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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (39) バリュー・チェーン(価値連鎖) (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (39) バリュー・チェーン(価値連鎖)

永田晃也 技術経営、科学技術政策

17/05/22

 今回は、バリュー・チェーン(価値連鎖)という語を取り上げます。
 これは、マイケル・ポーターが、1985年に刊行した『競争優位の戦略』の中で提唱した概念で、企業の活動が価値を生み出す構造を体系的に捉えたものです。経営学では戦略論やマーケティングなどの研究領域で広く用いられてきた概念ですが、取り分けイノベーション・マネジメントの領域では、イノベーションが価値の増大をもたらすメカニズムや、バリュー・チェーンそのものを組み換える効果を分析する上での概念として活用されてきました。

 ポーターは、まず価値を生み出す企業の活動を、5つの主要活動と、4つの支援活動に区分し、それらが互いに依存し連結して構成する価値連鎖を、1つの大きな矢印の形で表しています。
 5つの主要活動は、矢印の起点から進む方向へ順に、「購買物流(社内物流)」、「製造」、「出荷物流(社外物流)」、「販売・マーケティング」、「サービス」と描かれています。
 4つの支援活動は、全ての主要活動を可能にするための活動であり、主要活動の上に「調達」、「技術開発」、「人的資源管理」、「インフラストラクチャー」の順に重ねて描かれています。
 これら5つの主要活動、4つの支援活動からなる9つのカテゴリーは、いずれも「価値」を生み出す活動であり、それはポーターによれば買い手が製品・サービスに対して進んで払おうとする金額によって測定されます。
 一方、これらの活動にはコストがかかります。生み出された総価値と、活動の総コストの差が、いわゆる「マージン」ですが、これは鏃--矢の角度のついた部分に当たるものとして描かれています。

 さて、このようなバリュー・チェーンの基本形から出発して、企業が自らの競争優位を診断する際には、それぞれの活動項目を細分化し、自社の特徴的な価値活動を見出していくことになります。
 ポーターは、ある複写機メーカーのバリュー・チェーンを説明のための具体例に用いているのですが、そこでは例えば主要活動の1つである販売・マーケティングが、広告、販売促進、セールス部隊といった項目に細分化され、これを支援する活動の1つである人的資源管理の価値活動はセールス部隊の募集・トレーニングとして再発見されています。

 さらにポーターは、このような企業のバリュー・チェーンを、彼が「価値システム」と呼ぶ業界全体としての活動の流れの中に位置づけて説明しています。例えば、組立メーカーからみて川上の方には、部品などの供給業者のバリュー・チェーンがあり、川下の方には流通チャネルを担う業者のバリュー・チェーンがあり、また、その先には製品の最終的な買手のバリュー・チェーンがあります。価値システムとは、こうした企業間リンケージの全体像を意味しています。
 このような全体としての価値システムの中で、自社のバリュー・チェーンがどのようなポジションを占めているのかを把握できれば、それをどのように組み換えることによって、同業他社に対する競争優位を構築できるのかが見えてくるかも知れません。例えば、サプライヤーとのリンケージが弱く、それが高コストに結びついているという状況が明らかになった場合は、そのリンケージに割って入り、部品等の調達を効率化するための新たなバリュー・チェーンを作り出すことが課題として把握されるでしょう。

 企業ないし業界が価値を生み出していく活動の流れは、技術進歩のような環境変化によって変貌します。バリュー・チェーンという概念的な枠組みは、そうした変化を分析し、価値活動の再構築を検討する上でも有用です。今日では情報技術がバリュー・チェーンの至る所に浸透し、競争優位の構造を変容させています。例えば、主活動の1つであるマーケティングでは、インターネットを活用したダイレクト・マーケティングを導入している企業が少なくありません。かつて優れたセールス部隊の存在を強みにしていた企業も、こうした変化の中でバリュー・チェーンの再構築に取り組んでいる筈です。

今回のまとめ: バリュー・チェーンとは、企業の活動が価値を生み出す構造を体系的に捉えるための概念的な枠組みです。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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