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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > サービス現場の人づくり (経営戦略、イノベーション、サービス経営/山口英彦)

サービス現場の人づくり

山口英彦 経営戦略、イノベーション、サービス経営

17/05/12

「サービス経営」についてシリーズでお話していますが、今日は「サービス現場での人材育成」についてのお話です。サービス経営では、顧客満足の獲得が大事だという話をしました。その顧客満足と従業員の満足はミラーの様な関係にあると言われています。自分が提供したサービスでお客様が満足してくれると、接客を担当した従業員は手応えを感じて仕事にやりがいを覚えます。そして、満足した従業員はさらによいサービスを提供しようと努めるため、さらに顧客満足が上がっていくというように、顧客満足と従業員の満足は相互に作用しあって好循環を生んでいく仕組みがあります。

その従業員満足を生むにはどうしたらいいのでしょうか。実は一朝一夕にできるものではなく、従業員の採用や育成、配置、評価、報酬、こういったいわゆるヒューマンリソースマネジメントの全般を地道に改善していかなければなりません。今日ここでその全てをお話する余裕はないので、今日は中でも「人材育成」に絞って考えてみたいと思います。

最近サービス現場の人手が足りないということもあり、どう効率的に従業員を育てることが出来るのかということをどの企業も悩んでいらっしゃいます。そうした企業にお伝えしたいポイントが1つあります。比較的経験の浅い従業員の方に何か新しい業務を覚えてもらうというシーンを想定してください。この場合の人材育成のコツは、実際の業務習得の入る前にある3つのステップを踏ませることにあります。

最初のステップは、その従業員に「自分はこうありたい」という理想像を描かせることです。先輩従業員の活躍を見せて「早く自分もああいうふうになりたいな」と目標を持たせたり、経営理念を語り合うことで「自分はこの会社で接客のプロになるんだ」といったプライドを持たせたりします。それから次のステップが、「実技演習」です。模擬訓練とか、OJTなどさっそく実技の場に立たせてみて、軽く失敗してもらうことが大事です。OJTとは、「オンザジョブトレーニング」の略です。現場に立って実際にチャレンジすることで覚えていくというやり方になります。中身については、後程詳しくお話をします。それから3つ目のステップは「自己鑑賞」です。これは実技でパフォーマンスを出せなかった現実の自分を客観的に冷静にみつめてもらい、最初のステップで描いたこうありたい自分とのギャップを認識させます。もし本人が認識あまり出来ていないようであれば、周囲で見ていた先輩と少し話をさせて、「君はここが残念だったよ」と改善点を彼らから指摘してもらうことで、自己鑑賞がきちんと深まってきます。この3つのステップが重要です。

次に、この3つのステップについてより詳しく説明していきましょう。
まずやるべきは、最初に話した「自分はこうありたい」という高い目標イメージを育むことです。この目標が無い、あるいは目標が低いまま、次の実技演習に入ると、実技でミスをした時に「自分はやっぱり適性が無いな」と簡単に諦めてしまったり、あるいは逆に「初めてにしては悪くない出来だな」と現状の自分に満足してしまったりします。そして2つ目のステップで「現場に立たせて軽く失敗させる」そして「本人に今の自分のふがいなさを感じさせる」、つまり、理想の自分と今の自分の力量のギャップに気づいてもらうことが重要だといいました。ここで「自分には埋めなくてはならないギャップがある」と冷静な自己認識が持てると、ようやく新しい業務のトレーニングを受ける上で、こうありたい自分に近づくには基本から学ぶしかないなという本人の覚悟が定まるわけです。この覚悟がある従業員というのは、マニュアル通りで仕事がつまらないなと基本習得を軽視したりしませんし、自分はこうありたいという高い目標があるため、いざ業務を習得し終えた時に、「これでいいかな?十分かな?」と満足してしまわずに、さらに自分のスキルを磨いていこうという意欲を持ち続けてくれます。

今人材育成に悩んでいる会社というのは、この3つのステップのどれかを省いてしまっているケースが多いです。よくあるのが、従業員にいきなりマニュアルを渡して「これを覚えろ」というやり方です。先ほどの最初のステップ、「高い目標イメージ」が無いままに、マニュアルを押し付けられれば、従業員は「つまらないな」ととたんにやる気を失ってしまいます。あるいは、いきなり「仕事は実践で覚えろ」と現場に放り込んで、先ほどの2つ目のステップから入ってしまう会社も少なくありません。このやり方も最初の目標を持つステップを欠いているため、例えば新人の心が折れてしまって辞めてしまうリスクが高くなります。従って、皆さんの会社で新人育成のメニューをこれから作ろうとする場合は、是非、基本業務の習得に入る前に、この3つのステップにこだわって頂きたいと思います。

ちなみに、先ほどの手順では基本に忠実な人材を育てても、応用力が無い人材になってしまうのではないかと心配される方も結構いらっしゃいます。しかし、それは育成の手順というよりは、教え方の問題になります。マニュアル的な基本的な作業を教える際には、その作業の目的や意味を同時に伝えることが応用力の習得にも繋がっていきます。例えば、家事代行の現場で、新人のスタッフに「キッチンの調味料の容器をちゃんと整理して」と作業を指示するだけではいけません。もっと良い教え方というのは、お客さまが一目で「奇麗になった」と実感できるように並べましょうと、作業の意図や意味を認識させることです。お客さまが一目で奇麗になったと思うことが大事なのだとわかると、「よし、見栄えにもっとこだわろう」と自分で考えて、例えばお風呂場にあるシャンプーやボディソープのボトルのラベルの向きを全部前にそろえるとか、左から右に背の高いボトルから低いボトルに奇麗に並び替えるとか、こういった工夫を従業員の方自ら始めます。つまり、人間というのは、作業に込められた意味が分かると、その意味を他の作業にも当てはめてどんどん応用を利かせていくという特徴があるわけです。そのため、単純なマニュアルでこれをしなさいということではなくて、その意図や意味をきちんと伝えることが大切です。先ほどの3つのステップと合わせて、「教え方」も是非改善していただきたいと思います。

では、今日のまとめです。
サービス人材を育てる鍵は、理想の自分と今の自分とのギャップに気づかせることです。その気づきが人間の成長を生む、というお話でした。


分野: 経営戦略 |スピーカー: 山口英彦

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