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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (40) ネットワーク外部性 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (40) ネットワーク外部性

永田晃也 技術経営、科学技術政策

17/05/23

 今回は「ネットワーク外部性」という語を取り上げます。定義的に言えば、ネットワーク外部性とは、ある製品・サービスの利用者の増大が、その製品・サービスから得られる便益の増大をもたらす性質を意味しています。
 この性質を説明するために度々用いられてきた例は、電話網への加入と便益の関係です。電話サービスの加入者が1人しかいない状況では、加入者が得られる便益はゼロです。もう1人加入すると、2人の加入者には互いに通信できるという便益が発生します。このとき、2人目の加入者は、先に加入していた1人目の加入者と通信できるという便益と、加入に伴う費用を考慮して加入するかどうかを決定するでしょう。しかし、1人目の加入者は、加入者が増えたことによって生じる便益に対して、追加的な費用負担をするわけではありません。さらに、3人目の加入者が現れると、それぞれの加入者は、他の2人と通信できることになり、便益が増大するのですが、先に加入していた2人は追加的な支払いをするわけではありません。
 このように、電話サービスの加入者が増え、ネットワークの規模が大きくなると、加入者の便益は増大しますが、それは費用負担の対象にはならないので、外部的に発生する経済的利益として捉えられているわけです。
 ところで、電話サービスの例は、ネットワークの大きさが直接、便益を増大させる効果を説明するものであって、このような効果は直接効果と呼ばれるのですが、これとは別に間接効果と呼ばれる効果もあります。その効果はハードウェアとソフトウェアからなる情報機器などの例に見出されます。例えば、DVDレコーダーのようなハードのユーザー数が増大すると、それで再生されるソフトの導入が促進され、ユーザーにとっての便益が増大します。間接効果とは、このような便益の増大を言うのです。

 さて、このようなネットワーク外部性の存在は、イノベーション・マネジメントに対して問題を投げかける要因となります。
 ネットワーク外部性が働く領域では、既存の製品・サービスよりも優れた新技術を用いた製品・サービスが開発されても、容易に置き換えが進まないという現象が発生します。個々のユーザーにとっては、単独で新しい製品・サービスに乗り換えると、それが広く普及するまでの間は、却って便益が低下することになるからです。新しい製品・サービスと既存の製品・サービスの互換性が低い場合には、便益の低下は一層深刻になります。言い換えると、ユーザーにとっての切り替えコスト(スウィッチング・コスト)が重くなるわけです。こうして、それぞれのユーザーが乗り換えを躊躇っていると、結局、誰も新しい製品・サービスを採用しないという状況が生じます。このような状況を、経済学では「過剰な慣性」と呼んでいます。
 このような状況に直面した企業は、どのような戦略を採るでしょうか。
 まず考えられる戦略は、新しい製品・サービスのインストールド・ベース(普及実績)をできるだけ速やかに高めるため、思い切った低価格で供給するか、初期段階では無償で提供することです。携帯電話サービスを提供する企業が、大胆な乗り換え割引などを実施していることは、この方法の一例として理解できるでしょう。
 また、別の戦略として、新しい製品・サービスの核となる技術を他社に供与し、自由に使わせることによって自社の方式を事実上の標準(デファクト・スタンダード)として浸透させるという方法も考えられるでしょう。
 前者は、自社の製品・サービスを単独で業界標準にしようとする指向性を持つので「クローズド戦略」、後者は他社と互換性のある製品・サービスを業界標準にしようとする指向性を持つことから「オープン戦略」と呼ばれています。
 それぞれの戦略には、また異なった課題が伴うことになります。クローズド戦略をとれば、新しい製品・サービスがもたらす利益を専有できる可能性は高くなりますが、市場が大きく成長しないため、獲得できる利益の大きさが制約されます。オープン戦略をとれば、市場は拡大しますが、企業間競争が激しくなるため、自社が利益を専有できる程度は低くなります。
 したがって、二つの戦略を、どのように使い分けていくべきかが重要な意思決定問題となるわけですが、この点については、機会を改めて解説したいと思います。

今回のまとめ: ネットワーク外部性とは、製品・サービスの利用者の増大が、その製品・サービスから得られる便益の増大をもたらす性質を意味しています。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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