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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > シンガポールとその社会保障制度(その2) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

シンガポールとその社会保障制度(その2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

17/04/12


前回はシンガポールという国の概略についてお話ししましたが、今回はその社会保障制度についての話です。

少子高齢化が進む日本では、社会保障制度を維持するために、財源問題に如何に取り組むかが大きな問題です。一方、シンガポールにも日本同様高齢化の波が押し寄せていますが、日本とは全く違った社会保障政策を採用することで、財源問題を克服して社会保障制度の機能を維持しつつあります。

シンガポールの社会保障制度は、自分の身は自分で守るという自助の精神に基づいています。基盤となるのは、「中央積立基金(CPF)」と呼ばれる強制積立拠出金で、全てのシンガポール国民・永住者などが対象となっています。この積み立てを通じて、個々の労働者がそれぞれ自分或いは家族の将来の支出に備えることで、次世代に負担を残さない形で社会保障を残そうとする制度です。このCPFは、①住宅・保険・投資・教育資金に充てるための普通口座、②老後資金に充てるための特別口座、③入院・医療保険に充てられるメディセイブ―――の3本立てとなっています。

この内、①の普通口座の資金は、一般向け居住用住宅の購入や政府認定企業への投資、子供の高等教育資金などに使用することができます。退職後の生活を支える②の特別勘定の資金は退職後の生活を支えるための資金であることから、55歳になって初めて必要最低額12万ドルを残して引出が可能となり、62歳になれば必要最低額の縛りなしに一定額を定期的に引き出すことができるようになります。これらの口座については、個人の給与の20%を雇用者が、17%を雇用主が拠出する形で積み立てられますが、この拠出率は年齢を経ると軽減されることになっています。最後③のメディセイブについては、雇用者が毎月給与の6%~8%を積み立てることが義務付けられていますが、原則として入院費のみの目的で取り崩せることになっています。また、メディセイブを補完するものとして、ほかに大病や高額医療に備えるためのメディシールドや、近年の所得格差の拡大を反映して、低所得者のためのメディファンドなども用意されています。

つまり、シンガポールでは「貯蓄」という形で、個々の労働者に住宅取得や投資を通じた資産形成、入院医療費や老後資金への備えを強制的に行わせ、本人及び家族の将来の負担に備えさせることが基本となっています。そして医療費では、入院費についてはメディセイブから支出可能ですが、通常の通院治療は原則として全額自己負担させるというように、政府が制度的に管理する部分と、個人の責任において対処させる部分が明確に分かれています。この点、国民皆保険の名の下に、入院費から通院治療費まで、高齢者でなくとも自己負担が一律3割に限定される一方、住宅取得など資産形成については、政府の関与は住宅ローンに対する税制での優遇措置という飽くまで間接的な政策にとどまっている日本の制度とは際立った違いがあります。

また、自助を基本とするか、共助或いは公助を基本とするかという点でも、シンガポールの社会保障制度と日本のそれとは大きく異なっていると言えますが、自助の制度は効率性や人口動態変化への適応性に於いて優れています。その違いが、社会保障の財源問題の有無や、持ち家比率の比較でシンガポールの8割に対し、日本の6割という差に顕れているわけです。

勿論、シンガポールと日本では様々な違いがあり、また制度の歴史的な背景も大きく異なっていることから、シンガポールの制度をそのまま日本に転用することは難しい面がありますが、シンガポールで行われていることは、日本にとっても、変化を迫られる時代における一つの解答案にはなり得るのではないでしょうか。

まとめ、資源も持たず、日本以上に世界経済の変動にさらされているシンガポールでは、政府による高度な管理の下、自助を基本とした効率的な社会保障制度が敷かれており、少子高齢化の中でも財源問題は深刻化していません。シンガポールには日本が参考にすべきことも多いと考えられます。

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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