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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 製品開発① (テクノロジーマネジメント、オペレーションズマネジメント、日本的経営/金子浩明)

製品開発①

金子浩明 テクノロジーマネジメント、オペレーションズマネジメント、日本的経営

17/01/13

今日は、「製品開発における顧客インサイトの重要性」という話をしたいと思います。

皆さんは何か欲しい商品はありますか。

私は炊飯器を買い替えようと考えています。折角買い替えるのなら高級なものにしようかと思っています。今の高級炊飯器は凄いです。実際に家電量販店に行くと10万ぐらいする高級炊飯器が各社から販売されていますが、これが結構売れているようです。

高級炊飯器ブームのきっかけを作ったのが、三菱電機の「本炭釜」という製品です。2006年にこの炊飯器が登場して以降、10万円台の炊飯器が増え、平均単価が10年で20%以上高くなっています。

そのそも、高級炊飯器は、誰が買っているのでしょうか。そして、どういう理由で売れるようになったと思いますか。

ご飯は日々食べるものなので、おいしく食べたいというニーズは昔からあります。しかし、そこにお金をかけられる人はどういう人でしょうか。最初に本炭釜を買ったのは、ある程度子育てが一段落した団塊の世代の方々でした。

2006年といえば、ちょうど団塊の世代が定年を迎え始めたタイミングと重なります。しかし、なぜ10万もする炊飯器を買うのでしょうか。他にもお金の使い途はあります。旅行やマッサージチェアなど、いろいろあるでしょう。また、炊飯器でそれほどご飯のおいしさは変わるのでしょうか。

メーカーの方の話によると、団塊の世代の人々が本炭釜を買った理由は「味」だけではないそうです。これは世代に特有な味の好みもあるようなのです。団塊の世代にとっては、子供時代に炭で炊いたご飯を食べていたので、炭で炊いたお米のご飯を「おいしい」と感じるようです。つまり、団塊の世代の方々が三菱電機の本炭釜という高級炊飯器を買った大きな理由は、おいしい物を食べたいというだけではなく、「昔食べたあの懐かしい味」を味わいたいからなのです。味覚は記憶と大きく連動しているため、懐かしいというところに大きな価値があります。なお、最近では新婚家庭などでも買うケースが増えているみたいです。実際に購入した方に聞いたところ、その後過程では奥様が主導して購入されたとのことでした。購入した理由は、おいしいご飯を用意することで「旦那さんが寄り道せずに家に帰ってくるように」ということでした。

美味しいご飯があると旦那さんが帰ってきて家で食べますし、旦那さんも10万の炊飯器を買ったとなると、やはり食べないともったいないという心理も働くのでしょう。新婚の時にあまり外で飲み歩く癖をつけないためにというのが深層心理らしいのです。そう考えると10万は安い買い物ですね。

ここで実際に示しているのが、我々が物を買う時、特に高級な物を買う時というのは、その機能が優れているからだけではなくて、「懐かしい」とか、あるいはそれを実際に買うと「旦那が帰ってくる」とか、その機能だけではない価値のところに実際には非常にプラスアルファの価値を感じているわけです。

本炭釜は米をおいしく炊けるという「高機能」の製品ですが、顧客は必ずしも高機能な製品だけに価値を感じるわけではありません。最近「写ルンです」が売れているのをご存知ですか。「写ルンです」という富士フィルムが発売したインスタントカメラのことですね。最近また売れているらしいのです。しかも、この商品を購入しているのは、学生など若者です。

その理由は何か。学生等にとっては、「現像するまで何が撮れているか分からない」というのが面白いようです。確かにデジカメやスマホの場合、撮った画像をその場で確認できます。しかし、フィルムのカメラの場合はそうではありませんでした。フィルムのカメラしかなかった時代、写真屋や現像屋さんにフィルムを預けて、写真が仕上がるまでの時間は「無駄な時間」でした。だから、町の現像屋さんは「スピード現像」を掲げていましたよね。しかし、今は撮ったらすぐに画像を確認できる、「写るんです」のように、撮った画像をすぐに見られないというのが面白いらしいのです。つまり、昔は欠点だと思われていたものが、今は価値になっています。
炊飯器の事例は、おいしいご飯が炊けるという高機能をうたっていますが、「写ルンです」の事例は高機能が価値ではありません。高機能でなくてもお客さまにとって価値を生んでいれば、お客さんは買うということです。

では、今日のまとめです。

顧客に響く価値とは、高機能や低価格のような分かりやすい価値ばかりではありません。「なつかしい味」のような価値もあります。また、弱みと思われていた要素が、時代や環境が変われば価値になることもあるのです。

分野: 企業戦略 技術経営 |スピーカー: 金子浩明

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