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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワード(32)イノベーション・エコシステム (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワード(32)イノベーション・エコシステム

永田晃也 技術経営、科学技術政策

17/01/05


今日のテーマ: キーワードで理解するイノベーション・マネジメント
(32) イノベーション・エコシステム

今回は、「イノベーション・エコシステム」という語を取り上げます。
 エコシステムという語は、生態系を意味しています。生態系とは、生態学(エコロジー)の分野で使われてきた語で、ある区域に棲息している生物群と、それらを取り巻く環境の全体を意味するものとして一般的に定義されています。
 イノベーション・エコシステムの定義の方は、まだ定まっていないと思いますが、イノベーション・プロセスを記述するために、このような生態学の概念をメタファーとして活用しようとする試みによるものですから、要するにイノベーションの創出に関与する企業、大学、研究機関、政府など様々なプレーヤーの相互作用と、それらを取り巻く周辺環境の全体像を意味するものと言って良いでしょう。
 以前、数回の放送に亘って「ナショナル・イノベーション・システム」という語について解説した際、ほとんど変わらない定義で紹介しました。これを振り返ると、イノベーション・エコシステムの概念は、従来の研究に対して単にイノベーション・システムをエコシステムとしての特徴を持つものとして捉えるという視点を加えただけであるかのように見えます。実際、一般的な定義を比較する限り、そう見るほかありません。しかし、イノベーション・エコシステムの概念は、ナショナル・イノベーション・システム研究の流れの中で提起されたのではなく、それとは異なる問題意識を背景に登場しているのです。

 ナショナル・イノベーション・システムの概念は、イノベーションが実現していくプロセスが国ごとに異なる要因を理解しようという問題意識を持ったイノベーション研究者らによって1980年代半ばに提起されました。一方、イノベーション・エコシステムの概念は、イノベーションを追及する企業経営の実務家や政策担当者らが、イノベーションは1企業の努力だけでは実現できず、多様なプレーヤーの相互依存関係の中で成立するものだという問題意識を持ち始めたことを背景に、1990年代に入ってから提起されたものです。企業経営の現場では、「ビジネス・エコシステム」という語の方が多く用いられていたかも知れませんが、その概念はイノベーション・エコシステムとほぼ同一です。
 実際、エコシステムという語は、インテルのようなIT系企業の中で使われていたことが知られていますし、米国の競争力評議会(COC)が2004年に発表したInnovate America、「パルミサーノ・レポート」として知られる政策提言の中でも使用されました。このように実務的な文脈で提起されたエコシステムの概念ですが、2000年以降には、ロン・アドナー、マルコ・イアンシティなどの研究者らによって、理論的に検討され、あるいは実証的な分析概念として用いられるようになりました。
 日本でも最近、エコシステムの形成を目標に掲げた政策が打ち出されています。例えば今年公募が行われた文部科学省の「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」です。これは、地域が保有している特徴的な技術シーズの事業化を目的として、事業プロデュースチームの設置などを支援するというプログラムです。

 では、イノベーション・プロセスをエコシステムとして捉えるという視点には、どのような実践的な意義があるのでしょうか。例えば、あるユニークな能力を持った生物種について、その能力を獲得してきた進化過程を理解するためには、他の生物種との相互依存関係や、生息域の地理的、気候的な環境条件を考慮する必要があるでしょう。その生物種が食物連鎖や、共生、競合などの直接的な関係を持たない他の生物種の存在が、生存に重大な間接的影響を及ぼしていることもあります。そのような広範囲に亘る関係を考慮する視点が、計画すること自体困難なイノベーションに取り組む上で重要だとは言えます。
 ただ、イノベーションには、創造的破壊と呼ばれるような大規模な変化を環境、すなわち市場にもたらす側面があります。喩えを広げて言えば、外来種が生態系を破壊するほどの変化が、イノベーションと呼ばれる場合もあるのですから、エコシステムというメタファーは、イノベーション・プロセスに対して相性が良いとは言えないようです。

今回のまとめ: リバース・イノベーションは、途上国で最初に採用されたイノベーションと定義されています。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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