどころか、即日に手元に届くサービスは、利用者にはありがたいかもしれませんが、大変な社会的な負荷があります。それならば、「ゆっくりくる」という宅配便を許容することも、必要なのではないかとお話ししました。

こんなお話をすると、せっかく注文した商品が、タイムリーに届かないのはどうかと言われるかもしれませんが、書籍やCDが平日に届いても、実際に使うのは週末というケースは結構有りませんか。そこで、古くて新しい課題になるモーダル・シフトです。モーダル・シフトというのは、現在の国内の貨物輸送の5割以上を担うトラックからフェリーやRORO船と言われる船舶や鉄道に、輸送方法をシフトするという考え方です。
国土交通省が2001年の新総合物流施策大綱以来、10数年にわたって本格的に取り組まれていますが、なかなか進んでいるとは言えません。

まず、モーダル・シフトの効果ですが、1トンの貨物を1㎞運ぶときに排出するCO2の量は、鉄道はトラックの1/8、船舶ならは1/4と言われています。CO2や排ガスの削減ですね。次に高齢化の進展でドライバーの確保が難しいトラック業界ですが、鉄道や船舶輸送に要する人員は、トラックに比べれば飛躍的に少ないと言えます。ひとりのドライバーが運べるトラック輸送の貨物量と船舶や鉄道の違いです。さらに、渋滞などや事故のリスクも、確率としてかなり低いことが想像できます。輸送効率も生産性も、大量輸送機関の方がはるかに高いと言えます。

モーダルシフトはそんなにいいことばかりなのになぜ進まないのか、なのですが、2010年までに、長距離輸送における鉄道・内航海運分担率を50パーセント超える水準にと計画されながら、まったく達成できていません。個別の企業では、イオンとかビール会社が鉄道輸送を活用したり、九州大学の箱崎キャンパスのすぐ近くにあるJR貨物の福岡の貨物ターミナルには、首都圏との間に、26両編成の貨物列車の直通運転が毎日行われています。

荷主の利用が進まない理由は、時間やコストにあります。鉄道や船舶で輸送するにしても、必ず貨物ターミナルや港まで、またそこからのトラック輸送が必要なので、思うほどコストが下がらないことがありますし、何よりも時間がかかるということでしょう。さらには、鉄道や船舶輸送の際に必要なコンテナの確保も必要ですし、ある程度の距離がないとモーダル・シフトの効果がでないということもあります。結局、起点から目的地まで、迅速かつ柔軟な輸送が可能なトラックが、どうしても優先されるということでしょう。

民主党政権下で公約に掲げていた高速道路無料化の実証実験が、モーダル・シフトの動きを混乱させたとも考えています。トラックからシフトさせたいのか、トラック輸送を促進したいのか、政策の混乱がありました。


今後我々が具体的になにができるのかですが、さきほどの話のように、ネットショッピングでも、今すぐに商品を手に入れたという人もいる一方で、それほど急がない、あるいは負担する配送料が安いのであれば、4−5日かかってもかまわないという顧客もいると思うのです。

いままで宅配便が、次々と顧客にニーズを満たすような革新的なサービスや、配送時間の短縮を実現してきたとすれば、これからはモーダル・シフトとして大量輸送機関を組み込んだ「しばらく待たせるサービス」を開発することも必要などではないかと思います。それが、逼迫した状況に値上げで対応するのではなく、実はゆっくりだけど安い宅配サービスを提供することが、顧客の要望に見合ったサービスになるかもしれません。


今日はトラック主体の国内輸送を鉄道や船舶などの大量輸送機関にシフトするモーダル・シフトという古くて新しい考え方を説明しました。これからの社会の持続的な成長には、利便性の追求と社会的な負荷の軽減のバランスが必要と考えます。今まで私たちが当たり前としてきた便利さを少し我慢するということかもしれません。

分野: 国際ロジスティクス 国際経営 |スピーカー: 星野裕志

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