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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワード(44)技術ライセンス (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワード(44)技術ライセンス

永田晃也 技術経営、科学技術政策

17/07/19

 今回は、「技術ライセンス」をキーワードとして取り上げます。
 技術ライセンスとは、技術の実施権のことで、技術を提供する側をライセンサー、技術を利用する側をライセンシーと言っています。ここで言う技術に関する権利には、様々な知的財産権が含まれますが、その代表は特許権であるとお考えいただいて結構です。
 ライセンシングのメリットは、ライセンサーにとっては、技術を獲得するために要した研究開発からの収益を向上させるという点にあります。それは、自社が技術を実施して利益を上げるばかりでなく、他社に実施許諾することによってライセンス収入―ロイヤリティが得られるからです。
 一方、ライセンシーにとっては、その技術と類似の効果を持つ技術を迂回発明するための研究開発を行わずに済むというメリットがあります。
 しかし、ライセンシングはデメリットも伴います。一般的にライセンシングは、技術を普及させることを通じて、市場競争の激化をもたらす可能性があります。そのため、ライセンサーにとっては、ライセンス料が得られても、その技術を排他的に実施する場合よりも収益が低下する虞があります。
 ライセンシーにとってのデメリットは、独自の技術を開発する機会を損なうという点に現れます。一般的に必須性の高い技術ほどライセンス料は高くなる傾向があります。ライセンシーは高いライセンス料を支払いながら、同時に改良的な技術や代替的な技術を発明するための研究開発を行うことが困難になります。このような場合、ライセンサーに対する従属的な提携関係が固定される虞が生じます。

 こうしたデメリットを伴いながらも、多くの企業がライセンサーの立場にもライセンシーの立場にもなっているのは、今日、イノベーションを実現していく上で必要となる技術を、全て自給自足することは困難な状況にあるからです。
 このため、ライセンシングには必要な技術を企業間で互いに融通し合う実施形態が作り出されてきました。その代表的な実施形態は、「クロス・ライセンス契約」と呼ばれるもので、特許権の権利者が互いに実施許諾を行う契約方式です。この契約方式が発展した形態として、特定の製品分野に関する全ての特許権について相互に実施許諾する「包括的クロス・ライセンス契約」があります。

 さらに、このように特許権を相互に実施許諾する契約が2社間に止まらない形態に発展すると「パテント・プール」と呼ばれる方式になります。これは、複数の特許権者が、特定の製品分野などに関連する特許権を受託機関または第三者機関に移転した上で、その機関を通じて、プールされた特許権の実施許諾を受けるという方式です。
 パテント・プールは、技術の標準化を進めるための手段としても効果を持ちます。ある技術について規格を策定しても、実際に各企業がその規格に即した製品を開発・生産する上では多数の特許権者との間で複雑な権利交渉を行わなければならないといった事態が生じます。このように、製品の事業化に当たって必要となる技術の特許権を、多くの権利者が錯綜して保有していることが妨げになる状況は、「特許の薮」と呼ばれています。パテント・プールは規格を採用した製品に必要な技術を一括して実施許諾する方式ですから、「薮」と呼ばれるような権利関係の複雑性を緩和する効果があるわけです。
 技術の標準化に重要な役割を果たしたパテント・プールの事例として、MPEG-2という技術に関する国際的なパテント・プールが知られています。MPEGとは、国際標準化機構(ISO)と国際電気標準会議(IEC)の合同ワーキング・グループが策定した動画等の圧縮技術に関する規格のことで、MPEG-2はテレビ放送向けの画像、音声等の圧縮技術を対象としています。そのパテント・プールは日本のメーカーを含む8社の出資により1997年に米国に設置され、必須特許の一括ライセンスに関する業務を開始しました。
 パテント・プールの形成に当たっては注意しなければならない点もあります。それは、パテント・プールに含まれる特許の性質などによっては企業間競争を制限する効果を持つため、独占禁止法上の問題が問われる場合もあるということです。日本では、この点について公正取引委員会の考え方が示されています。

今回のまとめ: 技術ライセンス契約の発展した形態であるパテント・プールは、技術の標準化を進める手段としての効果を持ちます。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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