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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 品質管理(3):設計品質と製造品質 (企業戦略、生産管理/目代武史)

品質管理(3):設計品質と製造品質

目代武史 企業戦略、生産管理

17/03/01

 前回は、「品質の狩野モデル」を紹介し、品質の意味をユーザーの立場から考えてみました。今日は、料理に例えながら品質問題を作り手の立場から見ていきます。

 美味しい料理を作るために必要な物は何でしょうか。
 新鮮な材料と料理する人の腕、それから調理道具やキッチンなど様々なものが必要です。弘法筆を選ばずとは言いますが、やはり良い道具や食材というのは非常に重要です。

 それからもう一つ忘れてはいけないのがレシピです。せっかく新鮮な材料や立派な道具があっても、レシピが悪ければ宝の持ち腐れになってしまいます。
 工業製品の品質も同様でして、工業製品のレシピにあたるものが「設計」です。生産管理では、設計の善し悪しのことを「設計品質」と言います。設計品質とは、ターゲットとするお客さんのニーズに対して、設計段階で狙った機能や性能、外観デザインの水準を指します。

 今日、工業製品の品質問題の多くは設計品質に原因があることがあります。例えば、今から6年ほど前に北米でトヨタ車の品質問題がありました。
 その一つにアクセルに関するものです。ペダルがフロアマットに引っかかって戻らなくなるという不具合でした。これは、ユーザーが純正品ではないフロアマットに交換したことで発生したものでした。純正のフロアマットは専用に作られているため、アクセルペダルが引っかかるということはありません。ところが、ユーザーがサイズの大きいフロアマットに替えることで、フロアマットにアクセルペダルが引っかかり、踏んだまま戻らないということが起こりました。これは乗員の安全に関わる深刻な不具合ということから非常に大きい問題になりました。
 純正のものを使えば問題が起こらなかったわけですから、フロアマットを勝手に替えたユーザーの問題と言えなくもありません。とはいえメーカーとしては、ユーザーがどのような使い方をするのかということをより慎重に織り込んだ設計にすべきでもあったわけです。

 もちろん製造段階における不具合によって品質問題が発生することもあります。例えば、以前、パソコンなどに使われる日本製のリチウムイオンバッテリーが、使用中に発熱して最悪の場合発火するという不具がありました。これは、生産過程で金属の粉がバッテリーに混入することで発生した不具合でした。設計品質に問題が無いにもかかわらず不良が発生した場合には、作り方に問題があったと言えます。
 このように、生産段階でどれだけ設計に忠実なものを生産できたかということを表すのが、「製造品質」です。これは生産した製品が設計段階で狙った品質に適合している程度とも言えるため、「適合品質」とも言われます。料理で言いますと、レシピ自体の善し悪しが「設計品質」で、レシピにどれだけ忠実に調理できたかが「製造品質」というわけです。

 このように、工業製品の総合的な品質は「設計品質」と「製造品質」からなります。良い品質の製品をユーザーに届けるためには、このどちらが欠けても駄目です。悪いレシピで完璧に料理をしても、完璧なレシピをいい加減に料理してもどちらも美味しい料理にはならないということです。
 もちろんお客さんからすれば、「設計品質」であろうが「製造品質」であろうが最終的な品質が悪ければ駄目なわけですが、作り手の立場からするとどちらに原因があるかによって対策の立て方が変わってくるため、この区別は重要になってきます。

 良い品質を生むためには、「設計品質」と「製造品質」のそれぞれを改善することが大切です。さらに重要なのはこの2つの品質の合わせ技です。設計段階で最初から作りやすい作りになっていれば、製造品質は確保しやすくなります。こうした配慮のことを「製造性の良い設計」と言います。
 例えば、部品同士をねじで固定して組み立てていくような製品があったとします。このとき、上からねじで締めたり、横から締めたり、或いはひっくり返して下から締めるといった製品設計になっていた場合、製造現場ではねじ留めをするたびに部品を縦にしたり横にしたりひっくり返すことになります。基本的に生産というのは、加工対象物を動かせば動かすほど加工の精度や組み立て精度が落ちていきます。作業者にとっても手間がかかります。また、物が大きければ動かす度に疲れていくため、それでまた品質が落ちるという可能性も出てきます。そこで、部品を下から順番に積み上げていき、ねじは上方向からのみ締めるといった具合に設計自体を改めていけば、生産側も楽になりますし、品質も確保しやすくなります。
 逆に、生産工場の側がこういった設計では作りにくいだとか、これだったら作りやすいといった情報を設計技術者にタイムリーにフィードバックすることで、設計者の側も製造性の良い設計を実現しやすくなります。

 では、今日のまとめです。
 品質は作り手の立場から見ると、「設計品質」と「製造品質」から構成されます。この2つはどちらのレベルが低くてもトータルの品質は良くならないという意味で、かけ算の関係にあると言えます。100点のレシピであっても0点の作り方をすれば結果も0点だからです。そして、逆もまた然りです。品質を良くするためには設計品質と製造品質を合わせ技で向上させていくことが重要です。

分野: 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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