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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 3Mにおけるイノベーション創出(その1) (産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ/高田 仁)

3Mにおけるイノベーション創出(その1)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

17/03/13

・以前の放送で、数年前に始まったソニーの新製品開発の仕組み"SAP(シード・アクセラレーション・プログラム)"と、イノベーティブな企業として有名なスリーエム(3M)の新製品開発の仕組みに共通点が多いことを紹介した。例えば、プロセスの透明性、成功・失敗事例の共有、挑戦しやすい環境や風土の形成、社外の目の積極的な取り込み、などである。
・今回は、この3Mのイノベーションに向けた仕組みをより詳しく解説し、「なぜ同社からはイノベーティブな製品が数多く生まれるのか?」を明らかにしてみたい。
・3Mは、売上300億ドル(3兆円)、研究開発に売上高比率5.6%を支出する(現在は5.8%に引き上げられ、更に6.0%に引き上げる予定)、技術力に強みをもつグローバル企業である。有名な株価指標である"ダウ銘柄(工業株30種平均株価)"に、1976年から継続して指定され続けており、これは30銘柄のなかでは6番目に古い。
・同社は、1902年にミネソタ州セントポールで創業した。3Mという社名はミネソタ・マイニング&マニュファクチュアリングの頭文字で、その名の通り、元々は鉱山開発事業からスタートした会社である。コランダムという硬い研磨用途の鉱石(ダイヤの次に硬い)の採掘を目論んでいたが、実際にはそれよりも柔らかい鉱石しか採掘できなかったため会社が潰れかけたという。その後、その柔らかい鉱石を活用して耐水性サンドペーパーを発売し、当時、五大湖周辺に集積していた自動車産業で大量に使用されたことから、事業が大きく成長した。
・この耐水性サンドペーパーの開発は、重要な成功物語として現在までずっと同社内で語られている。1920年代にOkieという人から「研磨剤を送って欲しい」という手紙が3Mに送られ、それに対して当時の社長が営業部長に現場を訪問するよう指示した。営業部長が目にしたのは、ガラス研磨職人がガラス粉塵で健康を害しているような現場だった。Okieは、健康問題を解決するために耐水性紙ヤスリのアイデアを有しており、それを試してみるために3Mにサンプルの送付を依頼したのだ。結局3MはOkieの発明を買い取って耐水性サンドペーパーを開発し、大成功を収めたのだった。
・この事例が示唆することは、「現場に出て、顧客と一緒に課題を解決すべき」ということだ。
・また、スコッチ・テープの開発も初期の大成功例として現在まで語り継がれている。1925年、研磨剤研究所のDrewが紙ヤスリの営業のため自動車工場を訪問した際に、工場で車体をツートンカラーに塗り分けるためマスキング・テープのニーズがあることを発見したことが、貼って剥がせる「スコッチ・テープ」の開発のきっかけだった。スコッチ・テープを開発した後、Drewは研磨剤研究所に戻されたにも関わらず、こっそりテープの開発を続けたのだが、この間にデュポンが開発したばかりのセロハンの技術を導入し、防湿性の高い「スコッチ・セロハンテープ」を完成させた。この製品は、現在までずっとベストセラーを続けている。
・この事例が示唆することは、「自分の仕事(Drewの場合は研磨剤部門)だけを考えていてはダメで、自分の責任範囲や専門を越えてイノベーションの機会を見つけるべき」ということだ。
・以上のような経験から、3Mでは「アイデアの尊重」が徹底されている。上司や周囲が「そんなものは無理だ」とか「そんなものを欲しがっている人はいない」という具合にアイデアを否定してしまうと、イノベーションは生まれない。従って3Mでは、「汝、アイデアを殺すなかれ」という言葉を、キリスト教のモーゼの十戒になぞらえて"3Mの第十一番目の戒律"として、反証材料がなければアイデアの芽を摘んではならない、とされている。
・また、アイデアを尊重すると同時に、ひとりひとりが自主性をもって顧客の課題解決に熱心に取り組むことが不可欠だ。そのために、1948年当時のマックナイト社長は、社員が自主性を持つことを徹底させるため、全管理職向けに手紙を出した。そこには、「上司が部下に権限と責任を移譲し、失敗に寛容であるためマネジメントは忍耐強くなければならない」ことが記されている。
・実は、マックナイトは、Drewがスコッチ・セロハンテープを開発する際に「そんなことは止めろ」と止めた当時の上司だったのだ。上司の意に反してDrewが大ヒット商品を開発したたことが、マックナイト社長の手紙と現在の3Mのあるべき姿を決定づけたともいえる。
・次回は、更に3Mのイノベーティブな風土を支える具体的な仕組みについて解説する。            

【今回のまとめ】
・3Mでは、アイデアの尊重が重要視され、ひとりひとりが自主性をもって顧客の課題解決に取り組むことが強く奨励されている。このことが、同社のイノベーティブな風土形成の根幹となっている。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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