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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワード(31)リバース・イノベーション (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワード(31)リバース・イノベーション

永田晃也 技術経営、科学技術政策

17/01/04


今日のテーマ: キーワードで理解するイノベーション・マネジメント
(31) リバース・イノベーション

 今回は「リバース・イノベーション」という語を取り上げます。
 これは、ビジャイ・ゴビンダラジャンという研究者らによって提唱されたもので、2012年に刊行された文献の中では、「途上国で最初に採用されたイノベーション」と定義されています。
 この定義は少々意外な印象を与えるかも知れません。というのは、そもそも新製品のようなイノベーションはまず先進国で発生するもので、その後、先進国から開発途上国への輸出を経て、次第に途上国でも新製品の市場が成長していくという具合に進展するものだと考えられてきたからです。
 確かに1980年代までは、そのようなプロセスが一般的だったと思います。しかし、1990年代に入ると多くの途上国が自国への直接投資に対する自由化政策を採用したことに伴って、それらの国に独自の開発機能を持つ拠点が設置されるようになり、潮目が変わってきました。
 2000年代以降は、途上国間での経済格差が拡大し、二極化が進んだとみられています。一方には、急速な経済成長の波に乗って新興国と呼ばれるようになった国や地域が存在し、他方には「BOP (Bottom of the Pyramid)」、ピラミッドの底辺と呼ばれる貧困層を抱え、成長過程へと離陸できない国や地域が存在するという状況になりました。しかし、この後者の国や地域においても、先進国企業の中にはBOPビジネスと呼ばれるイノベーション戦略を展開するケースがありました。また、先進国企業の事業に由来するというよりも、途上国の伝統的な知識、ローカル・ナレッジをオリジン(起源)とするイノベーションが行われるようになってきました。
 こうした背景があることから、一口に「途上国で最初に採用されたイノベーション」と言っても、その起源は多様です。

 ゴビンダラジャンらが、リバース・イノベーションとして挙げている事例の1つは、米国企業のGEヘルスケアがインドで最初に導入した製品です。インドでは、亡くなる人々の死因のうち心臓発作が最も多くの割合を占めるのだそうですが、その原因の一端は広大な農村地帯に診療所や開業医が極めて少ないことにあると言われています。GEヘルスケアが導入した製品とは、携帯性に優れ、かつ低価格の心電計だったのですが、それによって患者を診療所に移動させる前に、診察を行うことが可能になりました。ところが、このような携帯型心電計は、先進国の医療システムの中でも重要な機能を果たし得るものですから、後には米国をはじめとする先進国でも販売されるようになったのです。

 このリバース・イノベーションと類似の意味を持つ語に、ナヴィ・ラジュという研究者らが提唱した「ジュガード・イノベーション」という語があります。ジュガードとは、「革新的な問題解決の方法」とか「独創性と機転から生まれる即席の解決法」という意味を持つヒンディー語だそうです。彼らの本は、『イノベーションは新興国に学べ!』というタイトルで翻訳されています。
 そこでは、インドの陶工が開発した「ミティクール」という粘土製冷蔵庫が事例として紹介されています。それは山間部の村で暮らす人々が、水を冷やしておくために粘土製の壺を使用していたことに着想を得て開発されたものです。この電気を必要としない冷蔵庫は、50米ドルの製品として大量生産され、海外でも販売されたと伝えられています。

 こうして見てくると、途上国で最初に採用されたイノベーションには、少なくとも2つのパターンがあることが分かります。1つは、先進国企業の現地法人が途上国市場向けに開発した製品であり、もう1つは、途上国内のローカル・ナレッジを源泉として、先進国または途上国の企業が開発した製品です。
そして、呼ばれ方は違っても、それらの事例には共通の特徴もあります。途上国の環境は、イノベーションを実現する上で有利とは言えないでしょうが、そこでの様々な不足を補い、利用可能な資源で問題を解決しようとする試みが、先進国では生まれないような発想に結びついているということです。こうしたイノベーションへのアプローチが支配的になることはないかも知れませんが、市場が飽和した先進国の企業には重要な示唆を与えていると言えそうです。

今回のまとめ: リバース・イノベーションは、途上国で最初に採用されたイノベーションと定義されています。


分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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