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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワード(35)セレンディピティ (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワード(35)セレンディピティ

永田晃也 技術経営、科学技術政策

17/03/20

今回のまとめ: セレンディピティとは、偶然に予想外の発見をする能力を言います。


 今回は、「セレンディピティ」という語を取り上げます。最近、よく聞かれるようになった語です。
 技術的なイノベーションを追求する研究開発の過程で、目的とは異なった予想外の発見が行われることがあります。セレンディピティという語は、こうした偶然の発見を意味するものとして、しばしば使われています。しかし、英語の辞書では、「偶然に予想外の発見をする能力」といった定義が付けられているのです。セレンディピティという語は造語なのですが、それが造られたときの文脈を考えると、単なる偶然の発見ではなく、そういう発見を繰り返すことができる能力までを意味するものと理解した方が良さそうです。
 この語が造られたのは、英国の政治家であり小説家でもあったホレス・ウォルポートという人が、1754年に友人に送った手紙の中でのことだと言われています。その手紙の中でウォルポートは、自分自身のちょっとした発見をセレンディピティと呼んでいるのですが、それは彼が幼い頃に読んだ『セレンディップの3人の王子』という冒険談に由来していました。題名のセレンディップとは今のスリランカのことで、その冒険談は、王子達が旅の途中で、いつも偶然に思いがけないものを発見していくという話だったのだそうです。
 こうした造語の経緯については、テキサス大学オースティン校のロイストン・ロバーツという有機化学の教授が、1989年に刊行した『セレンディピティ』という本の冒頭で紹介しています。ロバーツによると、この語は再発見されてから次第に頻繁に用いられるようになり、よく知られた辞書では1974年以降の版に掲載されているそうです。
 この本の中で、ロバーツは「セレンディピティ」の意味について面白い説明の仕方をしています。発見が偶然の産物であっても、発見者はそのことを隠そうとせず、むしろ熱心に事情を説明するだろうし、また発見者としての名声が失墜するわけでもないことを知っているだろうと言うのです。そして、「観察の場では、幸運は待ち受ける心構え次第である」というパスツールの言葉を引用しています。つまり、偶然の発見というのは、単なる幸運ではなくて、発見者の心構え、洞察力という能力によって成されるものだということです。

 セレンディピティによる発見には、非常に多くの例が挙げられてきましたが、最も有名な事例は、アレキサンダー・フレミングが1928年に行ったペニシリンの発見でしょう。フレミングは、ブドウ球菌を培養していたガラス皿の中に異常にきれいな部分があることに気づき、それは偶然紛れ込ませてしまったカビがブドウ球菌を殺したことによるものであると洞察しました。この発見からフレミングは、ペニシリウムという青カビが産出する抗生物質を取り出し、それにペニシリンと名付けたのです。ペニシリンは、その後、重大な感染症から人類を守ることになりました。

 ところで、ロバーツの本の中では、もう1つ面白い見方が提示されています。彼は、偶然に予想外の発見を行う真のセレンディピティに対して、追い求めていた目的に至る方法を偶然に発見することをソード(Pseudo)セレンディピティ と呼んで区別したのです。これは「擬セレンディピティ」と訳されています。「偽の」といった意味が含まれますから、良い印象を持てませんが、このような方法の発見も重要なイノベーションに結びつくことがあります。例えば、3Mの社内で開発された接着剤が、簡単に落ちない栞という着想から用途を見出し、ポストイットという製品に結びついたという例などは、おそらく「擬セレンディピティ」に該当するでしょう。
 擬セレンディピティによる発見は、もともと追求していた目的があるので、発見した組織の中で活用できる場合が多いでしょうが、真のセレンディピティによる発見は大きな社会的インパクトをもたらす可能性があっても、発見した組織内部で用途を見出せないと埋没してしまうかも知れません。そのような発見を積極的に外部に提供して新たな市場の創出に結びつけていくことは、前にお話したインサイド・アウト型のオープン・イノベーションの課題です。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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