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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 世論調査外れのアメリカ大統領選:資源集中の経営戦略 (イノベーション・マネジメント、国際経営/朱穎)

世論調査外れのアメリカ大統領選:資源集中の経営戦略

朱穎 イノベーション・マネジメント、国際経営

17/01/10


今日はアメリカ大統領選について、経営戦略の観点からみていきましょう。
今回のこのアメリカ大統領選は18ヶ月間もかかり、当初の世論調査と大きくはずれた形としてトランプ氏が当選したという結果になりましたが、これは言ってみれば最も政治経験が豊富で、しかも政治資金も潤沢だった候補者が落選し、対してアメリカ歴史上で最も高齢で、しかも全く政治経験が無く、選挙資金においてももう一方のヒラリー氏より劣っていた側が逆転したという出来事です。実は選挙の1週間前からアメリカの大手マスコミの世論調査では、ヒラリー氏はトランプ氏より2~6%リードしているとずっと報道していました。従って今回のアメリカ大統領選というのは正にこうした統計予測が外れた結果となり、有り得ないことが起こってしまったのですが、その背景には何があったのかということについてみていきたいと思います。
実はトランプ氏の逆転に大きく貢献したのはラストベルト地域というふうに呼ばれているところです。このラストベルトというのはアメリカ中西部と太平洋中部の一部を指しており、具体的にはウエストバージニア州、ペンシルバニア州、ウィスコンシン州、オハイオ州、イリノイ州、ミシガン州など、かつてアメリカの重工業と製造業の繁栄を支えていた地域です。こうした地域は近年脱工業化の影響、そして大企業のアウトソーシングなどによって深刻な失業問題と経済衰退問題に悩まされています。歴史的に見ればこのラストベルト地域というのは実は民主党の支持層が最も広いと言われており、特にペンシルバニア州とウィスコンシン州、ミシガン州、イリノイ州の各州はこの30年間において共和党候補が勝ったことが殆どありません。言ってみれば民主党にとっては確実に勝てるところといえます。実は選挙前の世論調査も正にこれを裏付けしていたのですが、このような確実に勝てると思われていた地域において、正に大きな変動がありました。実は先程説明したとおり、このラストベルトというのは非常に深刻な経済問題を抱えている地域で、有権者の人達にとっては社会問題よりむしろ経済問題を解決してくれる候補者を支援したいという状況でした。彼らにとってはヒラリー氏ではなくトランプ氏がより自分の声を代弁できると判断していたことになります。これはあくまでも結果であって、実は両陣営の戦略においてもこのラストベルト地域に対してかなり差があったのではないかと言われています。。まず、ヒラリー氏の選挙陣営は最も経営資源、人・物・金が潤沢でしたが、こうした確実に勝てると言われていた所に対して当初からあまり集中的に資源投下しませんでした。例えば頻繁に訪れなかったということも指摘されていますが、ひとつ興味深いのは民主党の候補者指名争いの予備選において、バーニー・サンダース氏はミシガン州で圧勝したという事実があります。これは言ってみればヒラリー氏にとってはこうしたラストベルト地域に対してもっと重視すべきだったところを、事後的な話にはなりますが、当初からあまり資源投下しなかったということを言われています。もう一方のトランプの選挙陣営ですが、こうした世論調査の結果に影響されないような戦略をとっていました。通常、資金力が弱い場合、世論調査で勝つ見込みのない地域を攻めるべきではないと考えられています。ですが、トランプ氏の選挙陣営は正にこうしたラストベルト地域に対して集中的に資源投下を行いました。例えば選挙日の前日までこうした地域を集中的に飛びまわって、有権者に対して集会を開いてアピールをずっとしていました。これには経営戦略論の観点からみると資源集中と資源消耗という2つの要素があることが分かります。まず、限られた資源の中で合理的に資源を再配分し、集中的に資源を利用することは、高いパフォーマンスの実現を可能にします。資金力は圧倒的に少なかったけれども、大富豪のトランプ氏は実は自家用機を所有しており、例えば1日に4つの州、5つの州を飛び回って集会を開くことが可能でした。そうして1日4-5箇所を移動することは実はかなり体力の消耗になりますが、言ってみれば候補者の2人は最終的に経営戦略論でよく言われている合理的資源配分、さらに徹底的資源消耗という点において差が出たのではないかなというふうに思います。

資金面に関して言えば、ヒラリー氏は例えばウォールストリートから、或いはIT業界からかなり資金を集めていたのに対し、トランプ氏はどちらかというと自前で資金を負担していくということをずっとアピールしていました。ですから、トランプ氏は限られた資源の中で出来れば節約するような形として自分の持っているものを最大限に利用し、最終的に体力勝負でずっと飛び回っていたところがひとつの特徴だったということではないでしょうか。

それでは今日のまとめです。
今回のアメリカ大統領選は結果的に予測出来なかったことが起こってしまいましたが、経営戦略上で考えてみれば、所有している経営資源の物量的な意味ではなくて、経営資源をいかに有効に利用するかというのが最も重要な意味を持っていると言えます。さらに一般的に世間で言われている統計データの有効性とは別に、統計データの表に出てこないような仕組みも充分あるので、こうした統計データに左右されない戦略も必要なのではないでしょうか。

分野: 経営学 |スピーカー: 朱穎

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