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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 新製品開発プロセス〜ソニーと3Mの共通点(その1) (産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ/高田 仁)

新製品開発プロセス〜ソニーと3Mの共通点(その1)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

17/01/16

・苦境が報じられていたソニーの業績が少しづつ回復し始めている。2015年には5年ぶりに黒字を計上した。収益に貢献しているのは金融(ソニー生命など)、デバイス(CMOSイメージセンサー)、そしてゲーム(プレイステーション)だが、かつて一世を風靡したTV(BRAVIA)やパソコン(VAIO)は分社化あるいは売却され、スマホ事業(EXPERIA)は依然として苦境にある。
・そのようななか、ソニーは2014年からSAP(シード・アクセラレーション・プログラム)と称する新事業創出プログラムをスタートした。実は、このSAPを詳しくみると、イノベーティブな企業として知られる3M(スリーエム)の持つ新製品開発の仕組みと共通点が多いことに気づく。
・今回は、このソニーのSAPと3Mの共通点を分析し、新製品開発の特徴を整理してみたい。

SAPが開始された背景
・2012年、ソニーの社長に平井氏が就任した。主要事業で赤字が続く中でも、社内に新しい製品のアイデアを持つ社員が少なくなかったのだが、一方で、社内でそのアイデアを取り上げて実現にまで結びつける仕組みが存在していなかった。
・かつてのソニーは、ウォークマンやAIBO、プレイステーションなど、ユニークな製品を世に出してきたが、それらの多くは社員の自発性から生まれた。インフォーマルに試作を繰り返していたものが上層部の目に止まり、「面白いから事業化しよう」という経緯で製品化されていた。しかし、このプロセスが属人的で不透明だと、頑張っても認められない人に不満が生じるし、良いアイデアにも関わらず上層部の目に留まる前に消えてしまうことも多い。
・平井氏は、既存の事業部には収まらない新製品開発プロジェクトを取り上げて、評価のステップと基準が明確な仕組みの必要性を感じており、SAPをスタートすることを決断した。

SAPの概要
・応募者(所属部署に関わらず)は、社内ワークショップや工房でアイデアをある程度形にして、エントリーシートで応募する。そして、社内・外の専門家の前でプレゼンする「オーディション」に出場する。そこで高評価だったプロジェクトは、その後「SAPインテンシブ」と呼ばれるブラッシュアップ期間が設けられる。そこでは、リーンスタートアップ(試作と顧客テストを小さく早く試し、製品化スピードを早める)の方法を取り入れ、製品の仕様やデザインの仮説検証を短期間で繰り返す。
・さらにユニークなのは、ソニーが独自にFirst Flightというクラウドファンディングの仕組みを整え、マーケティングや製品コンセプトをブラッシュアップする仕組みが用意されていることだ。大企業における新製品開発は、社内の視点を中心に進められることが多いが、ユーザーが受け入れるか否かを、実際の資金調達(売上金の前受)と販売を伴うクラウドファンディングを通じて検証することは、大企業の新製品開発としては画期的な仕組みだといえる。
・うまく製品化の目処が立ったものは、独立会社を設立するか社内の事業ユニットの中で正式にスタートする。
・最初のオーディションには、社内SNSを使って社員が投票できる「国民投票」と呼ばれる仕組みもあり、開始後2年間で延べ2万人以上が利用したとのことである。

SAPの特徴
・SAPの特徴は以下の3点に整理される。
(1)大組織の中に、ベンチャー的な動きができる特別な場所を設け、挑戦を支える仕組みが構築されていること。(※従来のように、慎重に時間をかけて重箱の隅をつつきながら新製品を開発するのではなく、社外の専門家やエンドユーザーを巻き込んで素早い仮説検証を行う)
(2)この仕組みそのものが、アントレプレナーシップ溢れる人材育成の場として機能しており、最終的には変化を嫌う大企業的な風土を変えることが目論まれていること。
(3)属人的な仕組みではなく、途中過程の透明性(アカウンタビリティ)を高めることで、新たな挑戦の母数の確保と成功率を高めようとしていること。

まとめ
苦境にあったソニーが、新製品開発のオープンな仕組みを設けて、事業開発を促進し始めている。この仕組みが、アントレプレナーシップ溢れる人材育成の場として機能し、大企業的な風土を変えることが目論まれている。


・次回は、3Mの新製品開発プロセスを取り上げ、ソニーとの共通点を分析する。

分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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