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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > パナマと便宜置籍船② (国際経営、国際物流/星野裕志)

パナマと便宜置籍船②

星野裕志 国際経営、国際物流

17/01/03

昨日は、パナマ文書、パナマ運河の拡幅工事、パナマ船籍の貨物船とパナマに関する話でした。世界の貨物船の2割がパナマに置くことのメリットは、実際に船を運航する船会社の本社のある国よりも、登録税や法人税などが低く優遇されていること、運航する船員の国籍の義務がないこと、あるいは安全の基準などがゆるいことなどとの説明でした。

先進国の船会社などが、貨物船の戸籍である船籍をパナマやリベリアに便宜的に置くことを便宜置籍船と言いますが、今日はこの話を進めていきたいと思います。

パナマ船籍、リベリア船籍の貨物船について、ニュースで聞くことが多いのはどうしてかというと、やはり事故のニュースにあるのではないかと思います。開発途上国の船員を雇用して船を運航していることもありますし、以前は便宜置籍船の中には、「サブスタンダード船」と呼ばれる老朽化した船舶や安全基準などを満たしていない船が、高い比率で見られたこともあります。

そうなると、もともとこれらの国に登録されている貨物船が多いことに加えて、当然事故の確率も高いことになり、日本近海での座礁事故や衝突事故に関するニュースの中で、パナマやリベリアという名前を聞くことが多かったのかもしれません。現在では油漏れの油濁事故などの起きた際の環境配慮や事故の際の莫大な賠償額から、安全基準はかなり改善されています。

便宜置籍船は、非常に巧妙なビジネス・モデルと言えます。パナマとリベリアが、世界の2大便宜置籍国ですが、世界の上位10カ国には、マーシャル諸島、バハマ、マルタなどがあり、その他カリブ海の小国や海のないモンゴルすら便宜置籍国になっています。

つまり、実際に船舶を保有する先進国の船会社が出資して、船籍を置くだけのペーパー・カンパニーを置く仕組みを作ることで、国内に大きな産業のない国でも、登録料や法的な手続きの費用は支払われるということで、貴重な外貨を得る手段となります。

小国にとっては、とても良いビジネスを生み出したということになるのですが、実際になぜ伝統的な海運国や先進国の企業が、そのような国々に船舶を便宜置籍したかということですが、研究者が幾つかの理由を明らかにしています。

ひとつは、アメリカで1917年に制定された禁酒法は、酒類の製造・販売・運搬等を禁止していたために、規制を逃れる目的で米国籍船がパナマに船籍を移したことに始まり、第二次世界大戦後に、戦時中に大量建造した船舶を海外に売却した際に、有事の際など必要な時に、再び利用できるような制度を作ったということです。

あるいは、政情が不安定なギリシャの船主が、あえてリベリアなどに船籍を移したということがあるようです。何よりも先進国の船会社が、本社のある国に登録することとの大きなコスト差や法的な基準の違いなどから、積極的に便宜地籍化を進めていったということになります。

そう考えると、これは開発途上国と先進国のニーズが合致したビジネス・モデルで、確かに両者の思惑が満たされた結果といえるかもしれません。1965年には、当時の最大の便宜置籍国のリベリアが、世界の貨物船の12パーセント、2番のパナマがわずか3パーセントの合計15パーセント程度だったのですが、1975年には、それぞれ20パーセントと4パーセントの合計24パーセントに増加し、2013年末にはパナマ船籍が約2割が、2番目のリベリアが11パーセントと、両国だけで世界の3分の1を占めるということは、多くの船会社が登録を自国以外にオフショア化した結果と言えます。

日本籍の外国航路の貨物船も、2,000トン以上に限定すれば、1972年の1,580隻をピークとして、現在では約1割の160隻程度ですから寂しい限りです。

1980年後半からこのような便宜置籍化の進行のなかで、ヨーロッパを中心に「第二船籍」という考え方が導入されました。それは、特定地域を決めて、船員の雇用の条件や税制、船員の関する税金や社会保障の規定を緩和する制度で、船舶を国内に留め置く方策です。英国、オランダや北欧の各国で導入されてきました。一国二制度ではないですが、国内に船舶を登記する制度を作ってきたので、歯止めはかかっていると思います。


今回のまとめ:便宜置籍船の制度とは、国内に大きな産業がない開発途上国が、先進国などの船会社が出資してペーパー・カンパニーを設立し、船籍を置くだけの仕組みを作ることで、登録料や法的な手続きの費用は支払われる貴重な外貨を得る手段となる興味深いビジネス・モデルです。

分野: 国際ロジスティクス 国際経営 |スピーカー: 星野裕志

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