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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > サービスの海外展開 (経営戦略、イノベーション、サービス経営/山口英彦)

サービスの海外展開

山口英彦 経営戦略、イノベーション、サービス経営

17/05/26

「サービス経営」についてお話ししていますが、今日は「サービスの海外展開」について触れていきたいと思います。訪日外国人観光客、いわゆるインバウンド向けのビジネスが好調なせいもあり、日本で提供しているサービスを海外で展開しよう考える企業が増えています。

しかし、いくらインバンウンドで手ごたえがあったとしても、それをそのまま海外で展開して稼げると思い込むのはやや早計過ぎます。統計データをみても、国内の上場企業の海外売上高比率は製造業が50%近いのに対して、小売業、飲食、宿泊、レジャーといった産業では、まだ1、2割程度に過ぎません。一部では成功事例も出てきていますが、日本人が誇りに思っている「おもてなしサービス」が中々海外で成功しないという実態もあります。そこには、サービス特有の様々な要因が絡んでいます。今日はその要因をいくつかご紹介します。

まず、1つ目は現地の「参入制限」です。一般的に、製造業、つまりメーカーの工場進出は現地での雇用を生み出し、技術移転に繋がるため、現地の政府からも歓迎されます。一方サービス業というのは、雇用面での地元経済への貢献が見えにくく、むしろ地場のサービス業者と競合してしまうことから歓迎されるどころか、外資系企業の参入を制限している国が多いのです。

例えば、東南アジアの一部の国では、コンビニはありますが、コンビニが古くから地場でやっている商店の商売を奪ってしまう可能性があるため、外資のコンビニチェーンでは販売品目や出店数が大幅に制限されています。いざ参入許可を得られたとしても、その他にも様々なハードルがあります。実際に現地の日系企業の方に現地で働くハードルについて伺ってみると、「現地での従業員の育成が難しい」という声が多く聞かれます。製造業に比べてサービス業は人への依存度が高いため、現地での人材育成がサービスの製品に直結します。しかし、言語や価値観、生活習慣の異なる人材を育てるというのは大変に難しいわけです。日本人相手であれば当たり前のこと、例えばお客様に笑顔で接するとか業務中の私語を慎むとか、こういったことを海外では丁寧に教える必要があります。そもそも価値観が違うため、なぜ掃除が大切なのかというその行為の必要性から理解してもらわなければなりません。さらに悩ましいのは、海外では従業員が短期間で辞めてしまうことが多いため、せっかく一生懸命育ててもすぐに新しい従業員にトレーニングをやり直さなければならないのです。また、サービスが仮に上手く軌道にのったとしても、次に頭を悩ますのは現地企業による「模倣」です。サービスというのは提供プロセスをお客様と共有してしまうため、何をやっているかが外部からすぐにわかってしまいます。ものづくりと違いサービス業は特殊な技術を要するものではないため、少なくとも形の上では模倣することが容易なのです。

他にもサービス業ならではの難しさは多々ありますが、問題点ばかりをあげても仕方がないので、今日はどうしたら成功確率を上げられるのかについて少し考えてみましょう。

まず、海外事業展開において一般に大切だと言われていることとして、「誰とパートナーを組むか」という問題があります。現地事情に詳しくて現地に豊富なネットワークをもっているパートナーと組むことは成功するための必須条件です。また、現地で採用した従業員の教育や経営理念の共有に力を入れることも当然必要になります。こうした一般的な努力を必ずやった上で是非検討して欲しいものを今日は2つほどあげたいと思います。

1つは「意識的に段階を踏む」ということです。メーカーが海外進出を考えた場合、最初に海外企業へのライセンスが上手くいくかどうか試してみて、成功したら次に輸出に切り替え、現地に自分たちの販売拠点を設けてみるということをします。そしてそれも上手くいったらいよいよ製造拠点を設けるのです。このように段階的に海外への事業展開を進めることができます。

ところがサービス業の場合は、生産と消費が同時に行われる「同時性」という特徴があるため、海外展開する際には、いきなり全機能を現地にもっていかなければなりません。これが失敗リスクを高める要因になっています。ただし、工夫次第で海外での事業展開を段階的に進めることは可能です。

例えば、外国人観光客や在日の留学生相手にサービスを提供し、現地の人達のニーズをまずは国内で探ってみるという段階があります。次に、実際に海外展開する場合でも、はじめは在来の日本人や日経企業をターゲットにした事業展開を行う段階、その後ローカルの市場にでていく段階など段階的に展開していくことが可能です。

小売業の中には、いきなり海外に大きな商業施設をかまえるのではなく、小さな雑貨店を開いてみて、お客様の好みや物流の信頼度を確かめてから本格的に参入する企業もあります。このように、サービス業でも少しずつ少しずつ段階的に進出することは可能ですので、是非そうした工夫をしてみてください。

もう一つのやり方として、サービスを出来るだけものに置き換えた上で海外にでていくという方法があります。サービスというのは、現地の従業員の依存度が高いため、これをできるだけ下げることによって、日本と同じ品質サービスを提供しやすくなります。「セコム」などがその代表的な例です。セコムは、日本の警備サービス事業で圧倒的なシェアを誇っていますが、ガードマンにたよった人的警備から早い段階で「SPアラーム」という「機械警備」にビジネスモデルの転換を行いました。実は、この点は海外展開でも非常に活かされていて、セコムはこの機械警備のノウハウを海外に移植して事業展開をしています。従って、現地の従業員に頼ることなく機械を中心としたサービス提供ができているわけです。

その他にも、海外に300万人近い学習者を抱えているといわれる公文教育研究会も物へ置き換えを強力に進めてきた企業です。教えるノウハウを教材に落とし込んで、生徒さんが自ら教材に取り組むという手法をとったことで、教室で指導する人の技術のブレをなくし、50近い国で事業展開に成功しているわけです。このように、工夫次第ではサービスをものに置き換えて海外進出することが可能です。

では、今日のまとめです。
サービス業の海外展開は障害だらけです。過去の事例を十分に研究して時間がかかることを覚悟の上で臨んで下さい。

分野: 経営戦略 |スピーカー: 山口英彦

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