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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > シンガポールとその社会保障制度(その1) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

シンガポールとその社会保障制度(その1)

平松拓 企業財務管理、国際金融

17/04/11


昨年の話になりますが、日本とシンガポールは国交樹立50周年を祝いました。そこで、今回と次回の2回、シンガポールとその特色ある社会保障制度についてお話しします。まず、今回はシンガポールという国について。

実は、シンガポールは私が37年前、学生時代に初めて訪れた外国です。当時は海外旅行というと、欧米など一部の国を除けば予防注射をしなければならないというイメージがあり、シンガポールはアジアの途上国だということで、腕をさすりながら検疫所に出かけたのですが、シンガポールは要らないと言われて、ほっとしたこと覚えています。

実際に行ってみると、旧イギリス植民地の縁を感じさせながらも、途上国然としていましたが、ガムを噛んだり道路に唾を吐いたりすれば罰金、車の値段(ほとんど日本車)は日本の倍以上、市内への乗り入れ規制なども既に行われており、リー・クアン・ユー政権の強固な管理体制の下、経済開発・成長に向かって邁進しているという印象でした。その甲斐あって、シンガポールは今やGDP規模では世界40位以内、イスラエルやマレーシア、デンマークなどと肩を並べ、一人当たりGDPでは日本を大きく上回る5万2千ドルと、アメリカとほぼ肩を並べており、歴とした先進国となっている。

シンガポールはご案内の通りの小国で、周りを世界で最も人口が多い4か国のうちの3か国に囲まれており、国土面積は719平方キロと東京23区と同程度、そこに550万人と福岡県と同じ位の人口しか住んでいません。しかもその内の4割近くは出稼ぎの為の一時滞在者です。さらにシンガポールには目立った資源もなく、シンガポールが突き出した形になっているマラッカ海峡は、幅が狭いところでは2キロそこそこしかないところを、日本の輸入原油の約8割が通過するというような世界の海上交通の要衝となっています。つまり、世界の変動の波をもろに被るところに位置している訳です。このように、外的脅威を常に意識せざるを得ない小国シンガポールが、外からの荒波を乗り越え、持続的な成長を果たすためには、シンガポールならではの強固で効率的な国づくりのための政策が欠かせないといえます。

そのための帰結の一つが強固な軍備です。実は、シンガポールは隠れた軍事大国です。徴兵制をひいており、年間の国防予算が100億米ドルと、ベトナムの2倍、ASEAN最大の軍事力を誇っています。もう一つは、国内を強固にまとめるための、高度な管理体制が採られていることです。とは言っても、社会主義国家のように全てを政府がコントロールしたり、政府が様々な形で市場に介入するということを意味するわけではありません。政府のコントロールが必要と考えて管理する部分と、市場に委ねる部分を明確に分け、市場に委ねる部分には高度な市場メカニズムを働かせて変革に繋げています。

例えばシンガポールでは法人税は17%、個人所得税率も最高税率で22%と低率ですが、自動車の購入に当たっては、自動車価格の他にCOE(車両所有権証書)入札取得費用、更に100%を上回る輸入税・登録料等がかかるため、車体価格の数倍の費用が掛かります。このように税制や諸政策を通じたメリハリのあるコントロールを行うことにより、政策効果を上げると同時に財政の健全化も図られています。

社会保障制度についてもその一環で、自助を主体とする(自己負担能力を高める)ことで、政府による「給付」という形での過剰な介入を極力回避するような、独特な管理制度が構築されています。日本とは全く異なる制度ですが、非常に示唆に富んでいます。具体的な内容については、次回お話したいと思います。

まとめ:マラッカ海峡に突き出した小国シンガポールの発展の鍵は、実は強力な軍備と高度の管理体制にあります。高度な管理体制では、政府が効果的にコントロールする部分と市場により高度の効率性が追求される部分が明確に分化され、これが絶え間ない変革に繋がっています。日本とは大きく異なる面ありますが、その分だけ日本にとっての参考になる部分も多いと考えられます。

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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