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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワード(41) 職務発明 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワード(41) 職務発明

永田晃也 技術経営、科学技術政策

17/07/04

 今回は、「職務発明」というワードを取り上げます。
 職務発明とは、会社の従業者等が職務上行った発明のことを言います。この語が度々聞かれるようになったのは、職務発明に関する特許の帰属や、職務発明に対する対価の支払いをめぐる訴訟が我が国で頻発するようになってからだと思います。判決により発明者に対する巨額の対価支払いが会社側に命じられたケースもあり、発明を行う従業者と、使用者である会社側の間で、どのように利益のバランスを取るべきかをめぐる議論が活発化しました。
 我が国では特許法の35条によって職務発明について特許を受ける権利の帰属などが規定されているのですが、こうした議論を背景に、この35条を含む特許法の一部を改正する法律が平成27年7月に公布され、28年4月に施行されています。ここでは、この平成27年法改正のポイントを中心に、職務発明制度の概要をみておきたいと思います。

 まず、改正前の職務発明制度を振り返っておきます。
 改正前の特許法では、特許を受ける権利は従業者である発明者に原始的に帰属することとされていました。民法では労務提供行為の結果生じたものは使用者に帰属させているのですが、特許法では発明を行う従業者を保護する観点から、発明行為を通常の労務提供行為とは質的に異なるものとして区別しています。特許を受ける権利を原始的に発明者に帰属させるという規定は、この観点を反映していました。
 しかし、35条1項の規定は、従業者の発明行為が使用者の業務範囲に属すること、かつ従業者の現在または過去の職務に属することを要件として職務発明を定義しており、この職務発明によって得られた特許については使用者に通常実施権を与えていました。また、2項には、職務発明については特許を受ける権利を使用者に承継させることを予め定める行為(予約承継)を有効と解釈させる規定がありました。さらに3項は、発明者が特許権を使用者に承継させた場合に、相当の対価を請求する権利があるとし、4項は、その対価が使用者の受ける利益や発明に対する貢献度を考慮して決められるべきであることを規定していました。

 平成27年法改正のポイントの1つは、使用者が契約や就業規則等にあらかじめ定めることによって、職務発明について特許を受ける権利を、使用者に原始的に帰属させることを可能にした点にあります。これによって、使用者は職務発明による特許の権利を確実に取得できるようになったわけです。
 もう1つの改正のポイントは、従業者の権利が「相当の対価」の支払請求権から「相当の利益」の給付請求権に改正されたことです。この「相当の利益」とは経済上の利益であることも定められているのですが、金銭の支払いに限らず、例えば留学の機会やストックオプション(一定期間内に予め決められた価格で自社株を購入できる権利)の付与、金銭的な処遇の向上を伴う昇進・昇格なども該当します。要するに、使用者側からみれば、多様な方法でインセンティブを付与することができるようになったわけです。なお、この経済上の利益の与え方については、それが不合理にならないよう、職務発明ガイドラインと呼ばれる法定の指針も公表されています。

 従業者と使用者の間での利益のバランスを取るという論点については、いずれの立場から見るかによって、平成27年法改正に対する評価は異なるでしょう。画期的な発明を行った従業者には、それが企業にもたらす利益に見合った相当の対価を支払うべきだという立場からは、批判的な見方も提起されていますが、私はそうした批判には賛同できません。いかに画期的な発明であっても、それがイノベーションに結びついて利益を生み出すプロセスでは、経営戦略、生産、マーケティングなどの多様な機能が必須になります。したがって、発明という活動にのみ手厚い報酬を与えるような報奨制度が適切とは言えません。また、発明という活動そのものへの関心という「内発的動機」が強い研究者に対して、動機づけの要因を経済的な報酬という外発的な要因に置き換えると、却って活動に対する意欲を損なうということが立証されているのです。

今回のまとめ: 職務発明とは会社の従業員が職務上行った発明であり、特許法35条は職務発明による特許権の帰属等を規定しています。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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