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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 新製品開発プロセス〜ソニーと3Mの共通点(その2) (産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ/高田 仁)

新製品開発プロセス〜ソニーと3Mの共通点(その2)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

17/01/17

・前回は、ソニーが始めた新製品開発の仕組み「SAP」を紹介した。今回は、イノベーティブな企業として知られる3Mの持つ仕組みと、その特徴を比較してみたい。

・3Mは、1902年にミネソタ州で創業した。五大湖周辺の自動車産業の発展と歩調を合わせながら、研磨剤や接着剤、不織布などの「コア技術」を用いた様々な製品を世に出してきた。今では、ポストイットなど当たり前に目にする製品をはじめ、イノベーティブな製品を数多く生み出す組織として知られるが、実はそこに至る過程は単純ではない。
・戦後、巨大組織に成長した3Mは、大企業病とも呼べる状況に陥っていた。そこで1948年に、当時の社長のマックナイト氏が、接着剤事業部門をひとりの事業部長に任せたところ、好業績を出したので、全社的に事業部制へと移行した。この事業部制移行の最大のネライは「社員が自主性を持つこと」だった。
・同社では、所属部署に関わらずアイデアの発案者(=プロダクト・チャンピオン)が、社内の協力者を勧誘し、ミニ・カンパニーとも呼べる少組織で、「テクノロジー・プラットフォーム」「15%ルール」や「密造酒づくり(プロジェクトが正式にストップされても、こっそり開発を継続することが黙認されること)」といった仕組みを活用して試作品づくりや初期のマーケティングを行い、軌道に乗ればそれが正式な事業として認められる。ただ、1990年代までは、その活動は専ら属人的でインフォーマルなものだった。
・1990年代後半に業績が伸び悩んだため、2001年に、3Mは創業以来、初めて社外からCEOを招聘した。着任したGE出身のマックナーニーは、この開発プロセスの標準化と透明化を図った。それが、「3M アクセラレーション」と呼ばれる仕組みだ。
・具体的には、開発のプロセスを7つのステージからなる「ステージゲート方式」としてステージをクリアするための基準を標準化・透明化し、より多くのアイデア創出と、より高い新製品成功率の達成を求めたのだ。
・また、このプロセスで、社員は開発に関する電子記録を共通フォーマット上に残すことが義務付けられ、全世界の社員が成功・失敗事例の情報を共有できるようになった。
・さらに、「ボイス・オブ・カスタマー」と呼ばれる顧客の声を積極的に製品に反映する仕組みも導入された。日本では、相模原に「カスタマー・テクニカル・センター」が開設され、社員が顧客を招いて、3Mの材料や技術を一緒に見て回りながら、課題解決の方策を探る活動が活発に行われている。
・その後、同社の業績は回復し、3Mアクセラレーションの仕組みは、新しいCEOに変わっても引き継がれている。スリーエムジャパンでは、日本ならではの新製品も数多く生み出されている(コンクリート養生シートや高齢者に多く利用される皮膚貼付用シートなど)。

・以上、2001年に就任した新CEOマックナーニーによる3Mの新製品開発プロセス改革は、下記の点でソニーのSAPと類似している。

(1)属人的な取り組みだった新製品開発プロセスを、全社的に標準的で透明性のある仕組みへと変えたこと
(2)開発プロセスを社内データベースに残すことで、成功・失敗事例を社内で共有していること
(3)挑戦の知識共有や場の共有が進み、挑戦を促す雰囲気(風土)が形成され、同時に、アントレプレナーシップ溢れる人材開発にもつながっていること
(4)社外の目を積極的に取り込む工夫がなされていること


・かつて、大企業でのイノベーションの成功例は、突然変異的に生じる神話的な物語として語られることが多かったが、プロセスの透明化や知識共有、社外の専門家やユーザーの取り込みが、製品開発案件の増加や成功率の向上に寄与していることが、この2例から示唆される。

・近年のソニーは経営的に厳しい時期が続いたが、このSAPを通じて世の中を驚かせるような製品が多く生まれることを期待したい。

【まとめ】
・ソニーの新製品開発の新しい仕組み「SAP」は、スリーエムが持つ仕組みと共通点が多い。ポイントは、プロセスの透明性、成功・失敗事例の共有、挑戦しやすい環境や風土の形成、社外の目の積極的な取り込み、である。


分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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