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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 中国武漢と日本人の「職人魂」② (企業財務管理、国際金融/平松拓)

中国武漢と日本人の「職人魂」②

平松拓 企業財務管理、国際金融

17/02/16


前回から、福岡・佐賀の企業の部課長クラスの研修で中国の武漢を訪問した時のお話をしていますが、今回は、現地のビジネススクールで学ぶビジネスマン、ビジネスウーマンとの交流についての話です。

今回の研修旅行では、現地にある華中科技大学のビジネススクール、ここのEMBA(エグゼクティブMBA)プログラムの学生さん達との交流活動が主たる目的でした。華中科技大学は、有名な北京の清華大学などと並ぶ中国の重点理工大学の一つで、教員数3,000、学生数も院生まで含めると約9万人と非常に規模の大きな大学で、そのビジネススクールの企業幹部向けMBAプログラムで学ぶ約40名との交流です。

内容としては、両者で事前に相談した上で、日本でも最近自らのアピーリングポイントとして採り上げることの多い日本的な「おもてなし」や、インバウンド観光客に関心を持たれる日本人の「職人魂」、それから逆に中国において非常に活発な「起業」といったことをテーマに採り上げ、先ずは日中双方がそれぞれプレゼンテーションを行いました。非常に印象的だったのは、日本側のプレゼンテーションの中で触れた「おもてなし」或いは「心のこもったサービス」といったようなことについて、その後のQ&Aセッションで中国側から非常に真剣な質問が出され、その答えを巡って非常に活発な議論が交わされたということです。

交流活動はその後、日本側参加者による、現地EMBAプログラムの授業風景の視察、クリスマス・イベントとしての双方の余興披露へと進みましたが、意外だったのは夕食後、中国側から日本の職人魂についてもっと議論をしようというリクエストがあったことです。しかもそこでの話の中で中国側の参加者は、日本企業の「モノ作り」技術の話ばかりではなく、日本にある200年以上も続く老舗の存在や匠の技の継承方法にも強い関心を持っており、極めて質問がなされたことで、話は日本の首相が海外の首相を接待するのに使った銀座のお寿司屋さんの事業承継問題にまで及びました。

そのプレゼンへの質問や、職人魂について議論の中で感じられたのが、中国側のこれらのおもてなし或いは職人魂に対する関心の高さが、単に一つのビジネススクール、或いは一つのEMBAプログラムの学生に偶々特別共有されているだけではないということです。中国の教育界或いは政府や党などのより高いところ、より広い範囲において、こうした日本の「おもてなし精神」や「職人魂」を取得するには何が必要なのかという問題意識が共有されているのではないか、そしてそれが教育機関、教育現場にミッションとして下りてきているのではないだろうか、とも思えるような熱心さでした。

スマホの生産、或いは太陽光パネルの生産、高速鉄道の建設や有人宇宙船の打ち上げと、中国の技術は急速に進歩してきており、それらが非常に高度なレベルに達しているということについてはもはや疑う余地はありませんが、その一方で、多くの中国人がわざわざ日本に出かけて炊飯器や便座を買い求めて帰って来るという現実があります。そうした中国人達の間では、パッケージに日本製と書いてあるものが非常に重要だそうです。つまり中国人が中国製の製品或いはサービス、言い換えれば中国人自身の仕事にあまり信頼を置けていないということを示しているのだろうと思われます。

人件費の高騰によって、とにかく安く作るという点ではベトナム・ミャンマーといった後発東南アジア諸国の追い上げで、中国が劣勢に立たされる局面が増えています。それゆえに中国でも生産の機械化、或いはロボット化が進みつつあります。しかし、それで従来の手仕事を機械で代替してコストを抑制するだけでは信頼のおける製品は生み出せる訳ではないので、商品やサービスに「信頼感」という形の付加価値を加えるために「おもてなしの心」、日本的な「職人魂」が必要だと思っているのかもしれません。

やや予想外の展開で事前に準備しきれていなかったこともあり、「職人技は一体どうやったら学べるか」という質問に対し、「マニュアルを読んだり、手取り足取りして教わるのではなくて、雑務等も含めて様々な仕事をこなしながら師匠の仕事に対する真摯な姿勢を学ぶこと」等と答えるなど、中国側の参加者の期待とは異なる答えをしたかもしれないが、今の中国が抱く問題意識に直に接することができた、非常に貴重な交流の機会だったと思います。

それでは今回のまとめです。
武漢での華中科技大学ビジネススクールとの交流では、日本のおもてなし精神や職人魂についての強い関心が感じられましたが、それは現在の中国が、単に安く商品サービスを提供するだけでは今後の成長が見込めないという問題意識を抱いており、その追求が教育の現場へのミッションとして与えられているということではないかと思われます。いずれにしろ、非常に興味深いものでした。

分野: ファイナンス 国際金融 |スピーカー: 平松拓

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