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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワード(43)共同研究開発 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワード(43)共同研究開発

永田晃也 技術経営、科学技術政策

17/07/18

 今回は、「共同研究開発」をキーワードとして取り上げます。厳密には共同で行う事業が研究であれば「共同研究」、開発であれば「共同開発」と言いますが、ここでは、これらをまとめて共同研究開発と呼んでおきます。
 共同研究開発には、様々な形態があります。
 まず参加組織の関係からみると、同業種の企業間で実施される場合もあれば、取引関係のある異業種の企業間で実施される場合もあります。また、企業と大学や公的研究機関の間で実施される場合もあります。
次に実施方法からみると、参加する組織の間で共同研究開発契約を結んで実施するという基本的な方法の他に、複数の組織が共同出資によってジョイント・ベンチャーを起こし、そこで共同研究開発を実施するという方法もあります。複数の組織が協力して技術研究組合を設立することも1つの方法です。技術研究組合は、「コンソーシアム」と呼ばれることがありますが、これは共同の目的を持った複数の個人や組織によって結成される団体を意味する英語です。

我が国では、英国の研究組合制度を参考にして1961年に「鉱工業技術研究組合法」が制定されて以来、活発に技術研究組合が設置されるようになりました。この制度は、2009年に「技術研究組合法」に改正され、制度の適用範囲が拡張されています。大学や公的研究機関の組合員資格も明確になりました。
企業などが技術研究組合を設立する場合は、主務官庁に設立認可申請を行い、大臣認可を受けて設立することになります。組合の存続期間は長短様々ですが、統計上の最頻値は6年程度のところにあるようです。経済産業省の資料によると、2017年5月1日現在で54の組合が確認されています。
 我が国の技術研究組合のうち、その成果が国際的にも注目された初期の代表的な事例は、1976年から80年にかけて設立されていた「超LSI技術研究組合」です。この組合が開発したLSI(大規模集積回路)の量産技術は、80年代の日本の半導体産業の躍進に大きく貢献したと言われています。
技術研究組合には、この他にも注目されている事例があります。1990年に設立された「太陽光発電技術研究組合」は、日本が2005年までに世界最大の太陽電池生産国になる上で貢献したとみられています。また、1996年から99年にかけて活動した「汎用電子乗車券技術研究組合」は、公共交通機関で利用されるICカードの共通利用範囲を拡大するための基盤を構築しました。

企業が共同研究開発に取り組むのは、そこに様々なメリットが存在するからです。まず、参加する組織間で相互に知識を補完し合えば、全体として研究開発の質を高めることができます。また研究開発にかかるコストやリスクを分散させる効果を持つので、大規模な研究開発に取り組むことができます。競合関係にある企業が個別に研究開発に取り組むと、類似のテーマを追求する可能性が生じますが、共同研究開発のプロジェクトではそのようなテーマの重複を回避できるので、その分、テーマに多様性を持たせることが可能となり、結果的にプロジェクトの成功確率を高める効果が期待できます。さらに、企業間競争が激しい状況の下では、ある企業がイノベーションを実施しても、競合他社に合法的に模倣されてしまうといったことが生じるわけですが、そのような模倣者になる可能性がある競合を共同研究開発に参加させ、費用負担をさせれば、それは競合に対して予めイノベーションのための費用を負担させる効果を持つことになります。この効果は、「専有可能性問題の内部化」と呼ばれてきました。

一方、共同研究開発の実施には様々な困難も伴います。同業種企業間の共同研究開発では、もともと参加企業が競合関係にあるため、互いに相手の努力にただ乗りしようとする機会主義的な行動がとられやすくなります。また、共同研究開発には競争圧力を軽減する効果があるため、参加企業が熱心に研究開発に取り組まなくなる虞があります。
大学と企業との共同研究開発では、利益相反問題などの別種の問題が伴うことになりますが、この点については機会を改めてお話したいと思います。

今回のまとめ: 共同研究開発には、研究開発の質的な高度化などのメリットがありますが、それを活かすには、参加企業の機会主義的な行動や、競争圧力の軽減による弛みが生じない状況か否かを見極める必要があります。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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