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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワード(36)ステージゲート法 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワード(36)ステージゲート法

永田晃也 技術経営、科学技術政策

17/03/21

今回のまとめ: ステージゲート法とは、イノベーションのプロセスを活動のステージに分割し、ステージ間に評価のゲートを設けて、評価にパスしたテーマのみを次のステージに進める管理手法です。


 今回は「ステージゲート法」をキーワードとして取り上げますが、その効用を理解する上で役立つと思われる語についても、いくつか補足的に解説したいと思います。
 ステージゲート法とは、カナダにあるマクマスター大学ビジネススクールのロバート・クーパーという教授が1980年代に開発し、90年代に広く普及することになったイノベーション・マネジメントの手法です。この手法を解説したクーパーのテキストは、浪江一公さんというコンサルタントによって翻訳・紹介されています。
 クーパー自身の説明によると、ステージゲート法とは「新製品をアイデアから市場投入、そしてさらにその先まで展開するためのモデルであり、その活動を効果的、効率的にマネジメントすることを目的にした新製品の開発プロセス/システム」であるとされています。この手法では、まずイノベーションのプロセスが、活動のステージに分割して描かれます。すなわち、「アイデアの創出」に始まり、「初期調査」、「ビジネスプランの策定」、「開発」、「テストと検証」、「本格市場投入」といったステージに分割されるのです。そして各ステージの間には「ゲート」と呼ばれる評価の場が設けられ、評価をパスしたテーマのみを次のステージに進めるといった手続きがとられます。このプロセス全体は、「顧客との継続的な双方向の対話の中で行われる」ものとされており、手法のコア・コンセプトは「市場起点の活動」であることが強調されています。
 こうしてみると、ステージゲート法がイノベーション・プロセス全体に関わるマネジメント手法を指向していることは明らかですが、日本企業では特にゲートの部分で研究開発テーマを次のステージに進めるべきか否かを意思決定するための手法として理解されてきたように思います。
 浪江さんの解説によると、このステージとゲートという考え方の源流は、日本の製造業の中で開発され、実践されていた「デザインレビュー」にあるとされています。これは、企画、基本設計、詳細設計、試作、量産といったフェーズの間に、多様な部門の関係者によるレビューの機会を設けるというもので、「設計審査」とも呼ばれています。
 日本企業によるステージゲート法の理解や受容の背景には、こうした取組の伝統があるのかも知れません。

 ステージゲート法を導入する企業が、特に研究開発テーマの管理という側面に注目することには、他にも理由があると思います。それは、不確実性が高い研究開発という業務については、中止するという意思決定が特に難しいということです。
 ある研究開発テーマに関する業務を中止すれば、それまで当該のテーマに投資されてきた資金や労力は、その成果を回収する機会もなく埋没することになります。このように回収することができないコストのことを、埋没費用(サンクコスト)と呼んでいます。
 費用が埋没する可能性がある業務においては、そこから撤退するか否かの決定が難しくなるわけですが、この状況はギャンブルを止められなくなる心理状態とよく似ています。負けが込んでいるギャンブルを途中で止めれば、それまでに失った賭け金を回収することはできません。賭に勝てる確率は回ごとに独立ですから、本来ならば直ちに止めることが合理的な選択肢である筈ですが、賭にはまる人の心理は次の回に勝てば賭け金を回収できるという期待を捨てきれず、遂には最悪の破産状況に陥ることがあると言われています。
 このような心理状態に陥ることは「コンコルド効果」と呼ばれています。この呼び方は、超音速旅客機コンコルドのプロジェクトが商業的に失敗しても中止できなかったことに由来しています。
 このような状態にプロジェクトが陥ることを回避するためには、ゲートにおける評価を厳格に適用し、市場起点の評価をパスできないテーマは確実に中止することが求められるわけです。ただ、研究開発の成否には高い不確実性が伴いますから、評価をパスできないテーマは、公式のプロジェクトによる運用を中止するとしても、完全に殺してしまわないことも重要かと思います。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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